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コンコンコン


ドアノッカーの音がする。


「おう、開いてるぞ。」

店主がそう言うと女性が1人入ってくる、そしてエンハルトに近づき片膝をつく。


「状況は?」

「はい、地下牢を確認、中には5人の幼い子供が居りました、その少女の兄と思われる男児も一緒です、命に係わるケガはしていませんが無傷な子は居ません。」

「そうか、他には?」

「院長の部屋に侵入、子供の売買契約書と繋がっているであろう貴族の名前まで確認取れています、それと犯罪ギルドの者が数人守りを固めているようです、院長の護衛のようですね。」

「分った、チハル、ケガをしている子が居る、手伝ってくれるか?」

「当たり前じゃない、絶対についていくわよ。」

そう言って皆立ち上がる、サフィーナもティーセットをさっとアイテムボックスに入れ片づける。


「おっさん、落ち着いたらまた来る、ありがとよ。」

「おう、次は開店時間にきてくれや。」

そう言って2人は笑いエンハルトは外に出る、ドアの前には兵士が数人と先ほどまで護衛をしていた者が並んでいた。


「孤児院を押さえるぞ証拠は揃っている、兵士は孤児院の周りを固めろ、お前たちは出てくる奴等がいたら対応しろ、院長以外は切り捨てても構わん、騎士団の者も呼んでおけ。」

エンハルトは影に指示をだす。


「お前たちは一緒に付いて来い。」

「はっ!」

そして孤児院に向かう、しばらく歩き孤児院に着いたエンハルトは何もなかったように孤児院の中に入る、中には幾つかの部屋があり子供たちが大人しく遊んでいた。


「こう見ると普通の孤児院ですね。」

サフィーナは見渡しながら言う。


「まぁな、まさか貴族の孤児院が例の違法奴隷を出してるとはな。」

「ハルトは何か知ってるの?」

ココの事を知っているようなエンハルトに千春は問いかける。


「あぁ幼い子供を商品にする違法奴隷販売が有ると言うのは解っていたが、尻尾を掴めてなかった、まさか貴族が出資している孤児院だったとはな、国の落ち度だ、絶対にゆるさねぇ。」

「そうですね、貴族としてあるまじき行為です。」

エンハルトとサフィーナは怒りを露わにしながら答える。


「どうされましたか?」

奥の部屋から背は高いが痩身の男が出てきた。


「院長か?」

「はい、ココを任されておりますべーレーと申します、何か御用がありましたか?」

「あぁ街で少女を保護してな、その子の兄がココに連れて来られたから助けにきたんだよ。」

「ほう?名前は?」

「少女はシエリー、兄の方はケイルだ。」

「・・・・あぁ、その子達は先日孤児院を出ていきました、ココには戻ってきていませんね。」

飄々と顔色も変えずべーレーは言う。


「問答するつもりは無い、地下牢に入れてるケイルを出して貰おう。」

地下牢と言った途端にべーレーは顔色を変え後ろに大きな声をだす。


「お前たち!仕事だ!」

そう言うと奥の部屋から屈強な男が5人出てきた。


「おう?仕事かぁ?」

「ほおおチャラい男1人に娘が5人か、楽しませてもらっていいのか?」

「可愛がってやろうぜ、へっへっへ。」

下品な言葉を発しながら近寄ってくる。


「院長は殺すな、あいつらは切り捨てて構わん。」

「はっ。」

そう言うと左右に護衛をしていた影2人はすっと前に出る、すると後ろにも3人の女性が現れる、そして一瞬で間合いを詰めたと思った後に男5人はその場で倒れた。


「何したの?」

「なんて事はない一突きで終わらせただけだ。」

「こわっ。」

「気配も消せるし姿も消せるそう言う部隊だ、調べ物する時は重宝する、地下牢へ案内してくれ。」

「はい、こちらです。」

影の2人がドアを開き促す、院長は気付いたら床に押さえつけられ猿轡をされ拘束されていた、地下牢に入ると牢がいくつかあり、女の子3人の牢、獣人の女の子1人の牢、そして男の子が1人の牢があった。


