わたしは馬鹿なんだと思う。
だって、こんなに簡単な理由で自分に傷を入れていく。
こんなに、醜くて汚いわたしなんて
大嫌い
ずぷりとカッターの刃がわたしの皮膚に飲み込まれていく。
ズキリとした痛みに耐えながらもっと深くへと刃を滑らせる。
寧々
寧々
あの日。
わたしがショーで、失敗して
部屋に閉じこもっていた時に
わたしはリストカットの存在を知った。
『辛さが一瞬だけでも消える』
そんなの、ありえないと思いつつ
それでも楽になれるならとわたしはカッターを握った。
そのリストカットはわたしの予想を遥かに超えて
わたしの精神に『安定』をもたらした。
その日からもうずっと、辞められていない。
カッターを肌から離すと
紅く入った線から
紅に染まった真珠のようなものが顔を覗かせ
やがて大きくなり
隣にできた同じものと重なり、
流れていった
寧々
つい、乾いた笑いが零れる
こうしていると惨めになるのは何故だろう
そうこうしているうちに今は一人しかいないこの家のインターホンが鳴らされた
寧々
嫌な予感が、胸をざわつかせる
寧々
寧々
まだ分からない、と嫌な予感を振り払うため首を横に振る
どうか類でありませんようにと祈る。
しかし
祈り通らず、と言ったところか
不意に類からの着信があった
類
不在着信
類
不在着信
類
類
類
類
まるで死刑宣告のような類の一言に背筋が凍る
『待って。』
その一言を打つまでに動揺からかだいぶもたついてしまって
打ち終わる前に
部屋のドアが控えめに2度、ノックされる。
類
寧々
言葉を発した時にはもう既に時遅し。
類は私の姿を見て、
紅を辿って
目を見開いた
と思ったらすぐにわたしに駆け寄ってくる。
類
滅多に聞かない類の大声に肩が跳ねる。
寧々
類
類
寧々
寧々
類
寧々
類
類はわたしの手首を指さした。
息が詰まる。
寧々
寧々
類
ああ、やっぱり
類には全部、バレちゃうんだ
寧々
寧々
寧々
寧々
類は少し考えてから
類
そう、今まで1度も聞いたことがないような優しい声で問われた。
寧々
類は何も言わず、わたしをじっと見つめる。
寧々
寧々
類
寧々
予想外の言葉に耳を疑う。
類
寧々
類
類
.........このバカはわたしと一緒に死ぬ気なのだろうか。
寧々
寧々
寧々
類
寧々
寧々
類
類
類の目は真剣そのもので、
きっとこれ以上、わたしがどうこう言ったって類は変わらない。
はぁ、とため息が漏れる
寧々
寧々
寧々
類
類はふふ、と笑いながらわたしに手を差し出した。
類
寧々
ザザ、と波の音が聞こえる。
わたしと類は靴を脱ぐと
ゆっくりと、青へと近付いていく。
そのままの速さで水へ浸かっていく。
こんな時期だけあって水はすごく冷たい。
思わず体が震えるのを見て、わたしは小さく笑った。
寧々
類
寧々
類
類
寧々
それじゃ、また来世で。
コメント
2件
最高ですね