「貴方もタイムスリップ出来るかも!? ~巷(ちまた)で噂の都市伝説~」
「月の境目は時空が歪むらしいのですが…………」
陸
愛菜
陸
陸
愛菜さんが顔をこちらに向けた
愛菜
愛菜
愛菜さんの両目は閉じられている。 開いていても、あまり意味がないからだ。
陸
陸
愛菜
愛菜
愛菜
「なんで?」とも「過去か未来のどっちに行きたいの?」とも聞けなかった。
答えはわかりきってる。 愛菜さんは過去に行きたいんだって
今は閉じられている愛菜さんの両目がちゃんと機能していた過去に__
近所に住む愛菜さんは失明している。
視覚に頼ることが出来ない生活は、僕の想像以上に困難なモノだと思う。
小さい時から遊んで貰った、僕の数少ない友達を
今度は僕が助けるんだ。
あの時は本当に心の底からそう思っていた。
中学に上がってから
いわゆる思春期に突入した。
家族や親戚と外出している姿を誰かに見られたくなかった。
愛菜さんと一緒にいるところを偶然クラスメイトに見られて以来
愛菜さんの目の代わりをつとめることが嫌になってしまった。
嫌で嫌でたまらなくなった。
部活、テスト期間、様々な言い訳を使って愛菜さんから距離をとった時期がある。
いち中学生の下手くそな小細工はすぐにバレ、母親に問い詰められた
「どうして愛菜ちゃんを避けたりするの!?愛菜ちゃんが可哀想でしょ!!」
頭に血が上った。
「オンナ好き」等の噂を立てられ、クラスで孤立していることも、
その状況を打開出来ない自分の不甲斐なさも、
全部愛菜さんのせいだと結論づけた
持って行き場のない怒りが積もり積もって、無理矢理にでも理由をつけて吐き出したかった。
だから理不尽に罵った
「僕は愛菜さんのヘルパーじゃない」 「迷惑なんだよ」
そう愛菜さんの前で罵って
爽快感ではなく無力感が残った
自分の部屋で脱け殻のように込もっていると、今日が月末だと気づいた。
過去でも未来でもいい。 こんな現実から逃げ出したい。
心からそう思った。
耳鳴り
次第に強くなり、意識が薄れる
途切れるまで一瞬だった。
可哀想にね、愛菜ちゃん
白を基調とした空間に、聞き慣れた声がした。
母親の声だ。 そしてここは病院。
自分の部屋にいたはずなのに、何故だろう…?
僕の前にはこれまた白色のドアがあり、声はそこから聞こえる。
母親の声は100%同情に満ちていた。
母親
陸
心臓が早く鳴るのを感じた。
震える手でそっと目の前の白いドア__病室のドアを開ける
ベッドのわきに立つ僕の母
ベッドに座る、包帯で目を覆う愛菜さん
見覚えのある風景
既視感なんかじゃなく、僕が昔実際に見た光景
僕は今過去の世界にいる
母親
愛菜
愛菜
愛菜
陸
愛菜さんは事故で視力を失った。
僕の不注意で起きた事故。僕が気をつけていれば防げた事故だった。
母親
母親
母親
陸
ずっと思ってた
視力を失ってもなお、笑顔を絶やさない愛菜さんが
自分を憎んでるんじゃないかと
僕のせいで愛菜さんが失明したから
包帯で覆われた、痛々しい姿になった愛菜さんが噛みしめるように言葉を紡いだ
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
母親
母親
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
その声とその笑みは 僕の心の奥まで浸透した
頬を温かい涙が流れた。
僕の目は今まで愛菜さんの何を映していたんだろう
いや、見ようともしなかった。愛菜さんが僕を憎んでいると勝手に決め付け、勝手に距離をとった
盲目なのは、どっちの方だっただろう
誰に何を言われてもいい
僕が愛菜さんの目の代わりになるんだ。
耳鳴り
__少し時をさかのぼる__
陸が愛菜に八つ当たりした直後
愛菜宅__
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
愛菜
耳鳴り
コメント
8件
なるほど!! 耳鳴りはタイムスリップの前兆だったんですね! 過去に戻った愛菜ちゃんは、主人公を見捨てちゃうんでしょうか…? うわあ、とても後味が悪いですね🤔 好みです…
続きないんですか!?!?!?続き見たいです!今すぐに!
解説というかヒントらしきモノ ・愛菜は陸を体をはって助けたことを後悔している→過去に戻りたがっている ・耳鳴りはタイムスリップの前兆 愛菜がどの過去に戻り、何をするのかは貴方のご想像通りです