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世界とあなたに祈りを。

世界とあなたに祈りを。

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第1話(幸せは続かない)

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2022年05月29日

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この世界には『魔法』が存在していた。

魔法それから思い浮かべるのは、炎・水・草・風だろう。その通り。今思い浮かべたものこそがこの世界でいう、魔法に値するのだ。また、『属性』こそがこの世界のカーストとなる。珍しい属性こそカーストは上位へと上がる。生まれて九十六月ほどが経った頃に属性は判明するが、稀に属性自体に自分自身を比例され、釣り合わなかった者共は、その属性に心臓を握り潰されてしまうとか無いとか言われている。だが、近頃念の為対策が取られ、心臓は握り潰されはしないが、代わりに属性が失われることとなった。また、この世界には切り札が存在していた。それは、『神』だ。

この世界には神が存在するのだ。 全ての属性を所有でき、また、神だけが使える伝説の属性が存在するとか。だが、神の姿は今の人々は見たことがなかった。だから、この俺も神の存在など信じていない。神は昔、この世界を守って下さったと言う言い伝えがある。

「昔々、悪魔はこの世界を滅ぼそうとやってきました。人々の命を吸い取り悪魔は生きながらえていたからです。そんな日々を過ごしていることにより、世界は壊れていきました。だけど、そんな日々に終わりが迎えたのです。それは、神がやってきて悪魔を、神だけが使える属性を使い打ちのめしました。神は人々に言いました。『この世界で生きていきたければ、魔法は使わず、ゼロから全てを始めなさい。そうすれば、必ずあなたたちの住むこの世界は希望の光に満ちていきますよ。』神は消えたのでした。それから人々は神の言葉を信じて、ゼロから全てを始めました。そして神の言葉の通り、世界は希望の光に輝いたのでした。おわり」

その話は俺が生まれて三十六月ほどが経った頃から毎晩母様から聞かされていたのだ。だけど、神を信じていたのは俺が六つほどになるまでだった。それ以降話を聞かされる前に寝ることを続けていた。

そして、今俺は八つとなった。今日は俺の属性が判明する時である。俺はファヨム家、皇族だ。母様と父様、じじ様婆様もみんなものすごく強い炎の属性に選ばれていたからだ。だから、俺も炎属性へとなるとみんな思っていた。だけど、俺は違った。一人、草属性だったのだ。俺には兄様と姉様が二人ずついる。だけど、みんな炎属性であった。草は炎に弱い。だから、俺は八つの頃から毎日のように兄様姉様にいじめを受けていた。表では仲の良い兄弟を演じていたが、俺の心はボロボロに砕け散っていた。優しい母様は俺の属性に何の文句も言わなかった。だが、それを気に食わなかった父様は、母様を殺したのだ。父様が母様を殺したことは誰も知らない。ただ、俺だけが知っていたのだ。そして、兄様姉様には俺のせいだと言われた。

「お母様が死んだのは、あんたが出来損ないだからよ! お前さえいなければ、お母様は自害することなかった。お前のせいだ、全部全部、お前のせいだ!だから、あんたも死んだら?」 俺はこの責任を背負いながらこれからどう生きていくべきなのか、それだけが分からなかった。

夜遅く、俺は母様の部屋へと向かった。もう、何もない部屋であろうと俺の心の拠り所はそこだけであったから。そして今日も一人涙をこぼして泣き続ける。母様はもうこの世界に存在しない。俺は今日も祈りを捧げる。それがどれだけの意味があることなのか、俺には分からなかった。だけど、いつも母様がしていたから。俺は真似していたのだ。そんな時、俺の視線の先に母様と幼い頃読んだ、神の絵本を見つけたのだ。その絵本の元へ行き、拾うと共に一つのネックレスが落ちた。そのネックレスは、絵本の中に描かれていたものと同じであった。

「神が宿っていると言われているネックレス。なぜ母様が?」 その時、僕の持っていたネックレスが黄色いに輝くと共に俺の意識は遠のいていった。起きるとそこはいつものベットであった。

そして俺の顔の前にいる少女は誰だ。白く長い髪は、太陽の光で輝きながら、美しく揺れていたのだ。俺は思わずその髪に心を奪われてしまった。

「御坊ちゃま、おはようございます。今朝の目覚めは少し、顔が赤いですね。お熱があるのですか?大丈夫ですか?」 そう言うと俺のおでこに手を置いた。それと共に目を瞑り、静かな空間へと変わった。

