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石化勇者にキスを

石化勇者にキスを

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2

石化、それからルティス村へ出発

♥

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2024年03月06日

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剣と魔法の世界

魔王率いる魔族と人類が敵対し

はや、数百年。

人類は魔族に対抗するため

魔法を極め

ついには死さえ乗り越えた。

そんな人類の魔法でも

唯一治せないのが

恋煩いである。

ネル

アル、お前恋煩いだけは

ネル

絶対になるんじゃねぇぞ。

アル

分かった、分かったって。

アル

何回同じこと言うんだよ!

ネル

お前が1番可能性が高いからだよ。

ネル

クリスは魔法にしか興味ないし

ネル

ジャンは恋?何それおいしいのって感じだし

ネル

……エドはならないから。

ネル

……恋煩いなんて。

アル

はいはい、そうですか。

ネル

……お前、ちゃんと聞いてねぇだろ。

アル

聞いてる、聞いてるって。

ネル

俺は早くこんな旅終わらせて

ネル

さっさと帰りたいんだよ。

ネル

俺が世界一優秀な回復職(ヒーラー)でも

ネル

恋煩いだけは治せねぇから。

ネル

お前の想い人を探すなんて

ネル

無駄なこと、俺はしたくねぇからな。

アル

分かった、ちゃんと分かったから。

そう、ちゃんと分かっていたはずなのに。

俺は侮っていたのだ

恋煩いってやつを。

ー宿屋にてー

チュンチュンチュン

アル

……もう朝か。

アル

……朝練でもするか。

いつも通り、体を起こそうとしたのだけれど

アル

(……あれ?)

アル

(……体が動かない。)

アル

(……昨日、何か変なものでも食べたのか。)

アル

(……いや、それなら気づくはずだ。)

アル

(……一時的なものかもしれないし)

アル

(……少し待ってみるか。)

それから

2時間後

アル

(……やっぱり動かない)

アル

(いつもなら朝食を食べている時間だ)

アル

(……誰か異変に気づいてくれるといいんだけど)

それから

1時間後

コンコンコン

ネル

おい、アル。いい加減起きろよ。

ネル

もう、起きてんだろ。

ネル

さっさと出てこい。

がちゃがちゃ

ネル

……鍵かかってる。

ネル

……。

ネル

……何かあったのかもしれない。

ネル

……エド、ジャンを呼んできてくれるか。

エドワード

……かしこまりました。

ジャン

なになに?

ジャン

せっかくいい夢見てたのに。

ジャン

エドに叩き起こされるとか

ジャン

目覚め最悪なんだけど。

エドワード

……この扉開けてもらえますか、ジャン。

ジャン

って俺の話は無視か。

ジャン

……ここ、アルの部屋だろ。

エドワード

……許可は取ってありますので。

ジャン

……分かったよ。

カチャッ

ジャン

……開いたぞ。

ドンッ

ジャン

痛ッ

ネル

アル!何がッ……

ネル

はぁああッ(怒り)

ネル

ふざけんな、アル!

俺の部屋に飛び込んできたネルの言葉は

耳を疑うもので……。

ネル

……なんで、なんで。

ネル

石化してんだよ!

ネル

……おい、おい。まさか

俺の体にかかっていたブランケットが

勢いよくはぎ取られる。

ネル

……嘘だろ、全身石化してる。

ジャン

……マジか。

アル

(……マジか)

アル

(……だから、体が動かなかったんだな)

エドワード

……これは。

エドワード

……これから先どうするか、

エドワード

……話し合いが必要ですね。

ネル

……そうだな。

ジャン

……そうだね。

ネル

……エド、クリスをこの部屋に連れてきてくれる。

エドワード

はい。承知いたしました。

それから

クリス

……何ですか、いきなり。

クリス

……今後についての重要な話し合いって

クリス

……そんなこと昨日は一言も

クリス

……これは!(全身石化しているアルの姿が視界に入る)

クリス

……これは確かに

クリス

……話し合いが必要ですね。

クリス

……それにしても

クリス

……全身石化とは、興味深い。

クリス

……症例としては初代勇者以来の2例目

クリス

とても希少で

ジャン

……これ、すごく長くなるやつ

ネル

……クリス、それ後にしてくれる?

クリス

……あ、あぁ。

クリス

……つい、興奮してしまって。

クリス

……すまない。

ネル

で、魔王討伐の旅の途中にも関わらず

ネル

恋に焦がれ全身石化している

ネル

あほ勇者の想い人が誰か知ってる奴いる?(何度もアルを踏みつける)

……。

ジャン

ちょっ、そんなことして大丈夫なのか

ジャン

……欠けたりしたらどうすんだ。

ジャン

……一応、こんなんでも勇者なんだぞ。

エドワード

……ひどい言われようですね。

アル

(……まったくだ。)

エドワード

全身石化してるとはいえ

エドワード

目も正常に見えていれば、

エドワード

耳も聞こえているかと思われます。

ジャン

……えっ?……マジ?

エドワード

えぇ。触覚もあり、ネル様に足蹴にされている痛みも

エドワード

感じていらっしゃるかと。

ネル

……。

クリス

……エド殿はどうしてそんなにも

クリス

恋煩いについて詳しいのでしょうか?

クリス

……もしや、ご自身がなった経験でも?

エドワード

……いえ。体の半分ほど石化した方に

エドワード

……以前お会いしたことあるだけです。

ネル

……。

ジャン

そんな人って実際にいるんだ。

ジャン

見てみたかったなー。

エドワード

……見世物ではないのです。

エドワード

……そのような物言いはやめください。ジャン。

ジャン

……悪かったよ。

ジャン

……だから

ジャン

……そんな怖い顔すんなって。

エドワード

……ですが、

エドワード

……手がかりゼロから探すとなると

エドワード

……時間がかかりそうですね。

ジャン

ねぇ、クリスって

ジャン

テレパシー使えたよね?

