「ルノアーさん来たよー。」
「おう!いらっしゃい、その子は?」
「ユラちゃんって言うの、ちょっと預かってるんだよ。」
「ほう、で?朝飯食っていくのか?」
「今日は厨房借りていい?なんか作ろうかと思って。」
「その左側使っていいぞ、今日は何作るんだい?」
「ハンバーガーでも作ろうかと思ってね。」
「ハンバーガー?この前作ったハンバーグみたいなもんか?」
「そそー、ハンバーグを薄く作ってパンに挟むんだよ。」
千春は野菜庫に足を運ぶ。
「トマトとレタスっぽいコレと、ルノアーさんピクルス的な物ない?」
「ピクルスってなんだ?」
「野菜の酢漬け。」
「無いな。」
「そかー、保存食的な物だしなー。」
「もし良かったら作り方を教えてくれ。」
「うん、シャリーちゃんにでも教えておくよ。」
野菜を持ち出しテーブルに置く。
「あとは挽肉だね。」
「どうせ皆も食べたがるだろうから手伝うぞ。」
ルノアーは直ぐに人を数人連れて戻ってくる。
「チハルさん、ハンバーグの薄いやつって事は挽肉がいるんだよな?」
「そう、取りあえず4人分作ろうかと思ってたんだけど・・・。」
目の前には肉の塊が置かれていた。
「いや、それは流石に多すぎでしょ!」
「余ればハンバーグにすればいい、肉は牛とオークか?王族にも出すのか?」
「王族が食べる料理じゃないんだよなー、手づかみで食べるし。」
「それじゃ牛とオークか。」
「いんやー牛肉100%でしょ!ハンバーガーなら!」
「そうなのか?分かったそれじゃぁ牛肉を挽肉にするぞー。」
「「「おー!」」」
掛け声と共に料理人たちはいっせいに肉を包丁で叩きだす。
「こりゃーすぐ出来そうだね、こっちはソース作りでもしますか。」
「何ソースにするの?」
「なんちゃってウスターソースを作りまーす。」
モリアンがソースと聞いて反応する。
「前ウスターソースの事を聞いてたわよね、作れないような事言ってなかった?」
「うん、だからナンチャッテウスターソースで~す。」
「チハルさんのソースはどれも美味しい!」
「ユラちゃんは包丁使った事ある?」
「ないです。」
「そか、それじゃぁレタスをちぎってくれるかな?」
「はーい。」
ユラが何かしたそうだなと思った千春は簡単な仕事を振る。
「サフィー、ちょっとケチャップ貰って来てもらえる?」
「はい、シャリーが分かるかしら?」
「そだね、モリアン醤油と胡椒を取ってきてもらえる?」
「はーい。」
2人は材料を取りに行く。
「さて、あとはトマトをスライスしてパンか、ルノアーさんパンちょーだーい。」
「あぁちょっと待っててくれ。」
「はーい。」
千春はトマトを1㎝ほどでスライスして器に並べていく。
「チハルさん醤油と胡椒もってきました・・・あ、私はトマト抜きでお願いします。」
「えー、トマトの酸味が美味しいのに。」
「だってぇ・・・」
「マヨネーズ付けて食べなさい。」
「マヨが入るなら・・・」
マヨネーズがあればトマトも食べれるモリアンはしぶしぶ頷く。
「はい、ケチャップ持ってきましたよ。」
サフィーナもケチャップを持ってきた。
「それじゃケチャップに醤油を少々・・・あと胡椒を少々・・・」
「それがウスターソース?」
「厳密には違うけど似たような味になるよ。」
そういって2人に舐めさせる。
「ケチャップだけどケチャップじゃない!」
「美味しいですね。」
「チハルさん、パン持ってきたぞ」
「おーちょうどいいサイズの丸いパンだね。」
「一番食べやすい形だからな、多めに作ってるんだ。」
「パンも安定してきたねー。」
「チハルさんのおかげだよ。」
ルノアーとパンの話をしていると挽肉作成チームから声が掛かる。
「チハルさん!挽肉出来たぞー!」
「はいはい、それじゃぁ挽肉を薄いハンバーグにしてパンのサイズで形成してくださーい。」
「こんな感じか?。」
「いいね、それに塩と胡椒をパラパラ掛けて取りあえず4枚焼いてくれる?」
「了解!」
まずは4枚フライパンで料理人たちが焼きだす。
「それじゃパンを横に切ります。」
「縦じゃないのね。」
「うん、玉子の時は縦でもいいけどね、今日はハンバーガーだから。」
半分に切ったバンズにレタスを乗せる。
「チハルさんこんな感じか?」
「うん、それじゃ焼けたのをパンに乗せてください。」
レタスの乗ったパン4つにパテを乗せていく。
「それからこのウスターモドキをちょろっとかけてー、モリアンの分にはマヨを少々、上からトマトを乗せー、パンを乗せる。」
「可愛いわね。」
