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夕べには白骨となる

夕べには白骨となる

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8

第8話

♥

44

2023年06月09日

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数日後

悠真

今日はきっぱり

悠真

話をさせてください

どうしてそんなに

真っ赤な顔をして

いらっしゃるの?

そんなにため息をついて

恐ろしい目をなさって

いったいどうなさったの?

悠真

理由を知りたいですか?

悠真

それはですね

悠真

僕がこんなにも

悠真

あなたを心から愛していて

悠真

あなた以外を何も知らず

悠真

所有すらしていないのに

悠真

どうして僕以外の人間が

悠真

あなたを愛する権利があるか

悠真

わからないからですよ!

いったいどうして

この私をお選びになるの?

よりにもよって

人のもちものを?

悠真

あなたを選んだ理由?

悠真

理由なんてありません

悠真

僕の心を誰が理解でき

悠真

僕のような恋を

悠真

誰がするものですか

あなたは気が

狂っておいでですわ

悠真

そうかもしれませんね

悠真

あなたを愛するとともに

悠真

分別をも

悠真

無くしてしまったようです

...

きっと私のどこかに

軽率なところを

ご覧になったに

違いませんわ

だけど私は

それをふしだらと

呼ぶつもりはありません

だってそれは

誰にも遠慮は要らないと

思った時に見せる

ちょっとした油断ですもの

悠真

そうでしょうとも

悠真

僕だってこの心の恐ろしい

悠真

愛着の絆を断ち切るために

悠真

努力はしているんで

悠真

しかしいくら努力しても

悠真

努力の結果は水の泡

悠真

僕はどうしても

悠真

あなたを愛さずにはいられない!

あなたはご立派な精神を

もっていらっしゃるんだし

私なんぞを悲しくお慕いに

なさらないで下さいね

そして数日

葵は悠真と対峙したのでありますが

はじめは義務のもとに

求愛していた悠真も

いつしか彼女に

恋をしていたのでありました

彼は溢れんばかりの熱意を込めて

心情を吐露しながら

涙を流し

哀願し

約束し

おもねり

愛を誓っておりました

あまりに熱のこもった

相手の求愛攻勢に

さすがの彼女も揺らぎ始める始末でした

かくして慎み深かった葵は屈しました

ついに屈服してしまったのです

しかし

悠真の友情でさえ

地に堕ちてのことであれば

ことさら異とするには

あたらないでありましょう

婦人会

婦人1

恋愛結婚ですって?

婦人1

ご両親の気がしれませんわ

婦人3

えぇでも

婦人3

もうすっかり決まった

婦人3

と言われておりますのよ

婦人2

理性によって

婦人2

だいたい幸せな結婚って

婦人2

結ばれるのじゃないかしら

でもその代わり

理性による結婚の幸福も

よく一瞬にして

吹き飛んでしまうでしょう

恋というものが

頭を持ち上げて

婦人3

ですけど

婦人3

理性による結婚ていうのは

婦人3

両方とも遊び疲れた後の

婦人3

結婚なんですのよ

婦人3

誰しも一度はそこを

婦人3

通らなくちゃなりませんわ

婦人2

とすると恋愛も

婦人2

ワクチンと同じように

婦人2

人工的に植え付ける

婦人2

必要がありますわね

婦人1

若いころ

婦人1

私はミュージシャンに

婦人1

夢中になりましたけど

婦人1

ためになったかどうかは

婦人1

わかりませんわ

婦人3

でも冗談は抜きにして

婦人3

恋を知るにはやはり

婦人3

一度間違いを犯して

婦人3

悔い改めるに限りますわよ

まぁ

結婚したあとでも?

婦人2

悔い改めるのに

婦人2

遅すぎることはありません

婦人3

そのとおりよ

婦人3

一旦間違いを犯してから

婦人3

悔い改めなくちゃ

婦人3

どう思いになりまして?

そうね

...

もしも頭の数だけ

人の考えも違うのでしたら

人の心の数だけ

愛情の種類も

違うのじゃないかしら

婦人1

そのとおりよ

婦人1

一つのことを悲劇的に見て

婦人1

そのために

婦人1

苦しむこともできれば

婦人1

単純に楽しく見ることも

婦人1

できるんですのよ

婦人2

ねぇ

婦人2

続きは場所を変えて

婦人2

話さないこと?

