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ピピピッピピピッ
「お?ご飯炊けたねー。」
炊飯ジャーを取りに扉を抜け台所へ戻る。
「サフィー、これも持って行きたいから入れてくれる?」
炊飯ジャーごとテーブルに置く。
「はい。」
サフィーナはアイテムボックスを開き炊飯ジャーを入れた。
「それじゃ晩御飯を作りに行こうかー。」
「「はーい!」」
モリアンとユラは元気よく挨拶で返す。
「夕食は王族と食べないんですか?」
サフィーナは3食自分達と食べている千春に問いかける。
「今日はお米とオーク肉でおかず作るつもりだから出せないでしょ?」
「お米はどうか分かりませんが少なくとも国王陛下と王妃殿下はお食べになりますよ?」
「え?でもルノアーさんが出さないって言ってたよ?魔物肉は。」
「貴族が魔物肉を忌諱する事が多いので王族に出す事を避けてるんですよ。」
「でも大丈夫なの?」
「えぇ、国王陛下も王妃殿下も冒険者でしたから、それこそ私よりよっぽど食べてると思いますよ?」
「そう言う事ねー、でも一応出すならお伺いしてた方がいいよねぇ。」
「そうですね、お米も出すんですよね?」
「そのつもり。」
「お米はパンも一緒に出してお好きな方を選んで頂けば問題ないですし、良いんじゃないですか?」
「そだね、それじゃぁオーク肉出して良いか聞きに行くかなぁ。」
「そうですねぇ、殿下が食べないかもしれませんし、それでしたらセバスさんに伝言を頼みましょうか。」
「そだね、サフィーは調味料出して貰わないとだし、モリー聞いてきてくれる?」
「はーい了解です!」
モリアンはユラと繋いでた手を放し足早に去って行った。
「ユラちゃん。」
千春はユラに手を出すとニコッと笑ったユラは千春の手を握る。
「ルノアーさーんまた来たよー。」
「おー?夕食にしては早いな、何か作るのか?」
「うん、オーク肉でちょいと美味しいご飯のおかずをね。」
「ほ~、またみんなが食いたがるんだろうな、ちょっと待っててくれ。」
ルノアーは数人に声をかけ、オーク肉を持ってこさせる。
「今日は王族もオーク肉食べれるようだったらあっちで食べるから。」
「あぁ、肉は昼に使ったロース肉か?」
「ぶっちゃけどこの部位でも美味しい!でもロース肉使おう、柔らかくて美味しかったし。」
「どれくらいで切る?」
「3㎜くらいの薄さでおねがーい。」
「そうすると1人5~6枚、いや野郎どもなら10枚食いそうだな、よし、とりあえず目の前に在るオークは全部切っとけ!」
「「「はい!」」」
料理人達はルノアーに言われ直ぐに切り出す。
「チハルさん・・・なにしてんだ?」
野菜庫の隅っこでしゃがみこんで箱を漁っている千春に声をかける。
「あった、これこれ、結構置いてるね。」
「あーそれはジンジャーだ、辛みが強いが香りは悪くない、日持ちもするから結構置いてるぞ。」
「これを全部すり下ろしておいてくれる?」
「コレを全部か?」
千春は手一杯に持った生姜をルノアーに渡す。
「さーて、後はっと。」
野菜庫からキャベツと玉ねぎを取り出し箱を引きずる。
「おーもーいー!」
「チハル様!お手伝いします!」
付いてきた料理人がキャベツと玉ねぎを運ぶ。
「チハル言ったら手伝うのに。」
「いや、すぐ目の前に在ったからついね。」
「やっぱりMP無いとアイテムボックスはきつい?」
「うん、だいぶ回復したけど明日学校だから無理して使わなくても良いかなと。」
「それが良いわね、私が代わりに使うから何か有ったら言ってね?」
「ありがとサフィー。」
2人は野菜庫から出てルノアーに野菜の指示をする。
「玉ねぎは皮を剥いて芯を取って4~5㎜くらいにスライス、キャベツはお昼に切ったくらいに千切りで。」
「玉ねぎはどれくらい使うんだ?」
「2人前で半玉くらいの計算で、キャベツは付け合わせだから適当でいいよ。」
「わかった、それじゃ野菜を切ってくれ。」
料理人へ指示を出し切れたオーク肉を持ってきた。
「これくらいでいいか?」
「仕事早いなぁ、この肉を平らな容器・・・あ、バットあった、これに広げていきまーす。」
オークのロース肉を適当に並べていく。
「これにすり下ろした生姜と白ワインを軽く浸る程度に漬けて、あとは片栗粉を少しまぶしまーす。」
横でルノアーはメモを取りながら見ている。
「それじゃ切った玉ねぎ少し貰うねー。」
「はい!どうぞ!」
「ありがとー、それじゃ焼いていくよ!」
コンロにフライパンを置き、火を入れる。
「油を少々ひきまして~、肉を入れる。」
じゅわぁぁぁといい音を立て肉が焼ける。
「ある程度火が通ったら玉ねぎ投下。」
フライパンを軽くゆすりながら混ぜていく。
「ココでおっかけ生姜に砂糖と醤油を少々。」
じゅぁぁぁぁぁ!
