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「おはよー」
「「おはようございます!」」
いつもの朝。
食堂に向かう前に、私の部屋の前で二人と落ち合う。
「エミリアさん、お腹大丈夫ですか? 胃もたれとかしてません?」
「え? 大丈夫ですけど、何でですか?」
いや、昨晩は夕食をたくさん食べた後にデザートも大量に食べていたから――
……つい心配してしまったんだけど、特に問題は無さそうかな?
「たくさん食べていたから、どうかな……って。
それにしても、あんなに食べてそのスタイルを維持できるのは……羨ましいですね」
私はエミリアさんを、上から下まで眺めてみる。
何であんなに食べて、こうなっているんだろう?
やっぱり、何らかの法則を無視しているんじゃないかなぁ……。
「前にも言いましたが、お祈りで力を使うので――」
「……お祈りって、身体を動かすんですか?」
「いえ……!
でも、頭の中ではたくさん動いていますから!」
エミリアさんは必死に説明をする。
しかし前回と同様、やっぱり理屈は分からなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――アイナちゃん、こっちこっち!」
食堂に着くと、ジェラードがテーブルを確保するように座っていた。
「おはようございます。朝からどうしたんですか?」
「うん。報告と、一緒に食事でもしようかと思ってね♪」
「……報告?」
何の報告だろう? とは思いつつも、先に朝食の注文をすることに。
それぞれの注文を終わらせてから、ジェラードに話を振り直す。
「――それで、何の報告でしょう?」
「ほら、昨日のダイアモンド原石。
あれ、売ってきたから!」
「へ?」
ジェラードはアイテムボックスから、皮袋を取り出した。
「原石の大きさ的には金貨30枚くらいなんだけど、質が凄い良かったからね。
ちょっとした|伝手《つて》で捌けたから……金貨60枚になったよ♪」
「ろくじゅう……!?」
「2倍ですか……!?」
「むぅ……」
三者三様の反応だ。
私が作ったから当然のS+級なんだけど、それにしても2倍か……。
「出しておくと危ないから、アイテムボックスにしまっちゃって♪」
「あ、そうですね! しまっちゃいます!」
ジェラードから皮袋を受け取って、そのまま私のアイテムボックスに入れる。
……ちなみに金貨60枚っていうのは、元の世界での私の年収……くらいなんだよね。
ただの炭から年収分のお金を生み出せるなんて、錬金術はやっぱり凄いなぁ……。
「ちなみに、ジェラードさんへの手数料はいくらですか?」
「今回は要らないよ!
いつかはもらうかもしれないけど、まだまだ無料キャンペーン中さ♪」
「何とも申し訳ないです……。
それじゃ、朝食代くらいは出させて頂きますね」
「うん、ありがとう。それで十分だよ」
……そうこうしている内に朝食が運ばれてきて、気楽な食事が始まった。
ガルーナ村を出て以来、ずっと三人だったから……人数が増えるっていうのは新鮮だなぁ。
ジェラードとはずっと一緒にいるわけじゃないけど、機会があれば、できるだけ一緒に過ごしていきたいかな。
ナンパをしなければ、普通に良い人だからね。
「――ふぅ、ごちそうさま。
それじゃ、僕はお先に失礼するね」
「あれ、もう行っちゃうんですか?
今日は何か用事でも?」
「これから少し眠ってくるよ。昨晩はずっと眠っていなくてね。
……その後は、起きてから考えようかな」
「え、寝ていなかったんですか?」
「ダイアモンド原石を、どうにかお金にしちゃいたかったからさ。
でも、早々に売れたから良かったよ」
……そういえば、そうだよね。
夜遅くまで快気祝いをしていて、それで朝食のときにはもう売り終わっていたのだから――
「ちなみに、危ない橋は渡っていませんよね?」
「大丈夫、大丈夫♪
売ったのは、知らない人ってわけじゃないからさ」
「ふむ?」
「だから、心配は無用!
そこのところは信用して欲しいな」
「うーん、分かりました。
それでは、本当にありがとうございました!」
「何の何の。じゃ、またねー♪」
ジェラードは明るく挨拶をして、手を振りながら去って行った。
「――はぁ、それにしても金貨60枚かぁ……。
凄いですね……」
「わたしとしては、一晩で売ってきたジェラードさんも凄いと思いますけど、一瞬で作ったアイナさんも凄いと思いますよ?」
「私たちの無力さを感じてしまいますね」
「そうですね、ルークさん。慰め合いましょう」
ルークとエミリアさんが、何故かショックを受けている。
確かにこういう分野は私が得意としているけど、でも逆に、私は戦闘方面が全然ダメだからなぁ……。
「人それぞれ、得意分野が違うってことですよ。
私が出来ないことを、二人は出来るじゃないですか」
「「まぁ……」」
振り絞った二人の息が、ぴったりハモってしまった。
これ以上何かを言ったところで微妙な感じになるから……ここはもう、話を先に進めてしまおう。
「さて、今日は崩落事故のお礼ということで、夕食にお呼ばれしているんですよね。
お迎えが16時に来るので、依頼を受けるのは止めておきますか」
「そうですね。
1件なら受けられるかもですけど、遅れるわけにはいきませんからね!」
「では、街を歩いて過ごすのはいかがでしょう。
アイナ様、どこか行きたいところはありますか?」
「うん。それなら、防具屋で鎧を買うのと――
……あとは、ルークが行ったっていう鍛冶屋にも行ってみたいな」
「ああ。例の、魔法剣ですか?」
「そうそう。できるだけ早めに見ておきたいんだよね」
「でも、アイナさん。何で魔法剣なんかに興味があるんですか?」
「もしかして、アイナ様が魔法剣を……!?」
エミリアさんとルークは、それぞれ不思議そうな表情を浮かべる。
いやいや、魔法剣なんて覚えられるわけ無いでしょ……?
「もちろん、目的はじん――」
――ぎを作る参考に……と、言い掛けてしまった!
「……ごほん。
えぇっと、魔力の伝導というのに興味があるので、後学のために見学しておきたいな、と。
もちろん、錬金術的な意味で!」
「おお、なるほど。そういうものも錬金術に関係するんですね」
「勉強熱心ですね! わたしも見習わないと!」
……よし、誤魔化せたぞ。
というか、嘘は言ってないから全く問題なし!
「そんなわけで、今日の予定はそれで良いですか?」
「はい、問題無いです」
「はーい」
……話が決まったあとは、まだ時間があったので、のんびり過ごすのを楽しんだ。
やっぱり、こういうひと時があると一日が潤うよね。
はぁ、まったりまったり……。