青春なんて、しなくていいでしょ。

第27話

向かった先／青春もいいんじゃない？終

672

2019年07月29日

#高橋恭平

#道枝駿佑

#長尾謙杜

#なにわ男子

#青春

#恋愛

♔ 有岡の柚夏 ❥︎

道枝駿佑

あぁ、

道枝駿佑

時間通りやん。

道枝駿佑

ここに来てくれたってことは、

道枝駿佑

…俺を選んでくれたって事でええ？

"花火のよく見える場所"

そこに行けば、

浴衣を着ている駿介の姿が。

私は駿介に少しづつ近づき、

隣に座る。

道枝駿佑

やっぱ俺の事好きなん？

駿介の手の甲が

私の手に触れる。

そのまま繋がれ、

1個1個指を通した。

いわゆる、

恋人繋ぎ。

道枝駿佑

振り払わないってことは、

道枝駿佑

本当に期待してええの？

肩を掴まれ、

お互いの体が向き合う。

ニヤニヤする駿介の顔が近づいてきて。

…きっとあの頃みたいにキスをするんだろう。

でも、

もう。

ゆうか

ふざけんなクソ野郎

道枝駿佑

へ…？

もう嫌なの。

ゆうか

駿介が好きでここに来たんじゃない。

ゆうか

駿介を選んだから来たわけじゃない。

ゆうか

私は、

ゆうか

私の過去に区切りを付けるために来た。

駿介が言った。

過去が忘れられないから、って。

だから青春が嫌いなんでしょ、って。

だから、

決めた。

ゆうか

駿介とは別れて、

ゆうか

過去に区切りを付ける。

ゆうか

もう、

ゆうか

過去は見ないから。

あなたの恋人になった事も、

キスをした事も、

変えられない事実。

でも、無かったことにしたい。

都合がいいかもしれない。

けど、駿介と別れるためには、

こうするしかない。

ゆうか

駿介、

ゆうか

ちゃんと振ってほしい。

道枝駿佑

は…？

ゆうか

あの時、

ゆうか

駿介は私を突き放した。

ゆうか

別れて

ゆうか

なんて言葉は無かった。

ゆうか

区切りを付けるために、

ゆうか

ちゃんと振って欲しいの。

それで私は前に進みたい。

その意思で駿介に伝えると、

駿介は、はは、と笑いだした。

私から一歩離れて、

顔を手で覆い、

笑う。

道枝駿佑

ゆうかはそれで、

道枝駿佑

それで満足するん？

ゆうか

…満足するよ。

道枝駿佑

っ、そか、

少し間が空いて、

駿介は私の顔を見ながら、

真っ直ぐと言った。

"別れてください"

ゆうか

うん。

ゆうか

…バイバイ

ゆうか

駿介。

クソ野郎だったけど、

駿介は教えてくれた。

ゆうか

ありがとう駿介

私の気持ちを。

だから、

少しばかりのお礼。

駿介が泣いてる事、

見て見ぬふりしてあげるから。

最後くらい、

私は笑顔で。

なれない下駄で走る。

もう待ち合わせ時間はとっくに過ぎてる。

遅刻というレベルではない。

…あまりに駿介に時間をかけすぎた

高橋も気が長くない。

もう、待ち合わせ場所には居ないかもしれない。

やっと、気持ち。

気付いたのに。

ゆうか

はぁ、はぁっ、

何で下駄なんだ。

何で浴衣なんだ。

こんな事なら

私服で良かったのに。

浴衣が少し崩れるくらい、

髪型が少し崩れるくらいなら

やらなければ良かった。

完璧な私を見て欲しかっただけなのに…っ、

ゆうか

っ、もう！！

何でこんな、

あいつの為に走ってんだろ。

まるで、あの時見てた、

少女漫画みたいじゃん。

…私の大っ嫌いな青春の1ページじゃん。

でも、

もう、

そんなこと、

どうでもいい。

そのぐらい

あいつに会いたい。

ゆうか

居ますようにっ…！

スマホを握りしめ、

ただただ走った。

ゆうか

はぁっ、はぁっ、…っ、

ゆうか

高橋！

もう祭りは始まっていた。

入口に着いたけど、

高橋の姿は無かった。

…やっぱり、諦めたのかな。

高橋は女に困らない。

その気になれば、

その辺の女の子をナンパして

夏祭りぐらい楽しめるだろう。

そう思えば、

じわっと辺りが滲んだ。

…会いたい、のに、

ばか。

諦めて帰ろうとした途端、

"そこのお姉さん"

