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とうとう世界が終わったのか、と思った。
束の間の夢から覚めて、ゆっくりと目を開けたとき、視界のすべてが澄んだ金糸雀色の光に満たされていた。
部屋の中に視線を巡らせる。天井近くの明り窓から、外の光が射し込んでいた。
明け方の青白い光でも、真昼の真っ白な光でも、夕暮れどきの真っ赤な光でもない、透き通るような薄黄の光。
ひどく美しかったが、どこか不気味だった。
見慣れた天井が、見慣れない色に染まっているのを見て、不思議な浮遊感とかすかな焦燥を覚える。惰眠を貪っている間に地球が滅亡してしまったのかと錯覚してしまうほどの、異様な光景だった。
滅びゆく星は、きっとこんな薄気味悪い色の光に満ちているのだろう。
靄が立ち込めたような起き抜けの鈍い頭で、そんな幼稚な幻想を抱く。
少し頭がはっきりしてくると、何のことはない、ただの気象現象だと冷静になった。
激しい雨が止んだあとや、台風の目の只中など、荒天がふいにおさまったときに、このような色に空が染まることは、ままある。ちょうど黄昏どきに多いような気がする。思えば今日も、朝方ベッドに入ってから、窓に打ちつける雨の音で、何度も眠りを妨げられた覚えがあった。おそらく昼中降っていたのだろう。
身を起こして枕元に目を向け、もうずっと埃をかぶったままの目覚まし時計で時間を確認すると、16時を回っていた。
ベッドの横の窓のブラインドを少し上げてみる。雨はすでに止んでいたが、世界はまだどこもかしこも湿っていた。分厚い雨雲に濾過された太陽光が、雨上がりの町を黄色く染め上げている。しばらくしたら夕焼け色に変わるのかもしれない
ふう、と知らずため息が洩れた。
また一日が終わっていく。
刻々と変わりゆく世界が映し出された青白いスクリーンをぼんやり眺めながら、自分だけがいつまでも、どこにも行けないまま、何も変わらないまま、ひとり時の止まった世界の片隅に座り込んでいる。