激しい雨が降る夜だった

細い道に酔っ払いが歩いていた

僕は後ろから距離を詰めていく

『あと少し…あと少し…』

タイミングを待つ

今だ！

ｻﾞｸｯ

一撃で仕留める

真っ赤な血が

僕を見つめていた

最近、よく人を殺す夢をみる

にしては生々しい夢だった

友里恵とは幼なじみで高校も一緒

だからたまに一緒に登校している

友里恵の父さんは人が良くて評判な医者だ

見た瞬間、驚きで言葉が出なかった

結局、その日は授業も集中できないまま家路に着いた

僕は母と兄さんの3人暮らしだ

母によると父親は僕が幼いときに出て行ったらしい

僕には10個年の離れた社会人の兄がいる

兄は大手IT企業に勤めていて、誰にでも優しい自慢の存在

そして、俺が唯一心を開ける人物だ

兄さんの話をきいても、 やはり自分が犯人なのではないかという不安は残っていた。

母はあまり話さない人だ

昔は明るかったが、 父が出て行ってから話さなくなった

学校でも考えてみたが、やはり入院したときの記憶は曖昧だった

急に母さんが動揺し出した

母さんはいきなり周囲を確認した

ｶﾞﾁｬ

リビングは兄さんの登場と共に 静まり返った

『今から言うことは紡には言わないで』

兄さんの低い声が響いた

兄さんは笑っていた

初めて兄さんが怖いと思った

ﾄｩﾙﾙﾙﾙﾙ…

スマホの着信がなった

それだけのことがあったのに、 どうして思い出せないんだろう

母は俯いて黙っていた

ｻﾞｸｯ

兄さんはポケットから取り出したナイフで母さんを刺した

~10年前~

父が持っていたのは俺の部屋にあった血のついたナイフと上着だった

父は俺を散々罵った

働きもしないダメ人間のくせに

だから殺した

逆らったら殺す…無言で圧をかけた

夜遅くだったので寝ている弟も車に乗せて連れてきた

弟が目を覚ましてしまった

弟が騒ぎ出した

ﾄﾝｯ

軽く弟を押すとそのまま溝に落ちた

打ちどころが悪く出血が酷かったが息はしていた

病院に行くと弟は輸血が必要な状態だったらしく

同じ血液型の俺が血を提供した

そして弟はあのときの記憶は失っていた

兄は不気味に笑っていた

それから兄さんは自首した

そして、父さんのことや連続殺人事件のことも明らかになった

母さんは一命は取り留めたものの、今も目を覚まさない

あんなに信じていた兄さんが殺人鬼だったのは相当ショックだった

しかし、それよりも

『お前は俺のすべてだから』

僕も人を殺すのだろうか…