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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで
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地下の階段を下りて行く。

ふぅと深呼吸をして「STAR」のドアを開ける。

「いらっしゃいませー」

元気の良い蘭子ママさんの声が聞こえた。


「こんばんは!お久しぶりです!」

蘭子ママさん、やっぱり貫禄がすごい。

お化粧も着物も着ているんだけど、体格のせいかとても強そうに見える。


「あらぁ!久し振りね!!今日は一人!?」

「はい、一人で来ました」

笑顔で迎えてくれ、安心する。


カウンターに座らせてもらう。

チラッとお店を見渡し、椿さんの姿を探す。

「椿ね、今、お客様をお迎えに行っているのよ。もうちょっとで帰って来ると思うけど……。ごめんねぇ?」

「いえ。カシスオレンジいただいてもいいですか?」

「もちろん!」

あんまり飲み過ぎないようにしよう。前みたいに迷惑かけちゃう。


「あと、椿さんを指名したいんですけど……!」

蘭子ママさんに伝えたが、恥ずかしくなり顔は真っ赤だ。


蘭子ママさんは

「あら!一緒に暮らしているんじゃないの?指名なんかしなくても、家で会えるじゃない?」

周りの人に配慮して小声で話してくれた。


「あの、給料日だったんで生活費とか渡したかったんですけど、貰ってくれなくて。だから少しでも、蒼さん……じゃなくて椿さんとお店のためになればと思って……。指名したいんです」


私のお給料じゃ高いお酒とかは頼めないから、少しでもできることをしたい。


「まぁっ!!健気な子!蘭子さん、感激したわ!椿、喜ぶわよっ!?じゃあ、帰ってきたらそう伝えるわね?」


蘭子ママさんはご機嫌な様子で

「椿、桜ちゃんの顔見てどんな反応するのかしら?面白そうだわ」

私以上に椿さんの帰りを楽しみにしているようだった。


私はカシスオレンジを飲みながら、椿さんを待った。

その間は、蘭子ママさんや前に話をしてくれた桔梗さんが相手をしてくれた。初めて来た時はとても緊張したけど、今は話すことがとても楽しい。


<カラン>


ドアが開いた。

蒼さんかな?と思ったが、お客さんだった。

男女四人。私よりも少し年上の人たちだった。息抜きに来たのかな。


「いらっしゃい……」

蘭子ママさんの元気な声が途中で止まった。


「いらっしゃいませー。ご案内します」

と言い直し、蘭子ママさんの声に合わせてスタッフさんがテーブル席に案内をした。

蘭子ママさんの表情が変わった。

どうしたんだろう。


「あの、どうしたんですか?」

気になって訊いてみる。


「うーん。あのね、今来たお客さん、椿の例の同級生なのよ。向こうはわかっていないみたいだけど。椿、また具合が悪くなっちゃうんじゃないかと思って。どうしようかしら。お客さんには問題ないから、帰ってとも言えないし……」

「うーん」と悩む蘭子ママさん。


あの男の人が蒼さんの同級生。

蒼さんを虐めてた人。

そう考えるとイライラしてきた。


「蘭子ママ。あの人たち、椿を指名したいんだって。どうする?まだ椿、帰って来てないんだけど……」


えっ?椿さんを指名?


「なんでよりにもよって椿指名なのかしら?」


「この間、すごく綺麗な人が居たんだけど、途中で帰っちゃったみたいだから話をしてみたいんだって。女の子側からの要望よ?」

「でもね……」

そんな会話をしていた時だった。


<カラン>

入口のドアが開き、椿さんと一人のお客さんが入って来た。


「いらっしゃいませ!坂口様、お久しぶりです。ごめんなさいね。お迎えに行けなくて?」

この坂口さんって人は、蘭子ママさんのお客さんなんだ。


「いいよ。椿ちゃんが迎えに来てくれて、嬉しかった。綺麗な人と歩くのは久し振りだったから、緊張しちゃったよ」

柔らかい感じの人。

慣れた様子で坂口さんはカウンターに座った。


坂口さんの上着を椿さんが預かり、カウンターへ視線を向けた。

私と目が合う。

「えっ?桜!?」

「椿さーん!」

嬉しくて手を振ってしまった。


「どうしたの!?何かあった?」

慌てて駈け寄ってくれる椿さん。


あぁ、今日の椿さんも綺麗だな。

「いえ。私、椿さんに何もお礼が出来ていないから、せめてお店の売上に貢献できればと思って」

「桜ちゃんね、椿指名なのよ?」

蘭子ママさんが説明をしてくれる。


「びっくりした。無理しなくていいのに。でも……。会えて嬉しいわ」

椿さんは優しく私の頬に触れた。

あぁぁぁぁ!!ドキドキする。香水の良い匂いがする。

どうしてそんな色っぽいんだろう。


私が椿さんから目を離せないでいると

「ちょっと!こっちのテーブル、誰も来ないんですけど!」

そう大きな声が聞こえてきたのは、蒼さんの同級生が座っているテーブルだった。


「申し訳ございません。今からキャストが伺いますので……」

蘭子さんが声をかける。

椿さんもテーブルを見て気付いたようだった。

顔色が悪くなっている。


「椿さん、大丈夫ですか?顔色が……」

真っ青だ。

また発作とか起きたら……。

綺麗なオネエ?さんは好きですか?

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