「おいしそうです。」
「早く食べたいでーす!」
サフィーナ、ユラ、モリアンはそれぞれ感想を言いながらも目はハンバーガーに釘付けだ。
「さぁテーブルに行って食べましょー。」
「「「はーい」」」
朝食を食べに来た兵士達が千春達の持っている料理を見てルノアーに注文していたが、既に量産されだしており、他の人も直ぐに食べれそうだった。
「はい、それじゃぁ頂きます。」
「「頂きます。」」
「いただきます?」
千春がココに来て良く食べる前に手を合わせ「頂きます」と言う為サフィーナとモリアンも一緒に食べる時は言う様になった、ユラは3人がやっているのを見てなんとなく真似をしつつ「いただきます」と言う。
「うん、美味しいね。」
「コレは美味しいわね。」
「おいしーーーー!!!」
「「モリアンうるさい」」
「・・・モグモグモグ」
ユラは何も言わず黙々と食べていた、かなり気に入ったようだ、モリアンは相変わらず怒られている。
「コレは毎日でもたべたくなりますよー!」
「食べれるんじゃない?」
千春は周りを見ながらモリアンに言う。
「うめえ!」「新しい料理か!」「料理長!あと2つくれ!」「俺もお代わりだ!」
兵士達が絶賛していた。
「毎朝定番になりそうな勢いですけど早く来ないと無くなりそうですね。」
サフィーナも定番の品になりそうだとは思ったものの兵士たちの食べっぷりを見てそう思った。
「兵士の人たちは良く食べますもんねー。」
「コレにフライドポテト付けたら最強だしね。」
「フライドポテト!最近ケチャップとマヨネーズ混ぜて食べてます!」
モリアンと千春の話を聞いた兵士たちが一斉に厨房へ注文する。
「「「「「フライドポテトくれ!!!」」」」」
「チハルさん!変な事教えないでくれ!手が足りなくなる!」
「ごめーん。」
ルノアーからクレームが入る、厨房では食事時には必ず揚げ油を準備している為すぐにポテトを揚げだす音がした。
「ユラちゃん気に入った?」
千春がユラに聞くと小さな口をいっぱいに開けハンバーガーを食べるユラがモグモグしながら縦に首を振る。
「んーーーーーーーかわいいーーーーー!」
思わず千春はニヤケながら声を上げてしまう。
「ほんとに、可愛いですね。」
「そう言えば昨日の夜は大丈夫だった?」
「チハルが言う通り夜一度泣きながら起きましたが私が横で一緒に居ましたので直ぐにまた寝付きましたよ。」
「そうだよねー、あんな目に合ってしかも目が見えないし、サフィーが居てくれて良かったよ。」
「そんな事は無いですよ、こんな可愛い子と添い寝なんて役得でしたから。」
「私も添い寝したかったー!」
「モリアンは寝相悪いでしょうに、一緒に寝させれるわけないでしょう、それに起きたのを気付かずに朝まで寝るでしょう。」
サフィーナはモリアンの寝姿を知っているようで一緒には寝させなかったらしい。
「ごちそうさまでした。」
千春は食べ終わりユラの口元を拭いてあげる。
「「ごちそうさまでした。」」
サフィーナとモリアンも食べ終わった。
「ユラちゃん、ゆっくり食べていいからね。」
3人が食べ終わったのを見て急いで食べようとするユラに千春は優しく声をかける、ユラはコクコクと頭を振りまた自分のペースでハンバーガーに齧り付く。
「チハル今日の予定はどうするの?」
「んー、本当なら帰って試験勉強するつもりなんだけど、どうしようかなー。」
サフィーナは今日の予定を聞いてなかったなと千春に問うが千春も未定だった。
「チハルさん、それじゃぁコッチで試験勉強したら良いんじゃないですか?」
「それだ!モリアン冴えてる!」
「それでは今日はチハルの試験勉強を邪魔しない様にモリアンは隣の部屋で待機ですね。」
「な・・・なんでですか!?」
「うるさくするでしょう?」
「・・・うるさくしないです。」
「まぁ煩かったら押し込めますから戻りましょうか。」
「そだね、ユラちゃんも食べ終わったし戻りましょうかね。」
「ごちそうさまでした!」
「おそまつさまでした。」
にっこりとごちそうさまを言うユラに千春は微笑み返し言葉を返す、厨房は戦場の様に忙しくなっていたが4人は気にせず厨房を後にする。
「チハルさぁん!この料理はダメです!人気ありすぎですよおぉぉぉ!」
ルノアーは後ろ姿の千春に叫ぶ、千春もサフィーナもモリアンも、ユラでさえ聞こえているのに後ろを向かずスタスタと厨房を去って行った。
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