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彰人

…………………………

咲希

………………………………

オレ達は無言で 森の中の一本道を歩いていた

彰人

…………………………

2人のザッザッという足音だけが 森の中に響いている

森の静寂がその寂しさを 掻き立てている

咲希

………………………………

オレは必死に話のネタを 探していた

1つしか出てこないのだが、 これでいいのだろうか

…………まぁ、なにも 無言よりはマシか

彰人

……………なぁ、天馬

冬弥達と話す時の 声のトーンで話しかける

咲希

っ!?

天馬の肩がびくりと震えた

咲希

……………どうしたの?

顔は前を向いたままで、 天馬が反応する

彰人

…………………、いや、なんでもねぇ

この質問はやっぱり しないほうがいいと思い、 オレは首を横に振った

咲希

………………?

咲希

何かあったら、話してもいいんだよ?

そう言ってこちらに顔を向けた 天馬の目は、まだ うっすら赤くなっている

………………そのセリフ、 そのまま返したいんだよ

オレはそう言いたかったが、 言葉を飲み込んだ

そして、口を開く

彰人

…………さっき

彰人

何で、泣いたんだ?

咲希

っ!!

____

オレは1人で森の中を 歩き続けていた

電源を入れても 物音1つ出さずに動き出す チェーンソーを肩から下げて

彰人

……………

オレは敵を見つけ次第、 切り倒していった

ただただこのセカイを 終わらせたくて

相棒と…………、大切な仲間達と 早く歌いたくて仕方がなかった

そして……

彰人

………………

自分はこんなことをしても 良いのか不安だった

けれど、倒さなければ 倒されてしまう

その事実を知ったせいか、 いつの間にか自分から足が 向かうようになっていた

__ア"ア"ア"ァァァッ!!!

彰人

!?

分かれ道に差しかかった時だった

静寂を破るような叫び声が 耳をつんざいたのは

彰人

…………こっちか

気づいたら、叫び声の方へ 走っていた

彰人

…っどこだ

彰人

どこに居やがるッ!

数回道を曲がった時、 そいつは現れた

2足で立ち、片腕は腐っているのか ぐちゃぐちゃになっている、 頭の部分には気持ち悪いくらい 長く裂けた口がついた怪物

そいつとオレの間には、 宮女の制服で金髪(先端は ちょっとピンクっぽい)の ツインテールの、 震えている人がいる

?

ウ"ア"ア"ァァ……

?

ぁ…………っ、………や………ッ

彰人

………………

オレは無音のチェーンソーの電源を 無言で入れる

…………確か、「天馬」って 言ってたな

彰人

__天馬さん!!

咲希

!?

天馬は驚いて振り返る

幸い怪物は耳が聞こえないのか、 天馬の方をじっと見ていた

オレは天馬の方に走りながら 叫んだ

彰人

しゃがめッ!!

咲希

オレは肩からチェーンソーを外す

そして__

彰人

おらッ!!

怪物めがけて全力で投げた

咲希

きゃああぁぁッ!?

天馬は大きな悲鳴と共に しゃがんだ

?

ア"ア"ッ!?

飛んでいったチェーンソーは、 見事に怪物の腹を切り裂く

怪物はそのまま倒れ、 消えていった

彰人

大丈夫だったか!?

オレは天馬の方に駆け寄った

咲希

………………っ

天馬は両手を胸の前で握りしめ、 ぺたりと座り込むと ゆっくりこちらを見た

その手の中には、 お守りらしきものが見える

咲希

……………………

天馬の無事を確認してから、 オレは地面に転がる電源のついた チェーンソーを拾い上げる

彰人

…………今更だけど

彰人

天馬咲希さん、で合ってるよな?

咲希

………………

天馬は座ったまま無言で 小さくうなずく

咲希

…………………

彰人

………天馬さん?

天馬の瞳から、雫が零れ落ちた

彰人

ちょっおい、大丈夫か?!

咲希

…………っ?

天馬は自分でも驚いたように 目を丸くして、濡れた頬を触る

そして、静かに 「ぅ」と声を漏らした

咲希

………っう…、ぅぁあ…………っ

咲希

うわあぁぁぁーッ!!

天馬は子供のように 声を上げて泣いた

咲希

わぁぁぁーッ、うぅぅッ、ヒック、うあぁッ

彰人

……………………

咲希

ぐすっ、ううぅぅッ、ううぅぇ……

オレはただ、天馬が泣き止むのを 待つことしかできなかった

咲希

うぅぅ………、ぐすっ…うぅ……

天馬はようやく、目をこすって こちらを見た

咲希

ぐすっ…………、っごめんね!もう大丈夫だから!

彰人

…………本当にか?

咲希

うんッ!………えっと、確かあきとくん、だよね?

彰人

あ、あぁ

咲希

じゃあ行こっ!

天馬は立ち上がり、 オレの返事を聞かずに歩き出した

____

咲希

……そっか

咲希

やっぱり、気になっちゃうよね

彰人

……悪い、こんな質問して

咲希

ううん、大丈夫だよ

咲希

それに、…話したほうがいいと思うし

彰人

………そうか

咲希

………………

彰人

……………

咲希

あのね、アタシ

咲希

………中学の頃、ずっと入院してたんだ

彰人

……

咲希

小さい時から、身体弱くて

咲希

入院はずっと昔からなんだけどね

咲希

それでね、みんなお見舞いに来てくれてたんだけど、……

咲希

………それでも…さびしくて…

彰人

……………………

咲希

アタシね、ひとりぼっちが嫌いなの

咲希

だから、ここに来た時、みんながいなくて…すっごく怖くて…

咲希

それで、あきとくんが来てくれて…安心しちゃって………

彰人

……そうか

咲希

……ごめんね

彰人

いや、お前が謝ることはねぇよ

彰人

…………むしろ、…こっちが悪かった

咲希

…え?

彰人

出会い頭にチェーンソー投げつけるとか、恐怖しかないだろ

咲希

……ぁ

咲希

…ぁははっ、あれはホントにびっくりしたよ!

彰人

だろうな

咲希

呼ばれたと思って後ろ向いたら、チェーンソーが飛んでくるんだもん!

咲希

アタシがしゃがんでなかったら危なかったよ!

彰人

オレはしゃがめって言ったけどな

咲希

そうだけど!

咲希

危ないのは危ないでしょ!!

天馬の声のトーンが 少しだけ上がった

彰人

………やっぱり司センパイの妹はこうじゃないとな

咲希

えっ、知ってたの?!

彰人

え、あ、まぁ。名字とか雰囲気とかで

彰人

あと、司センパイから少し自慢されてる

咲希

えへへ、そっか〜……

彰人

それに、司センパイの自己紹介の時に目がキラキラしてたし……

咲希

へぇ〜…よく見てるね

彰人

ま、まぁな

感心の眼差しを向けられて、思わずまごつく

咲希

……そういえば、あきとくんってとーやくんと一緒に歌ってる?

彰人

……知ってたのか

咲希

うーんと、…なんとなく…?

彰人

………おぅ

なんとなくでそれは すごいと思うが

咲希

……………

彰人

…………………

咲希

……………やっぱりさびしいな

あぁ、声のトーン 下がっちまったじゃねぇか

これじゃ、自己紹介の時の 雰囲気に戻すのは時間がかかるな

オレは心の中でため息をつき、 他の話のネタになるものを探した

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