傷が好き。

人の傷も好きだが、自分の傷もたまらなく好きだ｡

この世には人とはずれた感情を持つ人々が何人も存在する。

血が好きだったり,見玉が好きだったり,

沢山ある。

そのうちの一人がこの僕

黒澤 榴である。

おかしい｡絶対何らかの目的があって僕に付きまとっている。

だって僕を好むやつなんかコイツだけだ｡

どういう訳か砺山 一陽

コイツも僕を何故か好む。

僕は木なんか見てない木なんてどうでもいい｡

僕は亦部の肘の傷を見ていたんだ｡

まくったワイシャツから少し見えるあのなんとも言えない赤色が目から離せなかった。

乾いているが,固まった血が紅く濁りながら輝いている。

あぁダメだ｡美しい｡

僕のものにしたい。

僕に話しかけられた人はだいたいこんな感じだ｡

もしその傷がその人の悪い記憶として残っているなら,聞かれたその人は勿論不快な気持ちになるだろう。

まぁ当たり前の反応だけど,こんな風に言われるとは思ってなかった｡

僕のこの感情は〝そういう人〟にしかわからない。

分かり合える人が欲しい。

僕のこの感情をどうしようもない感情を抑える何かを提供してくれる人が欲しい。

ことのはいつも不登校だ｡

そして今日も結局来なかった。

亦部さんが教室のドアから上半身だけをのぞかせ手招きしている。

僕は言われるまま亦部について行き

生徒会議室に着いた｡

カチャ

確かに鍵を閉める音がした。

亦部さんはニヤリと不気味に笑うと

自分の右腕のワイシャツをまくりあげ

僕に肘を突き出してきた。

あのなんとも言えない美しい紅が僕の目に飛び込んできた。

僕はゴクリと生唾を飲み込む。

確かに欲しい。欲しくてたまらない。

今すぐこの肘に飛びつきたい。

だが何故か反応できなかった。

それは亦部さんの狂気に満ち溢れた瞳に締め付けられていたからだ｡

亦部さんが笑いながら言う。

肘を優しく撫でながら僕を見つめる。

はいここまで!!!!

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