ジャン

テレパシーでアルと話せないかな?

クリス

石化した人物にテレパシーですか!

クリス

それは面白い試みですね。

クリス

やってみましょう!

クリス

……テレパシー。

クリス

……うーん。うまくいかないみたいですね。

クリス

……何かよく分からない力にはじかれている

クリス

……そんな感じです。

ジャン

……ダメか。ちょっといけるかもって思ったのに。

ネル

「誰」は分からなくても

ネル

「どこ」にいるかは多少、絞り込むことは可能だ。

ジャン

えっ?そんなこと分かるの。

ジャン

だったら、もっと早く言ってよ!

ネル

「誰」が分かれば必然的にどこにいるかも

ネル

ある程度分かんだろ。

ネル

だったらやる必要ねぇじゃん。

ネル

やらなくていいなら、やりたくなかったの。

ネル

そのほうが俺が楽できるじゃん!

エドワード

……ネル様。

ネル

……分かった、やるから。

ネル

……そんな怒んないでよ。

ネル

……じゃあ、地図用意してもらえる?

エドワード

……かしこまりました。

ネル

で、恋煩いっていう状態異常について

ネル

みんなはどれくらい知ってんの?

ジャン

……うーん。好きな相手のことを思いすぎて

ジャン

体の一部が石化するってくらい。

クリス

……同じく。

クリス

……なぜ石化するのか、不明点が多く

クリス

今なお、解明されていないかと。

ネル

……確かにクリスの言うように

ネル

……恋煩いっていうのは分かってないことも多い。

ネル

……ヒーラーが唯一治せないのも恋煩いだけだしな。

ネル

……正直俺は、治せなくていいと思うけど。

ネル

……魔法なんかで治っちまったら

ネル

……石化するほどの想いを

ネル

……否定されるみたいで嫌じゃない?

ネル

……お前の想いはその程度なのかって。

エドワード

……ネル様。

ネル

だが、上の奴らは不服らしくてな。

ネル

……だから

ネル

神殿には恋煩いのメカニズムを研究している奴らいる。

ネル

その結果分かったことは、

ネル

……一定の距離を離れると発症するリスクが

ネル

格段に上がるってことだ。

クリス

……ほう、距離ですか

クリス

……それは興味深い。

ネル

……昨夜の夕食まではこいつに異常はなかったはずだ。

ジャン

あぁ確かに、いつも通りだったと思う。

アル

(確かに、夕食中体に違和感はなかった)

ネル

つまり

ネル

石化が進行したのはアルが自分の部屋に戻ってから

ネル

ってことになる。

エドワード

……そうですね。

エドワード

妥当な推論かと思われます。

ネル

……この街を中心にして(地図にコンパスの針を刺す)

ネル

……一定の距離を除外すると(地図にコンパスで円を描く)

ネル

……げっ。

ジャン

なになに?

ジャン

アルの想い人の居場所が分かったの?

ネル

……こいつの想い人がいる可能性が高いのは

ネル

……こいつの故郷、ルティス村だ。
(地図上のルティス村を指さしながら)

アル

(……すげぇ、マジで当てやがった。)

ジャン

……マジか。

クリス

……ここからだと、ずいぶん遠いですね。

エドワード

……それだけではありません。

エドワード

……この村は標高が高い上に、周辺は崖に囲まれ

エドワード

……陸の孤島と化している村です。

ジャン

……うわぁ、すでに行きたくなくなってきたわ。

アル

(おい!)

エドワード

……他にも問題があります。

ジャン

何?

エドワード

……さすがに勇者そっくりの石像を

エドワード

そのままの状態で持ち歩くのは目立ちすぎます。

エドワード

……敵に勇者不在ということがバレれば

エドワード

……大規模な魔族侵攻が始まる可能性も

ジャン

……うーん。なんだかんだ言いつつ

ジャン

……俺たちは勇者パーティーだからな。

ジャン

……主力がいないと戦闘も厳しくなるよな。

エドワード

……これからの戦闘において

エドワード

……誰を主軸に据えるかも

エドワード

……重要な案件ですが

ネル

……それより

ネル

このあほ勇者を目立たず運ぶ方法を考えよう

ジャン

うーん。

ジャン

……石像なら、マジックバッグに入れられないかな?

クリス

ふむ、面白い発想ですね!

エドワード

生身の人間は入らないので

エドワード

入ったら入ったらで、

エドワード

……どんな状態なのか気になりますが。

ジャン

……じゃあ、さっそく

ジャン

時間経過するタイプと

ジャン

しないタイプの2つを用意したよ♪

ジャン

……じゃあ、時間経過しないタイプから

ジャン

……うーん。こっちは入んないや。

ジャン

じゃあ、次

ジャン

時間経過するタイプ

ジャン

あっ!

ジャン

入った!入ったよ!

ジャン

ちゃんと取り出せるし、大丈夫。

アル

(……マジックバッグに入ることになるとは)

アル

(……不思議な感じだな)

エドワード

……とりあえず、運ぶ方法が決まってよかったです。

エドワード

……ですが

エドワード

この事実は公開しない方が良さそうですね。

ネル

……そうだな。

ネル

……石化が誘拐の手口に

ネル

……利用されるなんてことになったら

ネル

……まずいからな。

ネル

……お前らも絶対言うなよ。

クリス

……もちろんです。

ジャン

……うん。わかった。

そのあとも

ルティス村へ向けての

話し合いが続き

エドワード

……それでは、出発しますか。

アル

(……こんな姿になっちゃったけど)

アル

(また、会えるかな。)

アル

(……ルード。)
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