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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

―町田家 リビング―

あんずは叩かれた頭をさすりつつ、父のすることを、うらめしげに見つめていた。

あんず

いったた……

あんず

なんで叩いたの!?

お父さん

これを見ろ!

あんず

はぁ!?

あんず

あんず

何これ、なんて読むの?

お父さん

損害賠償請求……『そんがいばいしょうせいきゅう』だな

お父さん

お前のした事で、仕事が上手くいかなくなったり、苦しい思いをしている

お父さん

……と、この差出人は言ってるんだ

お父さん

つまり、お前のした事で、仕事が上手くいかなくなったり、辛い思いをしたからお金を払ってくれってことだな

あんず

えっ!お金なんて払うの!?

あんず

しかもこんなに!

あんず

絶ッ対やだ!やだよぉ!

あんず

いやだったらやだ!!

あんず

こんなに払ったら、卒業祝いのニアリーランドだって行けない!

あんず

楽しみが無くなっちゃう!

あんず

だって私、皆に喜んで欲しくてしただけだし!

あんず

悪いことなんてしてないでしょ!?

あんず

それに……皆、私の投稿を楽しみにしてくれてるんだよ!?

あんず

私はその期待に、応えなくちゃいけないの!

お父さん

……だから盗んだのか?

お父さん

その人が『他の人から楽しみにされて』、『期待に応えて作った作品』を?

あんず

バレなきゃいいじゃん

あんず

だってセラーノベルだよ!?

あんず

MINEとかタイッターみたいに、有名でもなんでもないサイトだよ!

あんず

お友達しか見ないんだから、いいじゃん!

あんず

何が悪いの!?

お父さん

ああ、悪いさ

あんず

……えっ

お父さん

お前も、作品を作ってるんだから、わかるかと思うが……

お父さん

お前だけが、作品作りをがんばっているわけじゃない

お父さん

皆、いいものを作ろうと、いっしょうけんめい なんだ

お父さん

まあ、中にはそこまでがんばっていない人もいるだろうが……

お父さん

それでも、『何かを作る人』というのは、その作品に時間をかけ、人生を削っている

お父さん

そんな人達の努力を、勝手に使っちゃダメだろう

あんず

でも……

お父さん

はっきり言うぞ

お父さん

お前のしたことは、お前『だけ』しか幸せにならない

お父さん

むしろ、周りを不幸にしている

あんず

私だけ?私だけが幸せ……?

お父さん

そうだ。お前だけが幸せで、お前が気にしている読者も、全員不幸になっている

お父さん

本来の作者さんは、お前が盗作したせいで、見てくれる人が減っただろう

お父さん

誰も見てくれない話を書き続けるほど、作者だって暇じゃない

お父さん

最悪、その話の続きは更新されなくなるだろうな

お父さん

それどころか、プロの小説家になるチャンスも、自分の考えた物語が本になる機会も……

お父さん

お前が見てくれる人を横取りしたせいで、潰れたかもしれない

あんず

そんな、おおげさな

お父さん

大袈裟なんかじゃないさ

お父さん

特にこの『バッキンガム野口』さんは、小説を書くことでお金を稼いでいる……プロ、ってやつだ

お父さん

お前に読者を横取りされたせいで、この人は収入が減っただろうな

お父さん

この人だけじゃない

お父さん

見てくれる人が少ない事を気にして、夢を諦めたりもしたはずだ

あんず

あんず

それが、私と関係あるの?

お父さん

もちろん

お父さん

その話が本になるかどうかは、見てくれる人の多さで決まるようなものだからな

あんず

見てくれる人の、数……

お父さん

そう考えると、見てくれる人も悲しいと思わないか?

お父さん

盗作と知らず、自分の好きな話を読んでいる

お父さん

ただそれだけなのに、本来の作者の夢を潰してしまうなんて、おかしいよな?

お父さん

お父さん

自分のことに置き換えて、考えてごらん

――あんずは想像する。

自分の作品が誰かに使われて、 しかもそれが本になったら?

そしてその人が、我が物顔であんずの小説を語り、ありもしない苦労話を作るのだ。

あんず

素直には、喜べない

あんず

だってそれは、私が書いたもの

あんず

私の話を、我が物顔で語る『誰か』が出てくるなんて……!

しかも。

その本が売れに売れて、作品を勝手に使った誰かが、有名になったり、お金持ちになったりしたら……どう思うだろうか?

あんず

ムカつく……!

あんず

だって有名になるのは、私のはずなのに

あんず

『いい話だったよ』って言われるのは、私じゃないとダメなのに!

あんず

知らない奴がほめられて、私の事を認めてくれる人がいなくなる……

あんず

そんなの、絶対に嫌!

あんず

がんばったのは私!

あんず

有名人になるのも私なの!