「お熱、ありませんね。安心しました。」 そう言うと、小さな微笑みを浮かべ笑った。その笑いは、とても美しく、どこか切ないものであった。

「お前は誰だ。お前のような顔つきのものはここで働いていたか?」

そう言うと少女は口を開き少し驚いた。そして、俺の上から降りると共に口を開いていった。

「シン・モドゥン。私はあなたのメイドです。誰でも無い、あなただけのです。どうぞ、御命令を。」

その姿は、主人に使える犬のようであった。床に膝をつけ、顔を伏せているこの人間は俺のことを知らないのか。そう思った。 こいつが俺のメイドになろうとなんの利益もない。どうせ俺のそばから離れていくから。何度も経験した。俺に寄り添う者全て、消えていくことを。僕に同情した者は父様に殺されているのだ。だから、俺にメイドができようが、そのメイドは同情などしない。殺されたく無いからだ。やることをすればすぐに出て行く。俺とメイドが口を開くことは一度も無い。『殺される』それが恐ろしいからだ。だから、最初から俺に近づく者自体いない。俺自身、これ以上僕のせいで死なれるのは嫌だから、これからも俺は一人ぼっちなんだ。

「俺はセダ・ファヨムだ。シン、お前はクビだ。だから出て行け。お前は俺に同情しているのか?馬鹿馬鹿しい。同情などいらない。だから、消えろ。それに、俺はもう死ぬ。だから、お前に何もしてやれん」

俺はそう言った。心のどこかで悲しんでいる自分が伝わってきた。感情が揺れることなどあってはいけないことだけど、今回だけはこの少女、シンにそばにいてほしいと思えたのだ。他の奴らとは違う、こいつだけが俺の目に美しく写り込んだのだ。こいつだったら、俺を救い出してくれるのか。この、憎まれ呪われた俺に、手を伸ばしてくれるのか。期待、などすることをやめたはずなのに、どうしても期待してしまう。それは、シンだけではない。今まで俺の目の前に現れたメイド全てにだ。もしかしたらこいつが俺のことを救い出してくれるのでは無いか、と頭のおかしいことを考えてしまう。いつもそうだ。結局俺は、自分が良ければ他はどうでもよかったのだ。だから、母様の読む神の絵本を聞きたくないから避け続けたのも、全部全部自分の為だったのだ。

それを俺は知らなかった。母様の読む絵本など、いつまでも聞ける。そう思っていた。声だって姿だって、全部全部これからも聞いて見ていられると思っていた。全ては違ったんだ。あの日、俺の属性が発覚した日。その日が母様と交わした最後の会話であったのだ。

「セダ、大丈夫よ。炎属性じゃなくても、セダはセダじゃない!母様は草属性も好きよ」

その日、俺は言ったのだ。

「なんですか?同情ですか?そんなものいりません。まず、人を慰めるならその笑顔辞めたらどうですか?気持ち悪いですよ。さっさと俺の前から消えてくださいよ。俺はあなたのことが大っ嫌いなのですから。」

