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「自分の周りの人の顔を、表情を良く見てみるでござる、ってね。 嬉しそうか、怒っているのか、悲しそうか、心配しているのか、友達でも、家族でも、会社の仲間でも、取引先でも、ご近所さんでも、子供や孫達でも、ね。 周りは敵ばっかりって思って絶望する前に、味方を探して見回してみようって言うのでござるよ。 そしてもし幸運にも味方を見つける事が出来たのならば、味方が喜んで笑顔になれるように行動すれば、自分自身も幸せになれるのでは? って話すのでござる。 自分の事だけ見ている内は、誰もこっちを見てくれないのでござるってね。 見て欲しいんだったら、助けて欲しいんだったら、まず見よう、まず助けよう、鏡の自分に微笑み掛けるより先に、いつか自分に微笑んでくれる誰かに貴方から微笑んであげようよ、って言うのでござる」


「……」


「それでも、一人ぼっちだと絶望するようなら、もう一度拙者の事を訪ねて欲しい、拙者だけは味方でいたいと思っているでござるし、もし事情が許さずこの寺に来る事が難しい時でも、思い出して欲しいと、貴方は一人で生きている訳では無いと言う事を、ってね。 道路にあるアスファルトも、歩道橋や横断歩道も、橋も箸も、服も靴もパンツもベルトも、赤信号で止まる事も、雨の日に差す傘も、エアコンもレンジもパソコンもスマホも、お金もアクセサリーも漫画もアニメもラノベもフィギュアも、野球もサッカーもバスケもバレーも卓球もラグビーもアメフトも駅伝も、コンビニのおにぎりだって、もっともっと全ての物が、周りにある全部が誰かのお蔭で、誰かの努力や一所懸命の結果で、皆に囲まれて、皆と一緒に生きているんだって言うんでござるよ。 もし、そんな知らない人達の事なんて、身近に感じられないって言う人にはこう話すのでござる。 御両親や、御先祖様の願った自分の姿を想像してみるでござると。 そこに答えがあるのでは? ってね。 要はね、周りを変えようとしても難しいんだよ、他人だからね。 でもね、自分が自分を変える事だったら、自分の事を好いてくれて、自分の幸せを願ってくれている存在の為だったら、ほんのちょっとでも頑張れるんじゃ無いかな? って聞いて見るのでござるよ」


コユキは驚いていた。


あんまり一気に喋るもんだから、殆(ほとん)ど覚えられなかったからではない。

坊主ってお葬式とか法事とか、夏場にバイクで遊びに来る(お盆ね)だけじゃなくて、行列が出来そうな事までやっていたとは、と感心していたのだ。


でも、長尺で語ってくれたのだから、一応真剣に聞いていたアピールも兼ねて、聞いてみてやるか。

そう考えたコユキは神妙な顔つきで善悪に尋ねた。


「でも、そんな風に世の中にあるもの全てに感謝なんて感じられないほど絶望しちゃった人だっているでしょう? 周りの人が全然いない、それこそ天涯孤独みたいな人だって…… そんな人達は? お坊さんの事だって、信じられない、信じたく無いって所まで追い詰められちゃった人だっているんじゃないですかね?」


そう言うと、善悪はにっこりと笑って答えた。


「うん。 だから、そんな人達の為に仏様がいるんだよ。 イエス様やマリア様、コーランなんかもそうだね。 もう後が無い誰もいない、なんて言うのは人間の錯覚だと思うけど、そう思っちゃったんなら仕方が無いでしょ? でもね、仏様や神様達はいつでも、誰の事も等しく見守って祝福してくれるでしょ? だから、お寺も教会も神社もモスクも等しく開かれているんだよ。 僕ちんの顔なんか見なくてもいいから、仏様に会いに来てくれればいいんだと思うのでござる。 本当に一人だって思うのなら、神様や仏様と居ればいいんだと思うのでござる。 そうすれば、段々周りの事だって見えてくるかもしれないでしょ? 色即是空(しきそくぜくう)、空即是色(くうそくぜしき)。 滅私(めっし)の先に我有り。 って事かなって考えると、鏡ってどうなんだろうって思うのでござるよ」


むむむ、坊主全部がって訳じゃないだろう、と言うかたぶん善悪が特殊なのだろう。

さらっと異教や異端(いたん)の事も認めた感じで言っていたし。


まぁ、話しの趣旨(しゅし)は良く分からんが、人は自分の事が良く分かっていないって事だけは言い負かされた気がする。

仕方ないか負けておこう、とコユキは思った。

思っていると、善悪が調子に乗って坊主っぽい事を重ねて来た。

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