婦人2

このあとホットヨガの

婦人2

予定なんですけど

婦人2

いらっしゃいます?

婦人3

あたしは遠慮しますわ

婦人3

体を動かすのは苦手です

婦人3

あなたもでしょう?

婦人1

あら?

婦人1

あたしは好きですのよ

婦人3

まぁ

婦人1

あなたは生き生きと

婦人1

暮らしてらっしゃるけど

婦人1

あたしときたら

婦人1

それは退屈なんですの

婦人2

あなたはどうなさいます?

ご遠慮しますわ

婦人2

そう?

今日はあまり長く

お邪魔できませんの

婦人2

それなら仕方ありませんわ

婦人2

今日はお開きにしましょう

(ガチャッ)

戻ったわ

悠真

おや?

悠真

おかえりなさい

悠真

お迎えにあがろうと

悠真

思ってましたのに

...

前々からあなたに

申し上げたいことが

ありましたの

悠真

僕には言葉の意味が

悠真

わからないのですが

あなたのなさったことは

いけないことですわ

とてもいけないことですわ

悠真

それを僕が

悠真

自分で知らないとでも

悠真

思っているのですか?

悠真

だけど僕が

悠真

あんな風に振る舞ったのは

悠真

誰のためでしょう?

まぁ

なぜそんなことを

私におっしゃるんです?

悠真

訳はご存じのはずですが

それはただ

あなたに心ってものが

ないことを

証明するだけですわ

悠真

今おっしゃったことは

悠真

ただの過ちであって

悠真

恋ではありませんよ?

いま口にされた

忌まわしい言葉は

もう使わないよう

私が口止めしたことを

覚えてらっしゃいます?

悠真

そうでしたね

これは前々から

あなたに申し上げようと

思っていたことなんですの

悠真

どんなことです?

もうこんな事はおしまいに

しなければなりませんわ

悠真

...

私はいままで人前で

顔を赤くしたことなんか

ありませんでしたのに

なにかしら

自分が悪いことを

しているような

気になってくるんですもの

悠真

僕にどうしろと

悠真

おっしゃるのです?

夫に謝って欲しいのです

悠真

そんなこと

悠真

あなたは望んでなんか

悠真

いませんよ

いいえ

もし本当に

私を愛してくださるのなら

私の気持ちが安らかに

なるようにしたくださいね

悠真

これから先

悠真

あなたにも僕にも

悠真

安らぎなんてあるとは

悠真

思えませんね

悠真

ただ考えられるのは

悠真

絶望視か不幸か

悠真

さもなければ幸福ですが

悠真

その幸福といっても...

じゃあ私のために

これだけはお約束して

あの言葉は仰らないって

いい友達になりましょうね

悠真

友達ですって?

悠真

友達になんか

悠真

なることはできませんよ

悠真

お分かりでしょう?

...

悠真

この世の中で

悠真

一番幸福な人間になるか

悠真

一番不幸な人間になるか

悠真

それはあなた次第なんです

いま仰っていることは

よくないことですわ

悠真

僕がお願いしているのは

悠真

一つじゃありませんか

悠真

あなたに希望をかけながら

悠真

苦しむ権利を持つことです

悠真

それさえ許されないのなら

悠真

消えてしまえと命じて下さい

...

私はどこへでも

あなたを追いやりたくは

ありませんわ

悠真

ならなにも

悠真

変えないでください

悠真

いまのままに

悠真

しておいてください

だけどどうか

いまおっしゃったことを

お忘れになってください

私も忘れてしまいますから

悠真

あなたの仰ったことは

悠真

決して忘れません

悠真

いや

悠真

忘れることはできません

いけません!

いけませんたら!

悠真

だってそれが

悠真

僕の幸福なのですから

悠真

この幸福の一瞬のために...

まぁ!

幸福だなんて!

後生ですからもうなにも

なにも仰らないで!

悠真

...

悠真

僕の言ったことが

悠真

お気に障りましたら

悠真

どうか許してください

...

しばらく一人に

させてくださいね

お願いですから

(バタンッ)
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