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「なによこれっ!!!」
「…申し訳ありません。」
「何?お茶もまともに作れないわけ?」
「お姉様ってほんと馬鹿だわ。」
頭を畳にこすりつけて謝る。
しかしこれも日常茶飯事。
「申し訳ありません。」
「すぐに淹れなおして!」
茶の味はいつもと変わらないはずだ。
異母妹のわがままに、かしこまりました、と美世は召使のように頭を下げたまま台所へと急ぐ。
「もう。お茶も満足に淹れられないなんて、恥ずかしくないのかしら」
「本当にねえ。みっともないこと」
後ろから聞こえてくる異母妹と継母の嘲笑は、聞こえなかったふりをする。
実の娘があざ笑われてるというのに、父は時に気にした様子もなく食事を続けている。
もう何年もこの調子だから、美世はとっくに父への期待をなくしていた。
この国には、古来より異形が出る。人や動物に似た姿をしたもの、名状しがたいいびつな形のもの、定まった形を持たないもの。
様々な外見をしたそれらは、鬼や妖とも呼ばれ、人に害をなした、
これを討伐するのが代々、超常的な力を持つものが生まれる特殊な家の異能者たちだ。
異形は見鬼の才を持つものだけに見ることができ、異能を用いた攻撃でのみ、滅することができる。彼らはその特殊性から、帝の信頼を得て、長く重用されてきた。
斎森家は歴史ある女池である。そして、異能を受け継ぎ、その功績によって繁栄してきた家の一つ。美世はそこに長女として生まれた。