ナンパ男の秘密

第19話

完璧王子様と不完全な恋

11,130

2019年10月02日

#ドラマ

#短編集

テラーノベル

美月

はぁ…今日もかっこよすぎる

成瀬すず

誰が？

美月

パーフェクト王子、蓮くんに決まってるじゃん！

美月

見た目はモデルみたいだし、かっこいいし、優しいし、頭もいいし…

美月

いつもニコニコ優しくて、大人っぽくて

結花

穏やかで真面目で！

結花

その上、サッカー部のエース！

結花

ほんとパーフェクトだよねぇ…

美月

ねー！

成瀬すず

なるほど…？

結花

相変わらず、すずって蓮くんに全然興味ないよね

美月

私達なんて同じクラスじゃないだけで、こんなに絶望してるのに…

美月

かっこいいとか思わないの？

成瀬すず

もちろんかっこいいとは思うよ

成瀬すず

でも、なんていうか完璧すぎてちょっと……

結花

それいつも言ってるよね

結花

二年になったばかりの頃、食堂で蓮くんが近くにいる時も言ってたでしょ

成瀬すず

あ、あれは蓮くんがいることに気づいてなくて…！

成瀬すず

というか、よく覚えてるね…？

美月

衝撃的だったもんね。蓮くんに興味持たない子がいるなんて

有馬蓮

…………

美月

あっ、噂をすれば蓮くんがうちのクラスに！

結花

教科書借りにきたのかな？

結花

相変わらず王子様みたいにかっこいい…

美月

というか、すず

美月

完璧すぎるのはちょっとって言うけどさ、じゃあ逆にどんな人が好みなの？

成瀬すず

うーん…可愛い弱みがある人とか？

結花

そんな人いっぱいいそうだけどなぁ…

美月

でも確かに、完璧な人に弱みがあるのっていいよね

成瀬すず

そうなの！

成瀬すず

誰も知らない弱点を、私だけが知りたいというか…

成瀬すず

それに、好きな人だったら完璧じゃなくても好きだし…

成瀬すず

（でも、蓮くんには弱点なんてなさそうだよね）

成瀬すず

（パーフェクト王子って呼ばれてるくらいだし…）

結花

あ！！蓮くんがコーヒー飲んでる！

美月

しかもブラック

美月

絵になる…

結花

かっこいい……

美月

すずももっと興味持ったほうがいいよ！

成瀬すず

う、うん…

成瀬すず

（確かに、ブラックコーヒーが似合う高校生ってすごい…）

成瀬すず

（まさにパーフェクト王子だなぁ）

成瀬すず

（蓮くんが、あんなに完璧な理由には興味があるかも…）

放課後…

成瀬すず

（図書室寄ってたら遅くなっちゃった…）

成瀬すず

（ん？あれって…）

有馬蓮

…………

成瀬すず

（蓮くんと…猫…？）

成瀬すず

（あ、撫でようとしてるのかな）

成瀬すず

（蓮くんのことだから、きっと猫にも好かれるんだろうなぁ…）

猫

シャー！！

有馬蓮

……！

成瀬すず

（えっ！めちゃくちゃ威嚇されてる…！？）

成瀬すず

（しかも、すごく落ち込んでる…）

成瀬すず

（蓮くんが猫に懐かれないなんて意外。ちょっと可愛いかも）

成瀬すず

ふふっ…

有馬蓮

え？

成瀬すず

あ！

成瀬すず

（しまった、声に出てた…っ）

有馬蓮

隣のクラスの成瀬さんだよね？

有馬蓮

…恥ずかしいとこ、見られちゃったな

成瀬すず

ごめんね、見るつもりじゃ…

成瀬すず

（蓮くんが照れてるところ、初めて見た…！）

成瀬すず

（あれ？というか蓮くん、私の名前知ってたんだ）

有馬蓮

…恥ずかしいから皆には黙っててくれる？

成瀬すず

……どうしようかな

有馬蓮

えっ

成瀬すず

（…なんてね）

成瀬すず

（蓮くんがあまりに可愛いから、つい冗談を言っちゃったけど）

成瀬すず

（これくらいにして――）

有馬蓮

じゃあ、何でも言うこと聞くよ

成瀬すず

…え？

有馬蓮

今の話を黙っててもらう代わりに

有馬蓮

成瀬さんの言うこと、何でもひとつ聞く

成瀬すず

い、いいよ！そんなことしなくても！

成瀬すず

さっきのは冗談だから、誰にも言わないよ

成瀬すず

というかたとえバレたとしても、ギャップで逆に好感度上がる気が…

有馬蓮

ううん、俺がしたいんだ

成瀬すず

（ど、どうしよう、何か話が変な方向に…）

成瀬すず

（そういえば、美月と結花が蓮くんは性格がよくて真面目だって言ってたっけ）

成瀬すず

（真面目だから、冗談を本気に受け取った…！？）

有馬蓮

それに…このことは他の人には知られたくなくて

有馬蓮

だから何でもいいよ、俺にできることなら

成瀬すず

でも…

成瀬すず

（蓮くんのまっすぐな言葉が、胸に突き刺さる…っ）

