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陰茎が抜けていく瞬間、漏らしたような間抜けな音がした。放屁したのかと思い、さっと羞恥心に顔を赤らめる真夜を見逃すはずがない。
「何だよ、マン屁?つーか屁か?」
肩を揺すって笑う慎司を睨みつけた。
「良く見せてくれたら、もう一回ハメてあげるよ」
膨張して天を向いて反り返った赤黒い陰茎を手に持ち、頬に叩きつけられる。ぺちぺちと頬を打つ陰茎が熱く硬いことが余計に興奮させる。まだ真夜も蕾の奥に出してもらっていない。襞がうずいて蠢いている。
「早く。誰か帰ってきちゃうかもよ」
「……分かったから……」
のそのそと自分の足を開いて、臀部を掴んで左右に割った。腸液があふれ出して襞を滑り落ちる。薄紅色の柔媚な肉壁が濡れて動いている姿が慎司の前に曝される。正面をまともに見られず顔を背ける。
「物足りねぇー……」
眠そうな目で吐き捨て、その場にあぐらをかいて座ってしまった。欲しいものをくれると言ったのに、その気配が無い。
「いれて、くれないの」
小声で聞いてみた。慎司は欠伸をして、己の股間を指差した。
「おいで」
「え、でも」
「おいで」
拒めない。兄は普段から顔色が変わらないので、その分末恐ろしい。歩み寄って慎司に跨る。温かい掌が、丸みをおびた真夜の臀部を撫でまわす。
「ああ、いいケツ。風俗の女はどいつもなんか締りわるいし、ケツにいれさしてくんねぇんだよなぁ。真夜はいい子だなぁ」
「あ、んっ」
尖った乳首に吸い付かれる。ついばまれるたびに無意識に腰が動いた。
「ん、ふ」
熱を帯びた蕾の縁を指でなぞられる。粘液の力を借りて、奥まで指が入ってくる。けど、陰茎ほどの太さも硬さも無い。物足りない。
「すげぇ、ぴくぴくして熱いな。えっちだなぁ」
壁をノックされると、反応して震える。射精したばかりの陰茎が首をもたげはじめた。
「く、ぁ、……あっ……」
「えっちな真夜は指じゃ足りないだろ?」
「はぁ…はぁ……」
指を抜かれ、入り口付近を指の腹でくすぐられる。ちゅぷちゅぷと淫らな音が出てしまう。尻を突き出すような恰好をしながら、誘うように腰をくねらせる。
「いれて、しんじ、にいさん、いれて……」
こうなってしまえば、すぐに白旗を上げてしまう。だが簡単にくれはしない。
「そんな簡単にくれても面白くねぇし。自分で入れて腰振れよ」
どっかりと仰向けに寝転んだ慎司は動く気などない。働く気がないように、彼は生来、怠慢の塊だ。
「……わかった」
己で尻を割り開き、そそり立った慎司の陰茎を挿入していく。すっかり兄の形を覚えた襞は広がり、うまそうに陰茎を飲み込んでいく。
「はぁ…は―…、はー……っ」
蠢く肉穴が雄を抱きしめて歓喜に震えている。意外と逞しい腹筋に手を添えて、腰をくねらせて動かした。陰茎が奥まで入ってしまえば、あとは動くだけでいい。強烈な圧迫感を感じながら、腰を動かす。彼は黙ってみているだけだ。
「ん、は、あ、あ……、おき、……にいさんの、おっき……」
長大な陰茎に歓喜を露わにし、自ら胸を揉みながら尻を擦りつける。慎司の瞳に徐々に情欲が火を灯し出す。
「おし…りの、なか、にいさんでいっぱい…で、くるし……」
「真夜、いい子だな」
ようやく起き上がった慎司に顎を撫でられる。猫のように目を細めているうち、唇を重ねられた。熱く濡れた長い舌が、真夜の舌を捕まえてからめ、吸い付く。
汗ばんだ掌が臀部を揉みながら、力強く突かれた。ひく、ひくと内壁が痙攣して悦んでいる。
「はぁ…はぁ……」
「可愛い弟だよ。お前が一番だ」
濡れて潤んだ目で言われると、胸の奥が熱を帯びる。
……一番良い子。一番可愛い。慎司兄さんの一番。できそこないの俺にはもったいない。だから一番残酷な言葉だ。
よりいっそう深くを抉ると、胎内に放出される精液を感じた。恍惚とした真夜の唇を吸い上げて、濡れた髪を掻き上げられた。
「真夜も俺から離れて遠くになんか行くなよ。お前を守ってやっているんだから」
黒曜の向こうに、火のように燃える明かりを見た気がした。ぐったりと慎司にもたれ掛りながら、「うん」とすぐに返答した。
セックスが終わると、いつも兄は先に出て行く。後処理をするのは、いつも自分自身だ。
股をテッシュで拭って風呂場へ行き、風呂で蕾から精液を出して全身をくまなく洗う。
それから部屋に戻るが、兄は居ない。兄がいないなら家に居る理由もないので、ふらりと外へ出て行った。履きなれたサンダルを引っかけて、たらたらと道の隅を歩く。時折、路地裏で猫を見つけては足を止めて頭を撫でた。
猫は可愛い。素直だし、危害を加えない。守ってやりたいと思う。
真夜の存在は、慎司にとって猫のようなものなのだろう。気まぐれに抱き、気まぐれに愛を囁いて。でも絶対に離してくれない。
ふと天井を見上げてみる。電線に妨げられた空は黒く染まり、厚く太陽を隠していた。……風俗の仕事を紹介したのも、慎司兄さんだ。
高校時代「ある事件」を起こしてから学校をやめ、大学にもいかず、兄さんに抱かれたけがらわしい真夜は、バイトを紹介された。
真夜にしかできないし、皆には言わない。お前だけだよ。
そう言われて連れていかれた先が、あの風俗店だった。自由気ままに客を取れと言われたが、男で、しかも愛想のない真夜にすぐに客は付かなかった。
だがやっと付いてしまえば、どれもヒルのような男ばかり。羽振りはいいが、粘着質なセックスを好んだ。だからあまり大勢の客を取れない。兄を含めて、六人を限度にしている。
不思議なのは慎司だ。家でも勝手に突っ込んでくるくせに、店へ来てまでヤりにくる。変な独占欲がある。
「……みせ、いかなきゃ」
やることが無くなると、思い浮かぶのはおかげ様でセックスになった。纏う雰囲気を感じ取ったのか、猫が膝を滑って走り出す。
立ち上がった瞬間、立ちくらみを感じてよろめいた。胃のあたりが何だか気持ち悪い。ふらついた体を、誰かが引き寄せてくれた。ぼんやり見上げた先にあったのは、見慣れた顔だ。
「どうしたんだ。顔色悪いぞ」
真夜は顔をしかめて、目をそらす。
「うるせぇ、クソ野郎。どっかいけよ」
兄弟のなかで最も苦手な男、ナルシストだが実は気の優しい次男の真也が支えている。脳がぐらぐらとかき混ぜられるように痛い。今にも吐きそう。気分が悪い。
昨夜。寝るのが遅かったのに、さっきもセックスなんかしたからろくに休めていないのだ。冷や汗がじわじわと背中にあふれ出し、息も小刻みになる。
「真夜……おい、まよ」
うるさい。そう答えかけた声が出ずに意識が遠のいていく。抱きしめられた腕の温かさが穢れを知らないみたいで、無性に腹が立った。