あの日の言葉を全て消し去りたい。母様は最後まで笑顔を壊さなかった。決して怒るわけでもなく落ち込むわけでもなくただ、俺の前から静かに立ち去ったのだ。

それから母様は俺の前へと現れることはなく、俺を避け続けたのだ。いや、違う。俺が母様を避け続けていたのだ。あの日に戻り言葉を消したい。全部全部自分の言った言葉を無かったことにしたい。それが叶わぬとしても、母様に謝りたい。ただ一言、『ゴメンなさい』と伝えたい。だけど、それももう叶わない。ファヨム族、それはいい皇族とは言い難いものであった。同じ属性意外とは結婚を許されていなかったファヨム族は母様と結婚したのだ。母様は元奴隷であった。だが、炎属性だと知り、結婚相手へとなったらしい。炎は珍しい属性である為、そこら辺にいるわけではなかったのだ。母様は心優しく、貧弱であった。なので、いつも陰口を言われようと笑顔で過ごしていた。そんな母様はファヨム族に合わなかったのだろう。父様は自分の気に入らない者は全て消す。そんな人であった。生まれてくる子供全てが父様に似ていた。その為、決して優しい子供とは言い難い存在であった。母様は自分の子供にさえも馬鹿にされ、笑っていた。それは、俺も同じなのだろう。俺も父様と同じなのだと。気づいていた。だけど、信じたくなかったのだ。俺は父様と違う、そう思いたかったのだ。それから三月ほどが経ったある日、俺は見てしまった。母様が殺される瞬間を、この目で確かに見たのです。父様の力、炎の属性で殺した。父様は炎属性の妖精へと選ばれていた。なので、父様自身は眺めており、母様を殺したのは妖精、ファヨムだ。ファヨムは燃え上がる腕で、母様の首を締め付けていた。母様は抵抗していなかった。まるで、全てを受け入れているかのように、静かに息を引き取ったのであった。そして、母様の部屋に天井から紐を吊るし、母様の首に掛けたのであった。それは、自害に見せる為。そして、母様は自害として、遺体を処理された。俺はそのことを兄弟に言おうとは思わなかった。どうせ、信じてもらえないから。俺はそれから人と喋ることが無くなった。人と喋ることが怖くなったからだ。また、母様と同じことを繰り返してしまわないかと考えてしまう。だけど、俺の部屋にくるメイドの一人が俺に喋りかけてきた。名前はわからない。だけど、そいつといるとなぜか母様を思い出した。だから、来るたびに少し嬉しかったのだ。それから少しずつ喋りかけられることに返事をすることが増えた。

「何を描いているの?おぼっちゃん?」

俺を特別に扱わなかったのだ。ただの少年のように喋りかけてくれた。そんなあいつに少し好意を寄せていた。だけど、ある日突然あいつは俺の前から消えたのだ。そして新しいメイドが俺の目の前に現れたのであった。

毎日毎日待っていた。だけど、あいつがくることはなかった。その日から夜、母様の部屋へ行くことが増えた。母様の部屋へ行き、手を合わせる。それ共に神に祈りを捧げるのだ。それは、母様がしていたこともありまた、神の絵本に書いてあったのだ。絵本の題名はそう『この世界に祈りを。』俺は今夜もその次の夜も明後日も明明後日も、この世界に祈りを捧げるのだ。もう一度母様と、あいつに会いたい。そう願いながら毎晩眠りにつく。

「神様はね、いつでも優しい心の人の味方なのよ。だから、何があろうと優しい心だけは忘れないでちょうだい。お願い、お願い、セダ。」

俺は勢いよく起き上がった。

「寝て…いたのか?」

母様だ。今のは母様だ。夢にまで見る母様。謝りたいのに出来ない。

俺が喋ることは叶わないのだ。まるで、赤ん坊のようだ。いや、もしかしたら赤ん坊なのかも知れない。いつも夢では母様は下を向き離して、俺は抱えられている。赤ん坊は自分で喋ることは出来ない。そう考えると、夢の中の俺は本当に赤ん坊のようだ。俺の息は切れており、起きた人には見えないほど。

「御坊ちゃま!大丈夫ですか?御坊ちゃま、御坊ちゃま!」

シンだ。何で泣いてるんだ?俺のため?そうなのか?シンは優しいな。まるで、神のようだ。

神、母様は神の特徴まで言っていたような。確か、白く長い美しい髪と美しい瞳、白く美しい美肌。それが神の姿であると。全てシンに当てはまるではないか。シンは本当に神でないのか?

「シン、泣くな。目が腫れているぞ?」

俺はそしてシンの目を拭った。シンは俺の手を強く握り、涙を拭うと満面な笑顔を向けてくれた。そして何度も何度も御坊ちゃまと呼び、俺の腕を握りしめた。まるで、母様のように暖かく優しい温もりであった。

その温もりに俺は思わず涙をこぼした。今までのこと全てを思い出すと共に溢れるほどの涙が頬を通り俺の服に落ちるのだ。そんな俺の涙をシンは優しく拭ってくれた。そしてニコッと笑うと言った。

「私は例え御坊ちゃまが一人になろうと、私はあなたを見捨てません。セダ様に私はついていきます。例えそこが地獄であろうと、私はセダ様のメイドです。だから、安心して下さり。」

そしてシンの瞳からも涙が流れ落ちるのでした。また、初めてセダは人前で涙を見せたのでした

世界とあなたに祈りを。

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