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ぽかぽかと暖かいある日のこと。
キレイな花がたくさん咲いている花畑で、虫たちが楽しくお喋りしていました。
いもむし
バッタ
いもむし
バッタ
ちょうちょ
いもむし
ちょうちょ
するとそこへ、一匹の黒くて大きなくもがやって来ました。
くもはみんなに挨拶しました。
くも
しかし、誰も返事をしません。
それどころか、くもの姿を見るなり、嫌そうな顔を浮かべました。
バッタ
いもむし
ちょうちょ
虫たち
くも
くもは静かに花畑から去りました。
くもの家に戻ったくもは、虫たちに言われた事を思い出して、ポロポロ涙を流しました。
くも
くもの家は、薄暗い森にあります。
くもはその森にある木の中に住んでいました。
くも
ひとりぼっちのくもの泣き声が、家の中で響きます。
くも
くも
くも
くも
くも
くも
くも
くも
くも
くも
くも
暗い木の中で、その日くもはずっと泣き続けました。
次の日、くもは昨日とは違う花畑にやって来ました。
ハチ
トンボ
その花畑も、虫たちで大賑わいです。
今日こそは、と思い、くもは虫たちに話しかけました。
くも
くもが声をかけると、虫たちは一斉にくもを見ました。
虫たち
たくさんの目が、くもの事をジッと見ます。くもはびっくりしました。
すると、その目がまたあの嫌そうに見るものの目に変わりました。
トンボ
ハチ
トンボ
ハチ
ハチに追いかけられ、くもは慌てて逃げました。
くもの家に戻ったくもは、虫たちに言われた事を思い出して、またポロポロ涙を流しました。
くも
静かな木の中で、くものすすり泣く声だけが響きます。
泣いても泣いてもどれだけ泣いても、ひとりぼっちのくもを、嫌われもののくもを、なぐさめてくれるものはいません。
くも
暗い木の中で、その日もくもはずっと泣き続けました。
ある日の事でした。
くもが外にいると、ポツポツと雨が降って来ました。
くも
くもは慌てて帰りました。
すると、くもの家がある木の葉っぱに、一匹のちょうが雨宿りをしていました。
しかし、雨が強くなってきて、捕まっている葉っぱは今にも落ちそうです。
心配になったくもは、ちょうちょの近くまで登り、話しかけました。
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
ちょうちょはパッと葉っぱから手を離しました。
カラスアゲハ
くも
くもは雨に濡れないように気をつけてながら、案内しました。
木の中の家に帰って来たくも。でも、今日はひとりじゃありません。
カラスアゲハ
くも
くもの家にやって来たちょうちょは、キョロキョロあたりを見渡します。
カラスアゲハ
くも
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
カラスアゲハ
くも
くもの家で、ちょうちょが濡れた羽を乾かしていると、くもが話しかけました。
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
2人はたくさんお喋りをしました。
たくさんお喋りをした次の日の朝。くもは目覚めました。
くも
手足をピンと伸ばして、ゆっくりと動きます。
近くでは、まだちょうちょが眠っていました。
くも
くもは昨日の事を思い出します。
くも
くもは、なんだかちょうちょの羽に触りたくなりました。
ちょうちょが起きないように、恐る恐る、手を伸ばします。
くも
しかし、あとほんの少しといったところで、ちょうちょがパチリと目を覚ましました。
カラスアゲハ
ちょうちょはくもの行動なんて、つゆ知らず、ちょうちょはくもに元気よく挨拶をしました。
くも
くもは慌てて手を引っ込めました。
カラスアゲハ
くも
くも
そう言ってくもは、外の様子を見に行きました。
くもは穴からヒョイっと顔を出すと、空を見ました。
くも
昨日ほどでの雨ではありませんが、まだポツポツと雨が降っていました。
くもはドキドキしました。
くも
くもは急いでちょうちょの元へ戻りました。
くもはちょうちょに、まだ雨が降っている事を伝えます。
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
こうして今日も、くもとちょうちょはたくさん話しました。
たくさんお喋りをした次の日の朝。くもは目覚めました。
起きてすぐ隣を見ると、まだちょうちょが眠っています。
くも
今度こそはと思い、またくもはちょうちょの羽に触ろうと、手を伸ばしました。
しかし、また触れる直前、ちょうちょはパチリと目を覚ましました。
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
ちょうちょは羽をゆっくり広げて、体を伸ばします。
カラスアゲハ
ちょうちょの言葉に、くもはドキリとしました。
くも
くもは雨が降っている事を祈りながら、穴から顔を出しました。
くも
睨むように空を見ると、今日は曇った空模様でした。
くも
くもはちょうちょの元へ戻ります。
カラスアゲハ
くも
くも
カラスアゲハ
くも
あの日からくもは、嘘をつくようになりました。
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
毎日毎日ちょうちょは尋ねて、毎日毎日くもはダメだと言い張りました。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も……
ちょうちょがくもの家に来て、もう何日目の朝を迎えたのか、くもが忘れた頃でした。
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
ちょうちょが外に出ようと、羽を広げた、その時でした。
くも
今まで聞いたことのない大きな声で、くもがちょうちょを呼び止めました。
カラスアゲハ
くも
カラスアゲハ
ちょうちょがゆっくり羽を動かすと、黒い羽がキラリと蒼く光りました。
くも
ちょうちょはしばらく考えると、頷きました。
カラスアゲハ
ちょうちょは、くもに背を向けて、キレイな羽をピンと広げました。
くも
くもは優しく、ちょうちょの羽に触れ
るやいなや、くもは力いっぱい掴みました。
カラスアゲハ
ちょうちょの悲鳴も気にせず、くもはちょうちょの羽を
ガブリと噛み付きました。
カラスアゲハ
ちょうちょは泣き叫んで、必死に抵抗しますが、大きくて黒いくもはびくともしません。
カラスアゲハ
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ
くもはちょうちょの羽を食べ続けます。
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ
カラスアゲハ
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ…
いつも薄暗い森の中。
でも今日は、一段と暗い模様。
曇りだった空は、今じゃ雨が激しく降り続いていました。
カラスアゲハ
カラスアゲハ
ちょうちょは今にも消え入りそうな声で言いました。
くも
くもはジッとちょうちょを見ます。
くもの目に映るちょうちょは、キレイなキレイな羽を持つちょうちょは、
今じゃ見る影もありません。
カラスアゲハ
ちょうちょはわんわん泣きました。
床に散らばるキラキラした羽のカケラを抱き寄せて、わんわん泣きました。
けれども羽は戻りません。
くも
くもは泣き続けるちょうちょに近づいて行きます。
カラスアゲハ
くもは足元に落ちていた羽を気にせず、ぱきりと踏みました。
くも
くも
くも
くも
くも
くも
カラスアゲハ
ちょうちょは足を振るわせながら、なんとかくもから逃げようとしました。
くも
くも
ばりばりむしゃむしゃ ばりばりむしゃむしゃ…