と、腕を引かれた。

ゆうか

…え

高橋恭平

遅い

そのまま勢いで飛び込んだ腕の中。

見たこともない浴衣で、

ふわりと香った香水で。

"遅い"と言った声は、

確かに"高橋"の声だった。

ゆうか

なん、

高橋恭平

さすがに1時間待つのは辛かったわ。

高橋恭平

連絡も無いし、

高橋恭平

電話しても出ないし。

ゆうか

っ、！

高橋恭平

でも、

"俺の為にお洒落してくれたん？"

耳元で聞こえる甘い声。

嬉しい、なんて、

私の返事も聞かずに喜んで。

ゆうか

なん、なんで、

ゆうか

私なの？

高橋恭平

何で、って、

高橋恭平

親友…やから？

…でも、その言葉に、

少し胸が傷んだ。

ゆうか

親友…

高橋恭平

ん、親友。

そんな、二度と言わないでよ、

理由もわからず、

痛いの、

胸が痛いの、

私は、高橋から離れて、

溢れた涙を拭いた。

そして、

"ねぇ"

って、垂れる袖を引っ張った。

ゆうか

親友じゃ、なんか、やだ、

わがままだ。

前に、親友だろって言ったのに。

高橋恭平

は…

高橋恭平

どうしたん？

高橋恭平

急に。

高橋恭平

お前が言うたやん。

高橋恭平

親友やって。

ゆうか

嫌、なの！

ゆうか

いや、

掴んだ袖に力を入れて、

"長尾くんから聞いた"

って、

勝手に動く口。

ゆうか

高橋…

ゆうか

私の事、

ゆうか

好き、なんでしょ？

高橋恭平

は、…え？

ゆうか

だから、

ゆうか

彼女からお祭り誘われても断ってたんでしょ

言っちゃダメって言われたけど、

1回開いた口は、

もう閉じられなかった。

たんたんと話していくと、

薄暗くても分かるくらい、

高橋は顔を赤く染めていた。

高橋恭平

っ、ああもう！！

ゆうか

…！

高橋恭平

あいつ、

高橋恭平

絶対しばく…

あぁ、

ごめんね、長尾くん。

"その余裕な感じムカつく"

と言ったあと、

顔が近付いて、

ほっぺにキスが落とされた。

ゆうか

へ、

高橋恭平

好きってバレてるんやったら、

高橋恭平

ガンガン攻めていいやんな？

ゆうか

え、あ、

高橋恭平

今日はその余裕、

高橋恭平

ぶち壊したるわ

"覚悟しとけ"

何て言われても、

私だってドキドキして、

余裕ないって。

高橋恭平

時間勿体ないし行くで

繋がれた左手。

そのまま手を引かれ、

どんどん祭りの中へ進んでいく。

意識して、

高橋の隣に並べば、

その身長の大きさに圧倒されて。

後ろから見ると、

浴衣、似合ってるなって。

高橋恭平

…あ、せや、

ゆうか

ん？

高橋恭平

髪の毛も、

高橋恭平

メイクも、

高橋恭平

浴衣も、

高橋恭平

全部可愛ええ。

ゆうか

っ…！？

高橋恭平

俺のため、とか、

高橋恭平

…嬉しい

少し後ろを向いて、

耳真っ赤にして笑うなんて。

ゆうか

ばーか

高橋恭平

褒めてやったのに。

ゆうか

うるさい

高橋恭平

でもホンマに似合ってる

ゆうか

何度も言わなくていい。

高橋恭平

言いたいねんもん

ゆうか

黙れ

"高橋も似合ってるよ"

その一言が言えないのは、

ドキドキしているせい。

高橋と過ごした時間は楽しかった。

私の余裕をぶち壊す

何て言いながら、

私がふと言う一言に照れてばっかで。

転けそうな時、

高橋が受け止めてくれて。

その時、

高橋の体に飛び込んでしまった。

そこで聞こえた、

異常な心拍数。

…余裕ないの、隠せてないじゃん。

ゆうか

高橋？

高橋恭平

んあ？

ゆうか

今日誘ってくれてありがと

花火が始まる前。

高橋と手を繋ぎながら

星があちこちと光る空を見上げて、

花火が打ち上がるのを待つ。

高橋恭平

別に、

高橋恭平

今年は浴衣着て、

高橋恭平

かっこええって思われたかったからな。

ゆうか

なにそれ

高橋恭平

かっこええって思った？

ゆうか

…素直に言えばね。

高橋恭平

素直に言えば？

"…っ！分かってるでしょ！"