「君がケイル君?」

千春は牢に近づき男の子に声を掛ける。


「おねえちゃんはだれ?」

「シエリーちゃんに頼まれてケイル君を助けに来たんだよ、シエリーちゃんは保護してるから、もう大丈夫だからね。」

そう言うと男の子は涙を流し腕で必死に涙を拭う。


「チハルちょっと下がってくれ。」

エンハルトは剣を出し南京錠の様な鍵を切り落とす。


「鉄よねコレなんで切れるの?」

「この剣は特殊な金属だからな。」

そして牢の扉を開き男の子を出す、腕と背中にかなりの傷が付いていた。

千春はすぐに駆け寄り魔法を掛ける。


「・・・ヒール。」

傷が塞がり赤いシミの様になったと思ったらそのまま傷が消えた。


「まだ痛い所ある?」

「ううん、大丈夫ありがとうおねえちゃん。」

「ハルト、他の牢もお願い。」

エンハルトは頷き無言で鍵を切り落としていく、3人の少女が出てくる、そして千春は一人ずつ魔法を掛けていく、3人は痣が腕や体、足にまであった。


「あとはこの子だね。」

そういって牢に行くが獣人の少女は動かない、様子がおかしいと思い中に入り少女の手を握る、少女はビクッと驚く。


「大丈夫?助けに来たよ、痛い所はない?」

「うん。」

少女は答えるが虚空を見る様に焦点が定まっていない。


「その子目が見えなくなったの。」

「連れて来られた時に、男の人に殴られて見えなくなったみたいなの。」

少女達は獣人の子の状況を伝える。


「目か・・・失明を治すイメージって・・・」

「チハル、魔法使いすぎじゃない?大丈夫?」

千春が回復しようと考えているとサフィーナが千春に声を掛ける。


「・・・・「鑑定」・・・・12/72、まだ大丈夫だよ。」

「大丈夫じゃないわ、もう2割切ってるじゃない。」

「そうだな、取りあえずその子の対処は後にしよう表に出るぞ。」

そういってエンハルトは皆を表に促す、モリアンは少女達の手を繋ぎ連れて行く。


「さて、それじゃぁ外に出ようか、歩ける?」

「うん。」

少女は立ち上がり千春の手を握り牢から出る、そして階段を上がった、外に出ると兵士が数人居た、そして奥から女性2人が紙束をエンハルトに渡す。


「院長の部屋から押収した書類です、ココに販売履歴と貴族の名前が書かれています。」

「・・・・ふむ。」

数枚ペラペラと見ながら途中で手を止め読んでいるそして兵士に声を掛ける。


「騎士団は来ているか?」

「はっ!第二騎士団が到着しております!」

「呼べ。」

「はっ!」

そう言うと騎士団を呼びに走る。


「第二騎士団小隊長!ヘンリー・アバレンです!」

「あぁ、コレを持って団長の所へ行け、すぐにホーザサス男爵を取り押さえろ、一族全員1人も逃がすなよ。」

「はっ!」

小隊長は部下を連れ直ぐに走り去る。


「ここはどうなるの?」

「孤児院か?大丈夫だすぐに管理者を入れる、残っている子供たちも安心して暮らせる様にしてやる。」

エンハルトは千春の頭に手を置き微笑む。


「ここの院長とかはどうなるの?」

「聞きたいか?」

「・・・・やっぱいい。」

「賢明だな。」

「この子を治療したいんだけど・・・」

「今はダメですよ?魔力が2割を切ると倦怠感が出てる筈です。」

「動き回ったせいかと思ってたわ。」

「まぁそれも有りますが今日は止めておきましょう。」

そうサフィーナに注意され千春もしぶしぶ納得する。


「それじゃぁこの子はどうします?治療するとしても明日ですねよ?」

モリアンも獣人の子の前にしゃがみ目の前で手をフリフリしながら聞く。


「うん、ただ治療するイメージの為に調べたい事があるから一度部屋に戻りたい。」

「それじゃチハルさんの部屋に連れて行きましょう、改築してベッドも付きましたし、どうせチハルさんは王妃殿下の所でしょう?」

「う・・・うん。」

「この子は明日まで私とサフィーで見ておきますから任せてください!」

このばたばたした間空気と化していたモリアンは張り切って面倒を見ると言い出した、千春はちらっとサフィーナを見るとサフィーナもニッコリしながら頷いてくれる。


「うん分かった、そう言えばこの子名前聞いてないね、種族は何だろう耳大きいけど犬?」

「どうでしょう?キツネでしょうか?鑑定してみたらどうです?」

「弾かれるんじゃないの?」

「獣人は魔法系が弱いですし、まだ幼いので魔法力低いチハルでも掛けれると思いますよ。」

「低い言うなし・・・それじゃぁ鑑定かけていいかな?」

女の子は「うん」と頷く。


「・・・・「鑑定」・・・・白金狐族、キツネかー、名前はユラちゃんでいいのかな?」

「うん。」

ぺこりと頭を下げるユラ。


「よし!取りあえず孤児院の方は今日中に目途を付けて対応する、関係者は片っ端から押さえるから俺達のやる事はもう無い、どうする?今日は街の観光出来そうになさそうだが?」

「そうだね、ちょっとMP不足っぽいし一回帰ろうかー。」

「それが良いです、魔力が回復しやすいお茶が有りますからゆっくりしましょう。」

「私も着替えてチハルさんの所に行きますねー!」

「いや、モリアンは今日休みにしてたんでしょう?」

「モリーと言って下さい!実家いると暇なんですよ!怒られるし!」

「「「自業自得」」」

「ひどっ!!!」

「それじゃユラちゃん私の部屋に行こうか、もう安心していいからね。」

千春はユラの前に行き両手を掴んで優しく言う。


「うん、ありがとう。」

ユラは微笑みを返す、目からは涙が溢れていた。



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