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先生さようなら……

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先生さようなら……

♥

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2019年03月10日

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人の命の長さ

寿命は、よくロウソクの炎

にたとえられる。

太くて長いロウソクの炎を燃やす人は

長生きする

反対に、今にも消えそうな

ロウソクの人は、明日にでも

死んでしまうかもしれない……。

私が持っているのは、

それが分かる力だ

年をとった人よりは、もちろん若い人の方が元気にロウソクの炎がもえている

だけど、道を歩いていると、

たまに若くてもロウソクが消えそうな人とすれ違う

私は、何もできないまま通りすぎる

奈々

あ‥…この若い人も…。可哀想に……

奈々、おはよっ!

どうしたの、後ろなんて振り返っちゃって

今すれ違ったサラリーマンの人、好みだったの?

奈々

あ、花。おはよ。

奈々

うん……ちょっとイケメンだった、かな?

ウソつけ!すげぇブサメンだったじゃんか!奈々って趣味悪

ははっ

奈々

あれっ、そうだった?

奈々

あはは…

クラスの皆といると安心する

だってクラスの皆は、

赤赤と命のロウソクが燃えているから

奈々

(今朝も、皆に異常はない…)

キーンコーンカーンコーン♪

松川先生

おっはよ〜。おーし、皆席につけぇ。月曜日の始まりだぞお

奈々

(あっ…)

奈々

(先生のロウソクだけが、先週と違う)

奈々

(まだ若いのに)

奈々

(前の長さより半分も短くなってる)

松川先生

いやあ、今日も暑くなりそうだなあ。

松川先生

教室にエアコンつけてくれないかなあ。

松川先生

校長先生に皆でお願いしよっか?

松川先生

な〜んてな♪

先生の明るい冗談に皆が笑った

松川先生

教室に風を入れよう。おい窓ぎわの席の人、

松川先生

窓を開けてくれ。先生、今家にもエアコンなくてな。

松川先生

寝苦しくてたまらんよ

奈々

(寝苦しいだけじゃロウソクは短くならない。どうしてロウソクが急に半分も……)

休み時間、教室に残っていた先生に、

私は、それとなく聞いてみた。

奈々

先生の家って、エアコンないんですか?

奈々

毎日暑いのに

奈々

大変ですね

松川先生

そうなんだよ。オレさ、

松川先生

前の家が遠かったから、

松川先生

最近学校の近くに引っ越したんだ。

松川先生

線路の横のアパートなんだけど、まだ部屋にエアコンつけてないんだよな。

松川先生

しかも、窓を開けたら踏切と電車の音がうるさくて

松川先生

眠れなくてさ。先生引っ越しに失敗したわ

近くにいたクラスメートたちが

先生の話に笑った。

奈々

(引っ越し……眠れない……線路……踏切……。先生の寿命を縮めている理由はなんだろう?アパートに問題があるのかな……)

奈々

先生のアパートって、もしかして線路沿いの公園の隣ですか?

松川先生

そうだよ。公園の隣だから住みやすいかな、と思ったんだけどさ。あ〜あ……

先生がポリポリと頭をかいた……。

翌日の朝、教室に現れた

先生のロウソクが、さらに短くなっていた。

松川先生

皆、おはよう。

松川先生

夏バテに気おつけろよ。先生も眠れなくてダルイわ〜

松川先生

今日はな、エアコンを取り付ける日なんだ。

松川先生

先生、今夜こそ眠れるぞ〜♪

奈々

(日に日に体力が奪われるなんて、よほどの病気か……あるいは……もしかしたら先生、何かに取り憑かれているかも)

私は直感した。

その日の塾の帰り、私は回り道をして先生のアパートに行ってみた。

線路沿いの公園の隣のアパート。真新しいエアコンの室外機がついた部屋‥

奈々

(ここだわ…)

2階建てアパートの1階角部屋が先生の部屋だった。

私は人の寿命がわかるほかに、霊感も多少あった。

強い霊と出会った時は、はっきりと姿が見えるときもある。

私は、先生の部屋に意識を集中した。

奈々

(……女の人……?)

私は、なんとなく先生の部屋に女性の気配を感じた。

だけど、それほど強い霊気ではなかった。

松川先生

おお、奈々じゃないか。塾の帰りか?

