「類君!!!」
そう言われ、立ち止まる俺の大好きな人。
「!!旭さん…!こんにちは」
「うん、こんにちは!!」
そんな笑顔を向けられたら、諦められないじゃないか。
「どうしてここに?」
「次のショーで使う部品を買いに来まして…」
「そっか!!」
ああ、綺麗だ…類君に会う度、そんな事を思ってしまう。
この子にはもう、心に決めた人が居るというのに…
「旭さんは、 ?」
「俺は、ただの買い物だよ。冷蔵庫に何もなくてね〜、」
「ふふ、それは大変ですねぇ…」
そんな事を言って、笑う君。どこか困ったような、楽しいような顔をしている。本当に、可愛らしいな…
「では、僕はこれで…」
「あ、待って!!!」
「は、はいっ…!」
急に呼び止めてしまった。反応も可愛い…ではなくて、何故呼び止めてしまったのだろう。自分でも分からない。
「あ…えっと…ごめん。忘れてしまったよ…笑」
「…ふふ、そうですか。また思い出したら聞かせて下さいね、♪」
「……うん」
きっと、いや…今後一切、この話を君に聞かせることはないだろう。こんな想い、速く捨ててしまいたい。迷惑じゃないか…さっきも言った通り、この子には…もう……
「…じゃあ、またね…! 」
「はい、また」
そうだ。言わないのが正解なんだ。類君と司君の関係を知っておきながら、こんな事を言うのは変だ。この関係を崩したくない。
〜1週間前〜
「…なあ、類。好きだ!!類が良ければ、オレと恋仲になっはてくれないか…?」
「…え…それは、告白かい…?」
「ああ、もちろんだ!!」
「ほ、本当…?」
「当たり前だろう!!オレはこんな嘘はつかん!! 」
「!!…ふふ、ありがとう。僕も好きだよ。付き合おうか…!♪」
「…!!ああ!!愛してるぞ!類!!!」
偶然、その現場に出くわしてしまった。
まあ、司君が類君の事が好きということには薄々気付いてはいた。
だから、尚更ショックだった。
俺は、負けたんだ…司君に。
……当たり前だ。司君は類君の光り輝くスターなのだから。
だけど…
「悔しいな…笑」
そう思ってしまう。
〜翌日〜
「すみません、旭さん。少し調整したいとこが…」
「ああ、どこだい?」
「ここなんですけど…」
夕日に照らされた横顔は、とても綺麗だ。いや、綺麗なんて言葉じゃ、表せない程に。
「………」
「…旭さん…?」
やめろ…やめてくれ…!! !そんな顔で見つめないでくれ…!!
「……好きだ」
「…え?」
言ってしまった。ずっと…ずっと抑えていたのに。
本当に、俺という奴は無慈悲だ。
自分の感情に流され、こんな事を言ってしまった。この先のことを何も考えずに…
「えっと…」
「…すまない。忘れてくれ。」
そんな事を言い捨て、俺は足早にその場から離れてしまった。
類君の顔が忘れられない。俺のせいで、困惑したような顔をしていた。
本当に、俺は最低だ…大好きな人さえも困らせてしまう。これじゃあ、類君の傍に居る資格がないじゃないか。
俺がこんなのだから、司君に負けたのだろう。
……そんなことは、考えないでおこう。どうせ、叶わない恋なのだから__