成瀬すず

（冗談なんて言わなければよかった…）

有馬蓮

…これは例えばの話だけど、成瀬さんの買い物に付き合うとか

成瀬すず

買い物…？

有馬蓮

うん、男手が必要な買い物がもしあれば

有馬蓮

あっ…もちろん、例えばの話だよ！

成瀬すず

（それってデートってこと？）

成瀬すず

（申し訳ないけど、逆にここまで言われて断るのも…）

成瀬すず

（それにこんな機会滅多にないし、蓮くんが完璧な理由を探るチャンスだよね）

成瀬すず

（……よし！）

成瀬すず

じゃあ、今度の土曜日私とデートしてもらってもいいかな？

成瀬すず

買い物じゃなくていいから、よかったら一緒にどこか行くとか…

有馬蓮

もちろんだよ

有馬蓮

というか、それだけでいいの？

成瀬すず

充分すぎるよ…！

成瀬すず

むしろ、ここまでしてもらって申し訳ないくらいで…

有馬蓮

気にしなくていいのに

有馬蓮

俺はむしろ……

成瀬すず

え？

有馬蓮

ううん、何でもない

有馬蓮

それじゃ、今後の土曜日よろしくね

有馬蓮

あ、連絡先交換しよう？

成瀬すず

う、うん……

成瀬すず

（な、なんか自然な流れで連絡先まで交換してしまった…）

成瀬すず

（これがパーフェクト王子、蓮くん…！？）

有馬蓮

じゃあまたね。気をつけて

成瀬すず

うん、蓮くんも

成瀬すず

…………

成瀬すず

（というか、私…）

成瀬すず

（あの蓮くんをデートに誘うなんて大胆なことしちゃった…！？）

成瀬すず

（いや、約束してしまったものは仕方ない）

成瀬すず

（せっかくだし楽しむしかないよね）

成瀬すず

（そして、蓮くんが完璧な理由を暴く…！）

約束の土曜日

蓮くんと私は、話題の映画を一緒に観にいくことになって……

成瀬すず

（ちょっと早く着いちゃったな。蓮くんは…）

有馬蓮

…………

成瀬すず

（もう待ってる！まだ15分前なのに…）

成瀬すず

（というか、立ってるだけでかっこいいって何事？）

成瀬すず

（通りすがりの女の人、みんな振り返ってるよ…）

有馬蓮

あっ

成瀬すず

ごめんね、お待たせ…！

有馬蓮

ううん、今着いたところだから気にしないで

成瀬すず

（優しい…）

有馬蓮

…………

成瀬すず

蓮くん？

有馬蓮

あっ、ごめん

有馬蓮

すずちゃんの私服、かわいいなって思って

成瀬すず

…！？

成瀬すず

（さ、さらっと…！！しかも、そんな綺麗な照れ顔で…！）

成瀬すず

（これがパーフェクト王子、蓮くん…）

成瀬すず

（…ん？というか、今…）

成瀬すず

すずちゃんって…

有馬蓮

ああ、うん。せっかくのデートだからと思って

有馬蓮

…ダメかな？

成瀬すず

だ、駄目ではないけど…

有馬蓮

そっか、良かった

成瀬すず

（……はっ！）

成瀬すず

（まだ会って数分なのに、気づけば蓮くんのペースになってる…）

有馬蓮

じゃあ、行こうか

有馬蓮

映画以外にも行きたいところがあったら言ってね？

成瀬すず

う、うん…ありがとう

成瀬すず

蓮くんも行きたいところがあったら言って──

成瀬すず

！？

成瀬すず

（手が当たってる…！）

有馬蓮

せっかくのデートだから

有馬蓮

…繋いでもいい？

成瀬すず

う、うん…

有馬蓮

ありがとう

成瀬すず

（き、綺麗な笑顔……！）

成瀬すず

（…強引じゃなくて自然だからかな？）

成瀬すず

（名前で呼ばれても、手を繋いでも、嫌な感じが全くしない…）

成瀬すず

（むしろドキドキして……）

有馬蓮

…………

成瀬すず

（あ…車道側歩いてくれてる）

成瀬すず

（優しいなぁ…）

数時間後…

成瀬すず

映画、面白かったね

成瀬すず

座席、予約しておいてくれてありがとう

有馬蓮

ううん、一緒に楽しめてよかった

成瀬すず

（席の予約だけじゃなくて、冷房が寒くないか気をつかってくれたり）

成瀬すず

（緊張している私に、いろいろ話しかけて和ませてくれたり）

成瀬すず

（蓮くんって、本当に優しい人だなぁ…）

成瀬すず

（最初は蓮くんが完璧な理由を探ろうと思って提案したデートだったけど）

成瀬すず

（今は私、純粋に楽しいと思ってる）

成瀬すず

（…蓮くんが皆に好かれる理由、分かった気がするなぁ）

有馬蓮

すずちゃん、飲み物は何にする？

成瀬すず

ミルクティーにしようかな

成瀬すず

蓮くんは？

有馬蓮

俺は…

有馬蓮

…紅茶にしようかな

成瀬すず

（あれ？）

成瀬すず

ブラックコーヒーじゃなくていいの？

