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ー会計委員会ー
カキン!
刃のぶつかる音が響くのを聞きながら、三木ヱ門は隣に座り文次郎と香杳の手合わせを見ている佐稀を盗み見た。
文次郎と三木ヱ門が委員会の後輩にあたる香杳と佐稀を見つけたのはつい先程。
会計室の横にある庭にいた二人は、二人が来るのがわかっていたかのように微笑んで二人を迎え入れた。
佐稀「成長したでしょう?」
三木ヱ門「へっ?!」
静かに紡がれたその言葉に、驚いて声のした方を見ると、佐稀が香杳を愛おしそうに見つめていた。
三木ヱ門「……そりゃぁ、5年も経てば誰でも成長するだろう。」
視線を文次郎達に直しながらそう言うと、佐稀は自分の手を撫でた。
佐稀「時が経てば成長し、記憶もそれに伴って新しくなっていく。それがみんな当たり前だと思っている。僕も昔は、そう思ってました。」
どこか遠くを見る佐稀は、今にも消えてしまいそうだ。
佐稀「でも、それは互いが生きてることによって成り立つものなんです。人は死んだらそこで終わりで、成長することはない。記憶が新しくなっていくこともない。そこで時が止まってしまうんです。」
佐稀は静かに立ち上がり、三木ヱ門を見下ろすように立った。背中の方に太陽があるため逆光で口元しか見えない。
佐稀「僕達の中の先輩方は、時が止まってます。先輩も、十三歳の姿で止まっています。」
三木ヱ門「……死んでしまったのだから当たり前だろう。」
佐稀「えぇ。でも、僕達はその事実を受け止めれていない。だからこんな所まで来てしまった。」
何も言えなかった。
佐稀「もう、あとにはひけないんです。どうか、止めないでください。」
三木ヱ門「佐、」
香杳「おっしゃー!俺の勝ちー!」
文次郎「今のはずるいだろう!」
三木ヱ門の声に、香杳と文次郎の声がかぶさった。
文次郎の戸惑った顔を見る限り、二人も何か話していたのだろう。
香杳「佐稀〜!話し終わった〜?翔ちゃんのとこ行こーぜ!」
佐稀「……あぁ。」
香杳「んじゃぁ行こーぜ!」
佐稀「では失礼します。」
三木ヱ門「え、ちょっ、まっ、」
止める間もなく去っていった二人を、三木ヱ門は呆然と見てるほかなかった。