バシンっと肩を叩く私に、

"ちゃんと言わんと分からんし"

と、ケラケラ笑って、

煽る高橋。

…そーゆーとこずるい。

高橋恭平

ほら

高橋恭平

早く。

高橋恭平

花火始まって

高橋恭平

あんま聞こえなくなる

ゆうか

…分かってる、

高橋、

今日の私、

変なんだ。

高橋の隣って、

こんなに苦しかったっけ。

隣に居るのが、

こんなにも幸せだったっけ。

高橋のせいだよ。

全部。

余裕なんて、

全然ないんだよ。

ゆうか

たっ、…

ゆうか

たかは、し、

ゆうか

浴衣…っ、

ゆうか

似合って、…る

繋いでいる手に力を入れて、

高橋から目を逸らす。

隣からは、

"うわ、思ったよりあかんかったわ…"

なんて呟いてて。

高橋恭平

可愛ええ…

高橋恭平

好きやで

ゆうか

っ、あほ！

高橋恭平

抱きしめてええ？

ゆうか

何で！？

高橋恭平

可愛すぎるから。

どうせ断っても意味ないんだろうな。

高橋の事だし。

"勝手にすれば"

そういえば、

"なら遠慮なく"

と言って、

手を離し、私を引き寄せた。

高橋恭平

ゆうかや…

ゆうか

ゆうかだよ？

高橋恭平

ずっとこうしてたい…

ゆうか

花火は？

高橋恭平

ゆうかがおればええねん。

駿介に振られて、

もう駿介と高橋は重ねなかった。

高橋は高橋で。

駿介は駿介で。

高橋は、

こんなにも真っ直ぐ思いを伝えてくれてる。

駿介とは、

全然違うんだって。

ばん、

っと、遠くから一発目の花火の音が聞こえる。

ぱあっと明るくなって、

私と高橋は体を離すと、

花火の上がる方へ体を向けた。

ゆうか

綺麗…

高橋恭平

ゆうかの方が綺麗やで

高橋は私の方を見ると

ふっ、と笑ってからからかってくる。

"花火に集中しろ"

そう言って

顔を無理矢理花火の方に向かせると、

"ほんまやって！"

って、やめてくれない。

ゆうか

うるさい

高橋恭平

照れてるん？

ゆうか

ふざけんな

高橋恭平

ごめんごめん（笑）

"からかいすぎた"

と言って、

花火に集中する高橋。

ちらりと横を見れば、

整った横顔にきゅんとする。

…これまでこんな事無かったのに。

高橋恭平

なぁ、ゆうか。

高橋はドキドキする事ばっかしてくる。

高橋。

私、

余裕なんて1ミリも無いんだよ

高橋恭平

ずっと言いたかったことあるんやけど、

高橋恭平

聞いてくれる？

そっと耳元に近付いて、

"1回しか言わんからな"

って。

高橋恭平

ずっと好きでした

高橋恭平

付き合ってください

ドキドキする以外、

何かある？

溢れ出る感情があって。

もう自分でも分かってる。

この感情。

ゆうか

…今、

ゆうか

返事する、

ゆうか

から、

ゆうか

耳貸して

今度は私が高橋の耳元に近付いて、

ゆうか

…私も好き

暑い。

夏ってこんなに暑かったっけ。

…高橋と、居るからか。

ドキドキして、

顔が熱くて、

余裕もないし、

焦る。

ゆうか

全部、

ゆうか

高橋のせいだからね。

そっと繋がれる左手。

さっき繋いだ時より、

ぎゅっと。

自信がついたように繋がれた。

高橋恭平

どうですか？

高橋恭平

これでもクーラーのついた部屋で青春したいですか？

ゆうか

…たま、には、

ゆうか

外でもいいんじゃない？

"高橋"となら。

ゆうか

好きだよ。

高橋恭平

俺も。

青春なんて、しなくていいでしょ。

作品ページ

次の話を読む

この作品はいかがでしたか？

672

28件

恭平〜〜こっちも心臓もたんわ

駿佑。泣いてたの……？←

みずありがと！そっか笑じゃあこれからもみずって呼ぶね！♡♡ 私は愛してる( ˙-˙ )

♔ 有岡の柚夏 ❥︎

プロフィール

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

作者の他の作品すべて見る

#高橋恭平の新着小説
一覧

関連するタグ

作者の他の作品すべて見る

#高橋恭平の新着小説一覧

関連するタグ

#高橋恭平の新着小説
一覧