僕と私と君とあなた。

第4話

僕と私と君とあなた。④

2019年07月17日

#ミステリー

#嘘

#恋愛

#秘密

#青春

iamS

里穂と光はいわゆる幼馴染だ。

光の家はごく一般的な家庭。商売人の元気な父ちゃんと、男勝りな元気な母ちゃん。それから、母親譲りの元気な歳の5つ離れた妹がいた。

福島光

母ちゃん！マキセんとこのりーちゃんと遊び行ってくるー！！

光の母

はいよ！行ってらっしゃい！
気ぃつけてね！遅くならんでよ！！

福島光

ほーい！

里穂の家はいわゆるお金持ちの家。地主の家に生まれた一人っ子だった為に、色々求められることが多く、特に父親が怖かった。母親は温厚で女性らしい人だったが、父親には逆らう事ができず、里穂の唯一の楽しみは光といる時か、父親が不在で母と2人の時間のどちらかだった。

福島光

こんにちはーっ！
りーちゃんはいますかー？！

牧瀬里穂

ひーちゃんっ！
シィーッ！！

人差し指を立てて、静かに！のサインをする。

福島光

あ、ごめんごめん！

牧瀬里穂

今、丁度ひーちゃん来るかなって思ってお外出てきたところだったよ！

福島光

えへへっ。
じゃあ公園行って遊ぼーっ！！

牧瀬里穂

えへへっ。いーよーっ！！

この頃はまだ、光はこんな毎日がずっと続くものだと思っていた。

・・・

福島光

ふぅーっ！
見て見て！砂のお城出来たよ！
りーちゃん！！

牧瀬里穂

…。

福島光

りーちゃーん？？

牧瀬里穂

…ん、え？あ、あー！！
本当だぁ！すごーい！！

いつの頃からか、里穂は光と遊んでいても、あまり笑わなくなり、ボーッとすることが増えた。

福島光

りーちゃん？なんか最近ヘンだよ？

牧瀬里穂

…っ！そ、そんなことないよ！

福島光

そんなことあるよ！！だってニコッてしなくなったもん！！

牧瀬里穂

…。ぐすっ

福島光

え、えっ！りーちゃん？！

牧瀬里穂

ひ、ひーちゃんは、りーのこと、すき？

福島光

あたりまえじゃん！だいすきだよ！

牧瀬里穂

あ、ありがとぉ。
あのね、りー、お家に帰りたくないの。

福島光

どうして？お家嫌いなの？
おやつくれないの？

牧瀬里穂

あ、あの、あのね、誰にも言わないでいてくれる…？

福島光

約束は絶対守るよ！！

牧瀬里穂

う、うん…。
お家に帰るとぱぱがりーのこと叩いたり、蹴ったりするの…。すごく痛くてね。りーが悪い子だから、仕方ないんだけどね…。

福島光

りーちゃん、そんなに悪いことしちゃったの？

牧瀬里穂

わかんないの…。りー、何が悪いことかわかんないのぉ…ぐすっ。
うわぁぁーん！ひっくひっく

福島光

りーちゃん…。

この日は光は里穂の手を引いて、自分の家に連れて帰った。本能的にそうさせるべきだと思ったのかもしれない。何かを察した光の母が、里穂の身体の何箇所かに残っていた痣を見つけ、里穂の家へ電話をかけた。

この日から暫くは里穂が光に泣いてすがってくるようなことはなかった。

・・・

小学生に上がると、光はクラスの中心的人物、リーダー的な存在に。

反対に、里穂は内気で自分の意見を周りに言えず、光以外の友達がなかなか出来なかった。

牧瀬里穂

(光ちゃんは凄いな…。みんなの人気者で、スポーツも出来て…。)

福島光

りー！一緒に外にドッヂボールしに行こーっ！

牧瀬里穂

あ、う、ううん、なんかお腹痛いから教室で待ってようかな…。

福島光

えー？…わかった。

牧瀬里穂

(行っちゃった…。
本当は昔みたいに光ちゃんのこと独り占め出来たら良いのにって思ってるんだけどな…。でも、光ちゃんに迷惑ばっかりかけられないもんね。)

ガラッ

福島光

りー！図書室行こー！

牧瀬里穂

え？！光ちゃん、ドッヂボールは…？

福島光

つまんないから帰ってきた！

牧瀬里穂

そうなの？！みんな光ちゃんがいないとつまらないんじゃない？！

福島光

いーの！！
だって…

里穂の机の前に光がしゃがみこむ。

福島光

りーの隣にいたいの！

牧瀬里穂

なっ…！
と、図書室でしょ？行こ！！

牧瀬里穂

(どうしようっ。すごい嬉しい。)

