人に優しくしたら、自分が壊れた。

第3話

2021年03月15日

#ミステリー

#いじめ

#学園

#ホラー

#青春恋愛

#ドラマ

クリオネ

次の日

平澤由佳里

おはよ、真世！

山中真世

おはよう、由佳里

平澤由佳里

あ、今日って確か学園祭の取り決めの日だったよね？

平澤由佳里

うちのクラスの催し物はお化け屋敷だっけ？

平澤由佳里

お化け役だけは免れたい所だよねー（笑）

山中真世

………

平澤由佳里

…真世？

平澤由佳里

…どしたの？

山中真世

……ねぇ、由佳里

山中真世

姫川さんのことも、私たちの担当チームの中に入れるつもりなの？

平澤由佳里

…え？

山中真世

先に言っとくけど

山中真世

私、反対だから

平澤由佳里

真世…

平澤由佳里

ま、まだ姫川さんからは何も言われてないよ？

山中真世

じゃあ、もし『同じチームに入れて欲しい』って言われたら？

平澤由佳里

………

平澤由佳里

じゃあ、真世も姫川さんのことを仲間外れにしたいの？

山中真世

そ、そういうわけじゃ…

平澤由佳里

もし自分が誰からも『一緒にやろう』って誘ってもらえなくて…

平澤由佳里

勇気を出して『仲間に入れて欲しい』って誰かにお願いしても拒絶されたら、どんな気持ちになる？

山中真世

……っ

平澤由佳里

でも私…真世の考えが間違いだとは思ってないよ

山中真世

え？

平澤由佳里

誰だって、毎日楽しく、無難に過ごしたくて当然だもん！

平澤由佳里

でもね、それだけじゃなんの解決にもならないよ

平澤由佳里

私は、間違った選択だけはしたくないだけなの…

山中真世

由佳里…っ

平澤由佳里

こんなの、私のワガママだってこともわかってる

平澤由佳里

そのせいで真世に心配かけちゃってるから…

平澤由佳里

ごめんね、真世…

山中真世

……そっか

山中真世

わかったよ

平澤由佳里

真世…？

山中真世

…しゃーねぇなぁ！

山中真世

とことんまで付き合ってあげるしかないよね（笑）

山中真世

だって、私はあんたの親友だもん！

平澤由佳里

真世っ…！

平澤由佳里

ありがとう、真世

平澤由佳里

(本当に…ごめんね、真世)

姫川麗蘭

おはよう、由佳里ちゃん！

平澤由佳里

あっ…おはよ、姫川さん！

山中真世

(『由佳里ちゃん』って…)

姫川麗蘭

山中さんも、おはよう

山中真世

おはよう

姫川麗蘭

あ、あのね…

姫川麗蘭

来月の学園祭のことなんだけど…

平澤由佳里

もちろん、姫川さんも一緒にやろうね！

姫川麗蘭

えっ…ほ、本当に？

平澤由佳里

まだどんな役割りに決まるかわからないけど、この３人は固定で動きたいなって思ってるの

平澤由佳里

いいよね…？真世

山中真世

……うん

姫川麗蘭

ありがとう、２人とも…

姫川麗蘭

よろしくね

山中真世

………

その３人のやり取りを、遠目から樹里は黙って見ているのだった

菱木

おはよう！

菱木

今日の出席を取るぞー

クラスメイト

先生、上原くんって今日お休みですかー？

菱木

おいおい、今から出席取るってのに先に言わせるのか？（笑）

菱木

上原は今朝、風邪で休むって連絡があったんだ

平澤由佳里

(上原くん…風邪ひいたんだ)

平澤由佳里

(昨日はいつも通り元気だったのに…)

ピコン♪

平澤由佳里

(ん？LIME…)

平澤由佳里

(う、上原くんから…？！)

