俺が自分の「心と体の違和感」に

気付いたのは、小学校入学を控えたころだった。

両親は古い人間だった

女の子はスカート、色は明るく派手すぎないもの、

おしとやかに･･･物心ついた時から自分にとって

それは苦痛でしかなかった。

でも、父も母もかわいい格好をした俺を見ると

とても喜んでいた。

自分が好きな、男の子っぽい衣類が欲しいと言うと嫌そうな顔をするので

次第に口にすることはやめた。

思春期を迎えると、体の変化に心が付いていけなくなっていた。

自分の姿を見るのが辛くて、

部屋には鏡を一つも置かなかった。

そしてーーーー

好きな人が出来た

それは友達で、女の子だった。

この頃俺は、自分がレズビアンだから、

普通の女の子のように生きられないのだと思っていた。

でも、ネットで同性愛について調べていると、一つの言葉を知った。

心と体の性別に差がある人

日本では、｢性同一性障害｣と呼ばれる事も多いが

これは医学用語であり必ずしもイコールではない

着たくない女子用の制服

本当は男子の話に混ざりたかった日々

大嫌いな水泳の授業

女性らしくなっていく自分の体

ずっと考えていた。年々、自分の中で大きくなっていた気持ち。

そして高校の卒業式を終えたその日

両親に、自分の心は男性であると告白した。

父さんは、俺を全力で拒絶した

両親にすら認めてもらえないような俺が、

社会でこれからどうやって上手くやっていけるというんだろう

コンコン

翌朝

ガチャッ

ダラーッ(血)

カッターナイフで手首の血管を深く傷つけ、

それでも死ねなかった俺に、

お医者さんは｢運が良かったね｣と言った

父さんは一度もお見舞いに来なかった

俺が医者に頼んだのもあるし、俺の顔を見るのが嫌なんだろうと

ぼんやり思っていた

退院日

母さんが出したのは、性同一性障害の診断をしてくれるクリニックのパンフレットや、トランスジェンダーについて書かれている本などだった。

ずっと胸につっかえていたものが、

スッと消える感じがした。

誰かに認めてもらうことで、

こんなにも勇気付けられるなんて。

その後、俺は両親の助けを得て、性別適合手術を受けることにした。

病院からの診断後、性別変更判定会議を経て手術をし、戸籍上も男性となった

トランスジェンダーしかり、LGBTへの風当たりはいまだに強く理解も追いついていない。

両親の助けを得られた自分が、今度は悩んでいる誰かを助けられるように

『新た』な道を、切り開いていきたい。