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堕ちていく♯1

♥

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2020年01月10日

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おい!!!!

怒鳴り声が聞こえて 人が目の前に飛び込んできた

ん………ごめんっ……

待てよ…逃がさねぇぞ…?
おい

何だ 何が起きてるんだ?

僕にぶつかってきた人が謝ってきて それを怖い人が睨んでいる

その人はどうやら追いかけられているようだった

だからって別に僕が助ける必要なんてない

そう思った

だけど彼の目は 真っ黒なのに妖艶に輝いていて

気付けば

視線を絡ませてしまっていた

関わった時点で 明るくて綺麗な優しい未来なんて

あるわけないと分かっていたけど

欲してしまったんだ

君からの笑顔を 君からの愛を

こっち………

来なよ…っ!

…助けてくれるの?

良いから早く!

男から逃げるため まだ名前も知らない

会ったばかりの彼の 腕を掴んで必死に走った

降りしきる雨の中 色とりどりに光る町を

どこに行くかも分からないまま

だけど彼となら どこかへ消えてしまっても良い

そう思った

辿り着いたのは 遠い町の暗い路地

ネオンがチカチカと光り 獣のような男の声と 甘ったるい女の声が入り交じって

騒々しい水音が響き渡った 壊れきった空間

彼の方を振り返ると

長い前髪に隠れて見えない顔

僕より凄い高い身長

雨に濡れた真っ黒なジャケットの

破れ目から見えるタトゥー

傷を負った狼のようだ

大丈夫…?

そう声をかけると彼は少し笑って

ねぇ…顔、見せてよ?

そう言って僕の顔を自分の方に向け

急な行動と距離に驚く僕を

…可愛いね

口の端をあげて見つめた

そ…、
そんなことより!

何処行こっか

んー
海が見たいなぁ

じゃあ海に行こう

あれ?
名前_…

僕は、うらた
君は?

さかた
うらたさん、ね…
助けてくれてありがと

いや…

一瞬風に揺れた彼の髪

チラッと見えた顔は 綺麗に整っていてどこか怪しい

ブラックホールみたいな どこまでも吸い込まれそうな瞳

シルバーのピアスが月光を反射して キラキラと輝きを放っている

ここまでで十分だよ
ありがとね

一言残して振り返った彼に

離れたくない

と初めての感情を抱いた

待って
まだ追いかけてきてたら
危ないんじゃない…?

良いよ、
巻き込みたくない

もう巻き込まれてる
…一緒に海まで、逃げようよ

海に着くと 僕達は砂浜に寝転がった

夜空に輝く星は凄く綺麗で

あの星に行ってみたいな…

ふと思ったことを口にしたら

連れてってあげるよ
いつか

彼の口から思いがけない言葉が聞こえた

それから色んな話をして 2人の距離は少しずつ近付いた

誰もいない静かな浜辺に

2人の声だけが聞こえて

2人の体温だけがあって

心地良さに任せて 堕ちていく

彼の過去は真っ黒で 未来にも光はないという

どんな理由かはよく分からないけど

僕がもし、彼の痛みを分かってあげられたら

楽になれるかな…

ねぇ…うらたさん
………キス、して良い?

…良いよ

波の音が2人の存在をかき消した

触れるだけのキスから すぐに互いを求める深いキスに変わる

意識が飛んでしまいそうなほど 気持ちが良くて

身体がひとつの心臓になったみたいに ドクンドクンと脈打っている

初キスだった 初対面の相手と 夜闇に消えそうな海辺で

好きだよ

なんて切なく囁かれてしまえば 僕の心は堕ちるしかなくなってしまう

繋がれた手は全然大きさが違って 強そうで闇色で儚かった

彼のことを知れば知るほどに 愛しい気持ちが止まらない

ずっと一緒にいたい 苦しくても、分けあって

僕が彼の傍にいなきゃ

僕もだよ

守って、あげなきゃ

うらたさん
僕を飼ってよ

うん
おいで…

それから僕達は 狭い部屋に2人で住むことにした

僕が働き 彼は家にいる

ご飯は少ない量を分けあって お風呂は狭いけど2人で入って ベッドもぎゅうぎゅうなのに

毎日飽きもせず 強く強くお互いを感じ合う

染められていく 堕ちていく溺れていく

君の中へと… それだけで、とにかく幸せ

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