有馬蓮

…実は、俺

有馬蓮

コーヒーより紅茶の方が好きなんだ

成瀬すず

そうなの…！？

成瀬すず

でも、学校でブラックコーヒー飲んで…

有馬蓮

一度友達にすすめられて飲んだ時に、『美味しい』って言ったら

有馬蓮

それからなんとなく断りにくくなっちゃって…

有馬蓮

今さら、苦手って言うのも恥ずかしくて飲んでたんだ

成瀬すず

そうだったんだ…

成瀬すず

（まさか、蓮くんがコーヒー苦手だったなんて意外だったけど…）

成瀬すず

（飲めないことを隠してたのは、友達に対しての優しさもあるんだろうなぁ）

有馬蓮

…なんか、今日はすずちゃんに恥ずかしいところを見られてばかりだね

成瀬すず

恥ずかしいところじゃないよ

成瀬すず

蓮くんって完璧なイメージがあったから、苦手なことがあるのは意外だとは思ったけど…

成瀬すず

（蓮くんにも苦手なものがあるって知れたことで、近づけた気がする）

有馬蓮

俺、全然完璧なんかじゃないよ

有馬蓮

猫舌だし、雷もダメだし…あとは部屋の片づけも苦手

成瀬すず

そうなの？

有馬蓮

うん、恥ずかしいから誰にも話したことなかったけど

成瀬すず

え…

成瀬すず

（それって、私だけに話してくれたってこと…？）

有馬蓮

だから、秘密ね

成瀬すず

う、うん…

成瀬すず

（何で私には、教えてくれたんだろう）

成瀬すず

（この間の放課後に、既に意外な弱みを知ってしまっているから…？）

成瀬すず

（もう夕方…）

成瀬すず

（蓮くんと過ごしていると、一日があっという間だったなぁ…）

有馬蓮

今日はありがとう

成瀬すず

こちらこそありがとう

成瀬すず

（今日が最初で最後のデートだって分かってたのに）

成瀬すず

（蓮くんと一緒にいると楽しくて、居心地がよくて…ドキドキして…）

成瀬すず

…帰るの寂しいね

有馬蓮

え…

成瀬すず

！

成瀬すず

（わ、私、今とんでもないことを口走ったような…！）

成瀬すず

ごめん、今のは忘れ──

有馬蓮

すずちゃん

成瀬すず

…っ

成瀬すず

（蓮くん…どうしてそんな真剣な顔…）

有馬蓮

…俺に興味、持ってくれたんだ？

成瀬すず

（興味って……）

成瀬すず

どういう意味…？

有馬蓮

俺ね、ずっとすずちゃんのことが好きだったんだ

成瀬すず

え…

有馬蓮

二年になったばかりの頃、俺、いろんな人に完璧って言われて

有馬蓮

…好きでいてくれるのは嬉しいけど、ちょっと息が詰まりそうな時期があったんだ

有馬蓮

そんな時、食堂ですずちゃんが、完璧な俺には『興味がない』って言っているのを聞いて

有馬蓮

…ちょっとだけ楽になったんだ

成瀬すず

（あの時の話、聞かれてたんだ…）

有馬蓮

それからすずちゃんを目で追うようになって

有馬蓮

気づいたら、好きになってた

有馬蓮

どうしたら振り向いてもらえるんだろうって考えてた時

有馬蓮

教室で『可愛い弱点を見せてくれる人がいい』って話しているのを聞いて

成瀬すず

あっ…

成瀬すず

え、じゃあ、もしかして…

有馬蓮

うん、あえてすずちゃんに弱点を見せたんだ

有馬蓮

あの日の放課後も、今日も

成瀬すず

（全然、気づかなかった…！）

成瀬すず

（猫に威嚇された蓮くんを見たのは、偶然じゃなかったんだ）

成瀬すず

（どうして私の名前を知ってるんだろうって思ってたけど、そういうことだったんだ）

有馬蓮

クラスも違うから接点もなかったし、俺のこと知ってほしくて

有馬蓮

どうにかしてデートができるように、すずちゃんに買い物を提案した

成瀬すず

ず…ずるいよ、蓮くん

有馬蓮

うん、ごめん

有馬蓮

本当の俺は完璧なんかじゃなくて、弱点もたくさんあって

有馬蓮

…ずるい男なんだ

成瀬すず

（でも、どうしてだろう）

成瀬すず

（ずるいって思うのに、それ以上に嬉しい…）

有馬蓮

でも、すずちゃんを好きな気持ちは本物だから

有馬蓮

よかったら、これから本当の俺を知ってほしい

有馬蓮

…すずちゃんのことも知りたいから

有馬蓮

……ダメ？

成瀬すず

（まだ蓮くんのことを全部知ったわけじゃない）

成瀬すず

（でも、今日少しだけ近づけた気がして嬉しかった）

成瀬すず

（私は──）

成瀬すず

完璧じゃなくても、ずるくてもいい

成瀬すず

本当の蓮くんがもっと知りたい

有馬蓮

…うん

有馬蓮

これから一緒にお互いを知っていこう

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