福島光

りーと2人の時間が、今だって一番大事だよ。大好きだよ？りー！

牧瀬里穂

(は、恥ずかしいけど、嬉しすぎてどうになかなりそ〜！！！)
あ、ありがとぉ！

この頃まではなんとか里穂は頑張れていた。光がいてくれれば、家に帰ってからの多少の暴力や暴言には耐えていられたのだ。しかし、中学校に上がる頃から状況は一変した。

里穂は学校へもあまり通えなくなっていた。

大きな理由は三つ。

一つは学校でのいじめ。だが、これは光がいることによって、ほとんど守られている状態だった。

問題なのは残りの二つ。

二つ目は父親から受ける性的虐待だった。

三つ目は…。

・・・・

福島光

風呂入りながら、なんか色んなこと思い出しちゃったな…。
保健室であんな夢なんか見ちゃったからかな…。

滝川悠人

不在着信

福島光

ん？悠人から電話入ってるな。

福島光

通話
00:00

滝川悠人

"もしもし？"

福島光

わりー、風呂入ってたわ！

滝川悠人

"んなことよりさ…。光、うちの高校の掲示板あるの知ってるだろ？"

福島光

ん、ああ、知ってるけど。

滝川悠人

"今、開けるか？"

福島光

お、おう。

カタカタカタ…

福島光

な、何だよこれ。

掲示板

1-Dの王子。H君
1-Bの悪魔。Rさんに弄ばれてるよ。
証拠写真⬇︎⬇︎⬇︎

その記事の下には今日の保健室でのキスの瞬間の写真が載せられていた。

滝川悠人

"ぶっちゃけさ、学年一の美男美女が実はカップルでしたって言えば、ただそれだけの話だし、別になんてことない記事なんだけどさ…"

掲示板

H君と付き合うことはないかな〜。とか上からな発言を周りに多々しているとの情報アリ。
やっぱ顔が良いと性格までナルシーになっちゃうのかな？ww
H君かわいそー。

滝川悠人

"里穂ちゃんに対して、かなり悪意ある投稿だなと思って…。里穂ちゃんは学校内でもかなり人気あるから、みんなが敵に回ることはないと思うけど、光のファンもすごい多いじゃん？だからこれに便乗してあることないこと書かれなければ良いんだけどと思って…。"

福島光

…悠人、サンキュ。

滝川悠人

"いや、俺は何も…。
俺の方で投稿したのが誰なのか調べてみるよ。"

福島光

いや、大体わかってるから、俺が明日直接本人に話してみるよ。

滝川悠人

"えっ！！心当たりあるの？！"

福島光

んー。まぁ。

滝川悠人

"ただ、夜の間に掲示板、炎上しちゃうと思うよ。なんせ学校一の美男美女の話題だからね…。みんな速攻食いついて来るよ。…ほら。"

掲示板

まじで？！H君諦めてたけど、Rがまさかのそんな悪魔って話なら、黙ってられないでしょ！

掲示板

ぶっちゃけあのレベルの可愛さだと顔面のことは何も言えないけど、やっぱ性格はクソなんだね。おつw

掲示板

顔も整形だったりして…ww

福島光

俺、投稿してみるわ。

掲示板

どーも。今話題に上がってる1-DのHです。つか、ここまで来たら本名出してもらっても構わねーけど。

滝川悠人

"おま…、さすがだなww"

掲示板

え？本物？！

掲示板

なりすましじゃね？

掲示板

別に、本物かどうかは自由に判断してくれ。

掲示板

ちなみに、俺とRは付き合ってねー。
写真だけど、それは俺からした。
気分でなんとなくしただけな。
つーか、俺があんなアホな女に騙される訳ねーだろ。w
Rは俺が付き合わないってわかってるから周りにそんな風に言ってんのくらいわかれよ。w

ちなみに嘘ついてた奴らには申し訳ないが、俺とRは幼馴染だ。
お互い0からスタートしたくてしがらみなしでいこうと思って隠してたが、ここまで来ると言わざるを得ないな。

俺とRは腐れ縁って仲だな。
ついでに言うと顔も変わってねーな。w
こんなとこでしかでかい口叩けねーお嬢さん方、お疲れした。
文句あんなら直接言えや。

福島光

あー、スッキリした〜w

滝川悠人

"ちょ、やりすぎw"

掲示板

ねぇ、これまじで本人なんじゃない？

掲示板

あたしは直接聞いた訳じゃないし、おやすみー！

掲示板

王子ごめんなさい！
おやすみなさい

滝川悠人

"まぁ、でも効果は絶大だったみたいだねw
さっすが王子〜♡"

福島光

うるせーな。じゃ、俺も寝るぞー！

滝川悠人

"うん、おやすみ王子♡"

ブツッ

滝川悠人

もー。素直じゃないな〜♪

・・・

里穂の部屋ー

牧瀬里穂

光ちゃん…。

牧瀬里穂

ありがと…。だいすき…。

里穂も掲示板を見ていた。

牧瀬里穂

私が、このままがいいって言ったから、あえて付き合ってないって言ったくれたんだよね…。

牧瀬里穂

本当に優しいなぁ…。本当にヒーローなんだもんな…。

・・・

？？？

なんで？なんで？…光くん。

？？？

騙されてるんだよ…っ？
私は気付いて欲しいだけなのにっ！

僕と私と君とあなた。

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