太宰
君は一体何者なんだい?
翠
………
翠
私の名前を憶えてる?
太宰
もちろん、翠ちゃんだよね?
翠
そう、尾崎翠
翠
この名前を、私は異能と共に授かった
太宰
どういうことだい?
翠
…私の異能『迷へる魂』は、無理矢理にでも生を引き伸ばす
翠
元々、母の異能だった__
翠
私の母と父は愛し合っていた
翠
でも私が産まれる数日前、父が死んだ
翠
原因不明の自殺、
翠
当時、母はそんな事する人じゃないと警察に訴えた
翠
でも、その事件は自殺として幕を閉じた
太宰
君の母は、今君が持っている異能を使っていたのかい?
翠
一回使ったことがあるらしい、
翠
でも母は父が死んだ日、後を追いたくてこんな異能いらないと云った
翠
だから死にたくても死ねない異能を、産まれたばかりの私に引き継がせた
太宰
……
翠
その後は伯母が私を育ててくれた
太宰
なら、何故君はここに?
翠
今私が話している"ワタシ"は、貴方の目の前に居る"私"じゃない…
太宰
?
翠
『迷へる魂』は生を引き伸ばすだけじゃ無かった…
翠
ねぇ、私幾つに見える?
太宰
若くて十六…いや十七かな
翠
もうそんな年…
太宰
どういうことだい?
翠
『迷へる魂』は生を引き伸ばす能力だけど、私が二十歳になると必然的に死が訪れる
太宰
生を引き伸ばすのにかい?
翠
その死後、私は再び同じ世界に生まれ変わる
翠
前世の記憶と異能をもって…
翠
二回目の人生は笹倉翠
翠
前世もそうだったけど、幸せな家庭だった
翠
でも、何故か一家心中が起こった
翠
私が二十歳の時だった
翠
私が生まれ変わらなければ、あの人達は死なずに済んだのに…
彼女はギュッと掛け布団を握りしめる。
翠
これが三回目の人生
翠
異能力者が多くなったのか、私が異能力者である事に母達は直ぐに気付いた
翠
そして____
男
どうでしょうか
母
いい値段ねぇ、これくらいなら…
母
あなたもそう思わない?
父
ああ、この金で新しい家を建てよう!今よりもっと豪華な…!
母
いいわねぇ
母
それに、子供一人くらい全然いいわ
母
またつくればいいだけだし
そう云って、父と母は私を売った。
すごく広い所に連れて来られた。
人一人分入れるくらいの大きな籠に入れられ、手や首、足などを鎖で繋がれた。
男
さぁ皆様!今日の目玉は異能力者の少女!!
籠を覆いかぶさっていた、黒い布がどかされる
男
心臓を潰しても首を絞めても死なない!不死の異能力者です!!
おおっと、歓声があがる。
翠
………
大きな大金がかけられていく。
結局私は、ある研究者に買い取られた。
翠
ここ…何処?
研究者
私達が使っている研究施設だ
研究者
お前にはここで__
研究者
我々の実験の被験者となってもらう
翠
………