お父さん

お父さん

あんず、これはお前のためでもあるんだ

お父さん

このままだとお前は……また誰かの夢を壊すことになる

お父さん

そうして、その復讐として、あんずが今以上に危険な目に遭うんだ

お父さん

だからもう、誰かの作品を使ってまで、書くことはやめなさい

お父さん

お父さんとの約束だぞ?

あんず

うん……わかった

あんず

もうやらないよ

―数日後、某掲示板にて―

カミノベル読者

【速報】バッキンガム野口氏他2名、ぷりりを処す

カミノベル読者

うわぁ……やっぱりこうなったか

カミノベル読者

損害賠償額が250万円?金額すごいな??

カミノベル読者

小学6年生で罰金250万円……

悪質な読者

アマチュア作家の作品1つで50万円は草

悪質な読者

バッキンガム野口先生のは100万くらいかな?

悪質な読者

どの道安く終わったな

カミノベル読者

小学生だから減額したらしいけど、何百万はすごいね

カミノベル読者

しかも今回の炎上で、住所バラされたわけでしょ?

カミノベル読者

引越し費用もかさんで、すごいことになってるみたいよ

悪質な読者

大体県外に行くだろうから、引越し費用は20万超えるだろうな……チッ

悪質な読者

つまんねえの。もっとむしり取られればよかったのに

カミノベル読者

はぁ?むしり取れなかったのなんて、お前らが嫌がらせしたせいじゃん!

カミノベル読者

「既に私的制裁を受けてる」って見なされて、罪が軽くなっちゃったし!

カミノベル読者

それに、ぷりりに嫌がらせした実行犯、全員捕まったんでしょ?

カミノベル読者

あんなにいたんだ、って頭抱えたよね

カミノベル読者

ネットニュースになってたよ

カミノベル読者

未成年にネットリンチしたって

カミノベル読者

いくらぷりりが悪いって言っても、あれはやりすぎだよ……

悪質な読者

そうか?いい感じにトラウマになっていいと思うんだけど

悪質な読者

しかしまあ、親からしたら最悪だよな

悪質な読者

娘が犯罪者とか、確実にキャリアに響くぞ〜

悪質な読者

俺だったら捨てるわそんな奴www

カミノベル読者

てかさ、訴えられる前に……

カミノベル読者

まず謝れや!!

カミノベル読者

ホントだよ、アカウント転生とかやる前にさあ!

カミノベル読者

ごめんなさいすら出来ない子だったのか、ぷりりは

悪質な読者

でも、ぷりりちゃんは社会的に抹殺されたから!

悪質な読者

俺らからすればハッピーエンドだろ!

悪質な読者

ぷりりとその家族からすればバッドエンドだけどな(笑)

悪質な読者

学校でも盗作がバレてんだろうなあ

悪質な読者

あーあ、オレら し〜らね

―翌日、学校―

先生

えー、もう聞いているかもしれないが……

先生

今月で、町田あんずが転校することになりました

あんず

えーと、皆。今までありがとう

あんず

仲良くしてくれて、嬉しかったです!

あんず

転校先でも、元気でがんばるから!

あんず

みんなも元気でね!

あんず

あんず

……え?

あんず

無視?

なんとも言えない白けきった場に、男子の声が響いたのは、あんずが居心地悪そうに体を揺らした時だった。

がんばるってなにを?盗作?

あんず

え?

あんず

盗作?

正人

とぼけてんじゃねーよ、分かってんだよ

正人

お前が校長先生の言ってた、盗作犯だろ!

あんず

違う、よ……?なんで?

小鞠

嘘つかないで!

小鞠

あなたのせいで、私……知らない人に付け回されたんだけど!

小鞠

あんずと同じ小学校に、私も通ってるからって!

小鞠

あんたと同じ、クラスだったせいで!

千春

小鞠!泣かないで!

千春

あいつもう、いなくなるから!

千春

千春

ねえ、私は前に聞いたよね?盗作してないかって

千春

嘘ついてたんだ

千春

なんでそんなことして、平気でいられるの?

皆に迷惑かけて、元気でね!とか言えんの、はっきり言ってやべぇわ

正気を疑うよ、人として終わってる

先生

皆!?静かにしろ!

先生の制止の声も聞かず、クラスメートはざわめき出す。

生徒達

誰かが楽しみにしてた話を、平気で盗んでたんでしょ

生徒達

プロ作家になれるはずだった人を潰して、悪いと思わなかったんだ

あんず

ねえ、ちょっと

生徒達

訴えなかっただけで、友達の作品もこいつに盗まれていたかも

生徒達

そんな奴と、もう一緒にいたくない

あんず

待っ……

生徒達

お前なんか最低だ!とっとといなくなれ!

生徒達

泥棒!泥棒!

あんずは必死に言い訳を考えるが、もはや何も思い浮かばない。

今まで笑いあったクラスメイトから、容赦なく浴びせられる、泥棒と呼ばう声。

先生が止めようとするが、ムダなこと。

次々と発される罵声で、弁明の声はかき消されていく……

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