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路地を滅茶苦茶に走っても歌はついてきた。
そして、ハスも背中にぴったりとくっつく。
ハス
ハス
健司
ぼくは路地を突っきって、ひたすら走る。
……
団地横の土手──
健司
健司
健司
健司
それはまるで同じ顔の別人みたいで気持ちが悪い。
健司
健司
健司
健司
健司
確かに人の気配はあった。
作りかけのカレーの匂い、自転車のベルの音。
ほのかに香るタバコ。
窓の中にうごめく親子のシルエット。
でも、それは窓越しだ。
健司
健司
健司
ハス
振り返るとハスが息ひとつあげず、夕陽を背にして立っている。
ハス
健司
ハス
ハス
健司
ハス
健司
ハス
健司
ハス
ハス
ハス
健司
ハス
ハス
ハス
ハス
ハス
ハス
そんなことないと言いかけて押し黙る。
本当はこっそり見たことがあった。
桐の箱の中に入っていたのは、カブトムシの幼虫が石になったみたいなもの。
気持ち悪くてすぐに箱を閉めたけど、あれが石になった赤ちゃんかもしれない。
ハス
ハス
ハス
ハス
ハス
ハス
ハス
違う。
この歌は帰る歌じゃないんだ。
ハスは、「代える」って言ってる!
ハス
ハス
ハス
ハス
全身が総毛立つ──
ハス
ハス
ハス
ハス
健司
ぼくは耳を塞いで走り出す。
なのに歌声は直接頭の中に響いてくる。