奈々

(そうだ!直接聞こう)

奈々

先生…‥。先生のアパートの部屋に女の人っていますか…‥

松川先生

おい奈々、いきなりなんだよ。ばか言うな。俺は独身で一人暮らしだぞ

奈々

そうですか……。先生の具合が良くないみたいだから、ちょっと来てみたんです

松川先生

な、なんだよおい。嬉しいけど、こんなところで人にみられたら誤解されちゃうだろ。

松川先生

奈々、もう遅いから早く家に帰れ。気おつけて帰れよ

奈々

…先生、引っ越す前に、ちゃんとこのアパートしらべました?

奈々

アパートが立つ前、この場所にお墓がなかったかとか、

奈々

自殺や事件がなかったかとか…

松川先生

奈々、お前怖いこと言うなあ。そ、そんなの調べてないし、聞いたことないよ。

松川先生

たぶん、大丈夫……だと思うけど……!?

私はあらためてアパートを見た。

奈々

(うん。建物には問題ないみたい……)

そのとき、近くの踏切の音がけたたましく鳴った。

カンカンカンカンカンカン!!ガタンゴトンガタンゴトン!ゴーーー!!

松川先生

な!先生、この音で眠れないんだよ‼

松川先生

今日からエアコンがついて窓をしめられるから、少しはマシになるかな

奈々

先生、あそこの踏切はよく通るの?

松川先生

あ、ああ。買い物に行くときにな。今も通って帰ってきたよ

奈々

(そうか……。先生、踏切から連れてきちゃったのね)

奈々

先生聞いて……。先生は若い女の人の霊に好かれてるみたい。

奈々

女の人の霊がアパートの中に出たり入ったりしてる。

奈々

今はいないみたいだこど、気おつけて……。

松川先生

えっ!?

奈々

先生、調べてみてください……あの踏切。あの踏切で若い女の人の事故や自殺が起きていれば

奈々

過去のニュースにきっと出てます。ネットでも分かると思います

先生は真剣な表情で、静かにうなずいた

翌朝

松川先生

おはよう、奈々。お前の言う通りだったよ。8年前に、あの踏切で女の人の自殺があったんだ

松川先生

自殺の原因は、失恋らしいだよな……

奈々

やっぱり……。その人、先生に新しい恋をしたんです

松川先生

カンベンしてくれよ!死んだ人に好かれたって、先生嬉しくないよ。

松川先生

……オレ、また引っ越す事にしたよ。

松川先生

引っ越せば大丈夫……だよな?

奈々

(もう無理かも)

でも私は、そうですねとだけ答えた。

先生のロウソクは、さらに短くなっていたから……。

先週の月曜日の朝には、ついに別の先生が教室にやってきた。

新しい先生

皆さん。松川先生は急病で、本日はお休みになります

奈々

(先生は、明日もこない)

それから一週間もした頃、私は先生が入院している病院を聞いて、

お見舞いに行ってみた

病室のベットで寝ていた先生は、すでにかなりやせてしまっていた

先生のベットの隣には、女の人がたっていた。

奈々

(あっ…)

奈々

この女の人は、もちろん先生にはみえていない。

松川先生

おぉ……奈々。お見舞いにきてくれたのか……。クラスのみんなはどうだ?

松川先生

元気にしてるか?新しい先生は……

奈々

先生そのまま寝ててください。クラスのみんなは、元気にしてますから

松川先生

そうか……すまんな。……なあ、奈々……。オレ、どうなっちゃうのかなあ……

奈々

(もうすぐ死にます

もちろんそんなことは言えない)

奈々

先生こんどはクラスのみんなと一緒に来ますから……

私は先生の問いかけには答えず

そう言って病室を出た。

松川先生

あっ、ああ……。奈々、もう帰るのか。またな……。みんなによろしくな

帰り際、先生のベッドを振り返ると

女の人が私に向かってほほえんだ。

奈々

(つれていくのね……)

それから3日後

先生のロウソクが

静かに消えた。

奈々

……先生、ごめんね。

奈々

私はただロウソクが見えるだけで

奈々

何もできないの。

奈々

…先生

奈々

…さようなら

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