コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
2035年 11月
京都 テレビ局のある子会社
「クビ…ですか。」
「そう!」
この瞬間、私はクビを言い渡された。
「よいっしょ」
ダンボールいっぱいに敷き詰めた私物を抱えてアパートのエントランスを開ける。
今にも落ちそうなノートが左右に揺れる。
エレベーターに乗ると3回のボタンを肩で押す。
「はぁ…」
大きなため息がエレベーターの中をはおんする。
「4…いや5年か?」
大学を卒業して今の会社で5年。
小学生の頃からの夢であったD(ディレクター)になるため、わざわざ京都まで上京して、メディア科の大学に入学し、夢であったメディア業界に就職。テレビ局の子会社として、番組の制作に関わりつつ、ADとして働き始めた。
我ながら頑張った方だと思うんだけどな。
日本は技術の進化が思ったよりも早かった。テレビというメディアは既に行き場を失い始めていた。
インターネット進化…スマホとかタブレットとか、もうテレビで見る人はそうそういない。
プログラミング技術でも持ち合わせていれば良かったのかもだけど、あいにく文系だし、私が学んできたのはプロデュースの仕事だし。
…せめて理系にしとけばよかったかな。
玄関にダンボールをドサッと置くと、電気を付け部屋を見渡す。
大学3年の時に寮を出てから早7年。
「この部屋ももうだいぶ長い付き合いなんだな。」
靴を脱いで、仰向けにベットに倒れ込む。
「帰るか…仙台」
『まもなく〜仙台、仙台。お出口は右側です』
新幹線の最終アナウンスが流れると耳からヘッドホンを外してカバンに入れる。
スマホの画面右上を見て、相変わらず繋がらなかった機内WiFiにイラッとしながら立ち上がる。
対して多くないキャリーケースを通路に押し出し、車両前方の入口へ向かう。
終点だからだろうか、降りる準備を始める人が少ないように見える。
だがしかし、私は最初に降りる!…なんの意地かは分からない。
新幹線ホームをからエスカレーターで連結する在来線通路に降りる。
スマホのロック画面を見るとちょうど15時
「次の電車…何時だっけ」
迎えに来てくれないかなーという妙な期待は叶わ…
ブー
ん?
【[お母さん]
着いたー?ロータリーにいるよ。】
…タイミング
ロータリー
水色の軽自動車を見つけるとナンバーを確認して近づく。昔1度間違えたトラウマか、車の迎えが来る時は確認するくせがついた。
助っ席を開けると、お母さんはにっこりとこちらを向いた。
「おかえり」
「…ただいま」
2035年12月
29最無職
仙台編がここに始まった