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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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夜の十時になると、ナオトはトワイライトさんと共にアパートの屋根に登った。


「さてと……それじゃあ、これからのことについて話そうか」


「そ、そうですね。ですが、これだけは言わせてください。助けていただき、本当にありがとうございました。お礼と言ってはなんですが、この体を好きにしてもらって構いません」


水色のショートヘアとテニスウェアのような服と水色の瞳が特徴的な『トワイライト・アクセル』さん(『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の実況をしていた人)は頭を下げた。


「……はぁ……あんたは男が全員、体目当てで女性に接《せっ》してくると思ってるのか?」


「え? 今のナオトさんの体はパッと見、十歳くらいでも心は大人ですよね? 異性に興味はないのですか?」


「異性か……。まあ、興味がないと言ったら嘘《うそ》になるけど、俺はそこまで興味はないな……」


黒いパーカーと水色のジーンズを身に纏《まと》った少年は夜空に輝《かがや》く星々を眺《なが》めながら、そう言った。


「それはいったいどういう意味ですか? 私の体を見ても興奮しないのですか?」


「……あんたって、意外とグイグイ来るんだな……。まあ、興奮してるって言うより、ドキドキしてるって言う方が妥当《だとう》だな」


「ドキドキ……ですか?」


「ああ、そうだ。あんたの頭のてっぺんから、つま先に至《いた》るまで全てにドキドキしてるよ」


「そ、そうなんですか?」


「……っていうのは、冗談だ」


「そ、そうですか……」


「けど、近くに女の子がいるとドキドキするのは本当だ。フワフワしている髪、希望に満ち溢《あふ》れている瞳《ひとみ》、小さな口、細い手足、想像以上に柔《やわ》らかい肌《はだ》、膨《ふく》らみかけの胸……。どれか一つでも当てはまるものがあれば、俺はドキドキするし、どれにも当てはまらなくても自分と異《こと》なる性が近くにいるだけで、いつもより心拍数が上がっちまう。まったく、どうしてだろうな」


彼女は彼の手をそっと握ると、微笑《ほほえ》みを浮かべた。


「それじゃあ、私と手を繋《つな》ぐだけでもドキドキしちゃうんですね?」


「……ま、まあ、そうだな……」


彼はポリポリと頬《ほほ》を人差し指で掻《か》きながら、彼女から目を逸《そ》らした。


「か……可愛い……。もう死んでもいい……」


彼女は満足そうな顔をしながら、彼を抱きしめた。


「お、おい、そういうのはやめてくれよ。というか、あんたはこれからどうするんだ?」


「えー、そんなの決まってるじゃないですかー」


「えーっと、一応、訊《き》いておくが、次の目的地まで俺たちの旅に同行させろ……だなんて言わないよな?」


「もうー、私がその程度で満足するわけないじゃないですかー」


「へ?」


「私は残りの人生をあなたと過ごしたいと思っています! 例《たと》え、火の中、水の中! どんなところにだって、ついていく覚悟です! なので、私を旅に同行させてください! お願いします!!」


その直後、彼は彼女を守るために、こう言った。


「……ダメだ。それはできない」


「……それはどういう意味ですか? 私では力不足ですか?」


「そうじゃない……。けど、あんたにはあんたの人生がある。俺はモンスターチルドレンを元《もと》の人間の姿に戻せる薬の材料を探しているだけだから、それが終わり次第、俺は元《もと》の世界に帰る。だから、これ以上、俺に関わるな。不幸になるぞ」


彼は心にもないことを彼女に向けて発《はっ》した。その時の彼の顔はとても辛《つら》そうだった。


「……そうですか……。分かりました……。では、今ここで死んでもいいですか?」


「……!!」


彼は『死』という言葉に反応した。

彼は真顔の彼女を押し倒すと、彼女を睨《にら》みつけた。


「俺の前で死ぬなんて言うな! 嫌いなんだよ! その言葉は!!」


「……ナオトさんって、意外と単純ですよね……」


「わ、悪かったな。単純で……」


「いえ、私は好きですよ。ナオトさんのそういうところ」


「まったく……あんたは無知というかなんというか。とにかくもっと自分を大事にしろよ」


「いえ、それはできません。私はあなたと生き、あなたと死にたいと心から願っていますから、自分を大事になんてできません」


「まあまあ、そう言うなよ。お前の帰りを待ってくれている人くらいいるだろう?」


「……いません……」


「え?」


「私には……そんな人いません」


彼は彼女の心に大きな傷《きず》を付けてしまった気がした。


「そ……その……なんというか……。すまない……。今のは俺が悪かった……」


「いえ、そんなことないですよ。あなただからこそ、私の秘密を打ち明けることができました。むしろ感謝です」


「そ、そうなのか?」


「はい、そうです。あっ、でもそろそろ退《ど》いてくれませんか? こんなところ誰かに見られたら、厄介なことになりますよ?」


彼女はニコニコ笑いながら、そう言った。


「あ、ああ、そうだな。それじゃあ、少し動くぞ」


「あっ、ごめんなさい。前言撤回します」


「え? それはいったいどういう……」


彼が最後まで言い終わる前に、彼女は彼をギュッと抱きしめた。

彼は彼女から離れようとしたが、彼女の目尻《めじり》に透明な液体が溜《た》まっているのに気づくと抵抗するのをやめた。


「ナオトさん……。私をあなたの近くに居《い》させてください。必ずお役に立ちますから……」


彼は彼女の心臓の鼓動《こどう》を聞きながら、こう言った。


「あんたは、本当にそれでいいのか? 無理に俺たちの旅についてくる必要はないんだぞ?」


彼女は彼の頭を優しく撫《な》でながら、こう言った。


「……今の私には、生きる目的も理由もありません。けれど、あなたはそんな私に温《ぬく》もりをくれました。ここで別れてしまったら、私はまた一人ぼっちになってしまいます。そうなると、私はきっと長くは生きられません。ですから、私を見捨てないでください。お願いします」


彼は彼女の涙を拭《ぬぐ》うと彼女の目を見ながら、微笑《ほほえ》みを浮かべた。


「……分かった。俺は……いや、俺たちはあんたを歓迎する。だよな? みんな?」


彼がそう言うと、たくさんの影が屋根に登ってきた。ナオトの部屋の中にいたはずのメンバーが揃《そろ》っていることに気づいたトワイライトさんは、目をパチクリさせた。


「みなさん……どうして……」


その時、彼女の目の前に歩み寄った吸血鬼が彼女にこう言った。


「そんなの決まってるでしょ……。あんたを歓迎するためよ」


「……ミノリさん」


「……さあてと……今日はもう遅いから、明日のことは明日決めましょう。それじゃあ、解散!!」


ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、ミノリとナオト以外のメンバーがトワイライトさんを連れて、部屋の中へと戻っていった。

ダンボール箱の中に入っていた〇〇とその同類たちと共に異世界を旅することになった件 〜ダン件〜

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