「いい香りね。」
「うん、醤油の焼ける匂いは食欲そそるよねー。」
「おいしそー。」
ちらっとユラを見るとサフィーナにだっこされ調理を見ていた。
「これくらい水分が飛んだらおわり、キャベツは切れてる?」
「おう、水に一度浸けて水切りしといたぞ。」
「わかってるう!」
器にキャベツを乗せ肉を横へ添えるように置く。
「オークの生姜焼き出来上がり~♪」
「「「ぱちぱちぱちぱち」」」
なぜかサフィーナとユラ、ルノアーまで拍手していた。
「これ味見用だから食べていいよ。」
「そうなのか?」
「だってまだ早いじゃん、今からじゃんじゃん作るんでしょ?」
「勿論!こりゃまた沢山出そうだなぁ。」
そういってルノアーは肉をナイフとフォークで一口サイズに切り口に入れる。
「こりゃうめえ!ジンジャーってこんな感じになるんだな、辛いばっかりだと思ってた。」
「生姜は色々使えるから一杯仕入れていいと思うよ、余ったらコレにすれば消費出来るでしょ。」
千春はひと口サイズに切った生姜焼きをサフィーナとユラの口にも入れてあげる。
「・・・・美味しいわぁ。」
「(コクコクコク)」
2人もニコニコしながら味見している、千春も自分の口に入れる。
「うまぁ、オーク肉やっぱり美味しいわ。」
筋も綺麗にとってあり脂身も甘味が有り美味しいオーク肉に千春は喜んでいた。
「チハルさーんもどりまし・・・ああああああ!!!!」
「モリアンうるさいなぁ。」
千春はうるさいモリアンに一口サイズにしてない丸々一枚のオーク肉を折り曲げ口に入れてやる。
「もごがっ・・・・もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ。」
「それじゃぁルノアーさんこんな感じの盛り付けで量産してもらっていい?」
「分った、王族の方はどうなったんだ?この味付けなら猪肉でも十分美味いだろう?」
「そうだねぇ。」
そういって2人はモリアンを見る。
「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」
「早く飲み込みなよ。」
「・・・・・・もぐもぐ・・・・・大丈夫だそうです。」
「おっけー、それじゃルノアーさん王族にもオーク肉で準備してください。」
「わかった。」
「サフィーちょっとご飯出してくれる?」
「はい。」
サフィーナはユラを下ろしテーブルに炊飯ジャーを置く、そして千春はパカっと蓋をあけ、ちょっと深めのお皿へご飯をよそう。
「これは米か?真っ白で綺麗だな、それにいい匂いだ。」
「うん、これが私の所で主食のお米、米を真っ白になるまで精米して糠を取ったやつだよ。」
そういってフォークに少しご飯を乗せパクっと食べる。
「んぁぁ、やっぱり生姜焼きにはご飯だよねぇ。」
「一口食べても良いか?」
「うん、食べてみて。」
ルノアーがフォークを何本か持ってくる、そして自分の口に入れ咀嚼する、千春はまた少しフォークで取りユラの口に入れてあげる、サフィーナとモリアンは自分達でフォークを使い試食していた。
「おいしい!ちはるおねえちゃんすっごくおいしい!」
「甘いですね、家畜の餌と言ったら怒るチハルの気持ちがわかりました、主食になりますね。」
「おいしいです!こんな美味しい食べ物を家畜の餌にしてたんですか!?」
3人とも白飯は大丈夫なようだ。
「うん、この反応なら王族に食べさせても大丈夫っぽいね。」
「大丈夫どころじゃないぞ、これは美味い、作り方を教えてくれれば食堂で常備したいくらいだ。」
「ほんとに!?やったぁ!これで毎食ご飯食べれるかもしんないね!」
千春は食費を浮かせる為に王国で夕食を食べていたが毎回パンだった、それだけが不満だった為白飯常備されるとなれば大喜びである。
「あ、でも精米技術がどうなんだろうか・・・食べれるなら全力で調べて作ってもらわないと・・・ブツブツ。」
「チハル?」
「あ、サフィー、大丈夫なんでもない、ただ全力でご飯推しの準備をしないといけないなと思ってただけ。」
「そう、協力するわよ、私もお米食べたいもの。」
サフィーナもお米の美味しさを知ってくれたのが嬉しく千春もうんうんと笑顔で答える。
「今すぐに米を準備は出来ないから今日はパンで行くが米の方はこっちでも調べて手に入れておくよ、精米ってのも商業ギルドに聞いておこう。」
「うん、お願いするね。」
「よーし!お前らもうすぐ兵士達が来るぞ!オークジンジャー焼きの準備を進めろ!」
「「「「「「「「 はい!!! 」」」」」」」」
一斉に料理人達がまた動き出す。
「それじゃぁ夕食まで、いつもの様にお母様の所で時間つぶしますかぁ。」
「ユラもいっていいの?」
「いいんじゃない?お母様喜ぶよ?ユラちゃんもメグ様の事お母様って言ってあげて?」
「おかあさま?」
「そ、喜ぶよー?」
「うん。」
「どうしたの?」
「おかあさんのことおもいだしたの。」
「そっか、私もおかぁさんいないんだ、メグ様が新しいお母さんなんだ。」
「ユラといっしょ?」
「そ、ユラちゃんと一緒、メグ様すっごく優しくて本当のお母さんみたいなんだよ。」
「・・・・」
「一緒にお母様の所に行く?」
「いく。」
「一緒にお母様って呼ぼうか。」
「うん!おかあさまってよぶ!」
2人は少し目を潤ませながら手を繋ぐ。
「それでは行きましょうか。」
サフィーナは千春とユラに声をかけ促す。
「うん、行こうか。」
千春は繋いだ手をギュっと握りサフィーナの後ろを付いていく、ユラも手を握り返す。
「いってらっしゃーい。」
モリアンは手を振り見送る。
「モリアンさんは?」
「ご飯食べたら来るよ。」
そう言って3人は振り返り、人が入りだした食堂を見る、そして千春は一声上げる。
「生姜焼きマヨバーガー超うまいよ!!!!!」
ざわつく食堂、目を見開く料理人達、モリアンが一瞬で食堂に走って行く姿が見えた。