上原勇也

おはよ、平澤

上原勇也

俺が今日休むってもう聞いた？

平澤由佳里

うん、さっき先生から聞いたけど

平澤由佳里

風邪だって？

平澤由佳里

大丈夫なの？

上原勇也

あぁ、バカは風邪ひかないっていう言葉が嘘だって全力で主張したい気分（笑）

平澤由佳里

（笑）

平澤由佳里

今も熱、あるの？

上原勇也

うん、ちょっとね

平澤由佳里

そっか、お大事にね

平澤由佳里

今日は特に大事な連絡事項とかはなさそうだし

平澤由佳里

また明日、来れそうだったら来てね

上原勇也

うん、ありがとう

上原勇也

あのさ、平澤

平澤由佳里

何？

上原勇也

俺、実は学校の机の中に1冊だけ漫画置きっぱなしにしてると思うんだけど…

上原勇也

後で、確認してもらってもいいかな？

平澤由佳里

漫画？

平澤由佳里

うん、じゃあ休み時間に机の中探してみるね

上原勇也

それでさ、ついでって言ったら悪いんだけど…

上原勇也

もしあったら、俺の家まで届けに来てくれない？

平澤由佳里

えっ…上原くんちに？

上原勇也

学校休んだはいいけど、さすがに暇で死にそうなんだよね（笑）

上原勇也

で、久しぶりに「進撃の巨体」読んでたんだけどさ

上原勇也

23巻だけ持って帰るの忘れてることに気付いたんだ

上原勇也

今からマーレ編突入！って所ですっげー凹んだ（笑）

上原勇也

超気になって、余計熱上がりそうなんだよな（笑）

平澤由佳里

それは大問題だね（笑）

平澤由佳里

マーレ編から一気に物語が変わるのに（笑）

上原勇也

だろ？（笑）

上原勇也

今日って確か、学校昼で終わりだったよな？

上原勇也

その帰り道でいいから、寄ってってくれたら助かるんだけど

平澤由佳里

そ、それはかまわないけど…

平澤由佳里

私でいいの…？

上原勇也

ああ、宮坂のことなら気にすんなよ

上原勇也

『勇也くぅ〜んっ！』って、アイツの黄色い声聞いたら余計悪化しそうだし（笑）

上原勇也

もちろん宮坂には何も話さないし、変に勘繰られたりしないから大丈夫だよ

平澤由佳里

…本当？

上原勇也

平澤に…お願いしたいんだ、俺

上原勇也

平澤だったら俺、安心できるから…

平澤由佳里

そっか

平澤由佳里

わかった

平澤由佳里

じゃあ、学校の帰りにそのまま漫画届けに寄らせてもらうね

上原勇也

うん、待ってる

平澤由佳里

(上原くんから聞いた住所だと、確かこの辺りだと思うんだけど…)

平澤由佳里

(ま、まさかこんな展開になっちゃうなんて…！)

平澤由佳里

(もちろん、漫画を渡したらすぐに帰るけど…)

平澤由佳里

(でも、宮坂さんじゃなくて私に頼んでくれた)

平澤由佳里

(嬉しすぎるうえに、ドキドキしちゃうしどうしよう…！！)

平澤由佳里

(ここだよね、上原くんの家)

平澤由佳里

(あ…「上原」って表札が出てる)

平澤由佳里

(ど、どうしよう…緊張するっ！)

平澤由佳里

(漫画を渡しに来ただけなんだから…落ち着け！私っ…！)

震える指先で、インターホンのボタンを押した

ピンポーン

平澤由佳里

(ヤバッ…顔真っ赤だったら恥ずかしすぎる…！)

ガチャッ

上原勇也

よっ、平澤！

上原勇也

来てくれたんだ…ありがとう

平澤由佳里

う、上原くん…！

平澤由佳里

具合は、どう？

上原勇也

あぁ、今は熱下がっててわりと元気なんだ

平澤由佳里

そう…よかった

平澤由佳里

あっ、これ…進撃の巨体23巻！

上原勇也

あっ！ありがとな！

平澤由佳里

これで続きが読めるね

上原勇也

うん、お陰様で退屈せずにすみそう！

平澤由佳里

よかった…

平澤由佳里

あ…、それじゃ、私帰るねっ

由佳里が踵を返そうとした時、勇也が呼び止めた

上原勇也

あっ…平澤！

平澤由佳里

…え？

上原勇也

あ…あのさ

上原勇也

よかったら…ちょっと上がって、お茶でもしていかない？

平澤由佳里

えっ…？！

上原勇也

せ、せっかくここまで来てくれたわけだしさ…

上原勇也

お礼に、コーヒーぐらい淹れさせてよ

平澤由佳里

………

人に優しくしたら、自分が壊れた。

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