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すまない先生((体調不良

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すまない先生((体調不良

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2023年09月24日

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⚠⚠前回のお話とは全く関係ありません⚠⚠

⚠⚠ほんのり銀すま ブラすま表現ありますがキスなどはありません⚠⚠

⚠⚠体調不良、嘔吐表現⚠⚠

それでも良い方だけレッツゴー!










それは体術の稽古中、なんの前触れもなく突然起こった。

「え?」

銀さんの口から何とも間抜けな声が転がり落ちたと同時にドン、と鈍い音が響いて、また銀さんの口から素っ頓狂な声が出る。

「すまない先生…?!」

一時的に停止した思考が動き出して、ようやくハッとした銀さんは倒れたままピクリとも動かなくなったすまない先生の傍へ駆け寄った。


スクール内の体育館ですまない先生と銀さんは個人的な体術の稽古をしていた。

その日、銀さんは何度もすまない先生に挑んでその度に軽々と投げ飛ばされ何とか受け身をとるのが精一杯でウンザリ……いや、自分の未熟さを痛感していた。

息一つ乱さないすまない先生に勝ち目などあるかと諦め半分、されど己が強くなるためには越えなければならない壁があるんだとよろよろと立ち上がった時、事件は起きたのだ。

それはあまりにも唐突で何も反応出来なかった。

ただすまない先生の体が床に吸い込まれるように倒れていく様子を呆然と見つめることしか出来なくて。

だって、それはどうしても現実味にかける出来事だったから。

しかし、銀さんの瞳はハッキリとまるでスローモーションのように眼前に広がる光景を捉えていた、捉えてはいた、のだ。

驚愕、困惑、同様、混乱、その全てが銀さんの足を床の上に縫い付けて動けなくしていた。

すまない先生の体が床に打ち付けられて、鈍い音が耳に届いて漸くして我に返った銀さんは慌ててすまない先生の傍に駆け寄った。

「すまない先生!大丈夫…じゃねーよな…意識ありますか?」

あまり体を揺らさないように気をつけながらトントンと肩を叩くが反応が薄い。

触れた肩がなんとなく熱いような気がして額と首筋に手のひらを当ててみれば予想以上に高い体温にギョッとした。

この人、こんな体調で平気な顔して稽古してたのか。と銀さんの胸中で驚愕や呆れといった感情が交錯する。

しかも体術の稽古だ、さっきまで息一つ乱してなかった。化け物かよ。と銀さんは普段よりほんのり赤らんだすまない先生の顔を見つめた。

「………」

とにかくこの人を早く保健室へ連れていかねばならないが、生憎自分一人ではどうにも出来そうにない。ミスターブラックに連絡してここに来てもらうのが最善策かと銀さんの脳内で思考を巡らせていた矢先、いつの間にか意識を取り戻していたすまない先生がふらふらと立ち上がった。

「え、ちょっと、どこに行くつもりですか?」

「銀さん、すまないね、稽古の続きはまた今度ね。ちゃんと埋め合わせするから…とりあえず肩貸してほしい…」

「もちろんです、早くミスターブラックの所に行きましょ!」

すまない先生の腕を取って銀さんは自分の肩に回した。

思いのほか体重を預けてこないすまない先生に銀さんはもどかしさを覚えながら、歩幅を合わせて歩き出した。

その時。

ポタ、と床の上に何かが落ちた音がした。

「………」

「……血?」

見間違いかとも思ったがそれは確かに血液だった。木の床に赤い血液が一つ。

そして隣に二つ、重なって三つと数を増やす。

ポタ、ポタ、と出血している大本を辿るように視線を上げると、それはすまない先生の鼻から落ちていた。

「すまない先生、鼻血出てますよ。」

「かっこ悪いから言わないでよ…」

あからさまに落ち込んだ様子のすまない先生に銀さんは近くにあったタオルを引っ掴んですまない先生の鼻に押し当てた。

「歩けるなら早く保健室に行きましょ!」

「うん…」

倒れた直後に比べればしっかり意識もあるし会話もできている。

そんな事実に少し銀さんは安心していた。

まだ少し足取りが危ういすまない先生を銀さんはそっと支え、保健室まで連れ添った。


朝から自身の体調に違和感はあった。だがそれが明確に不調へと変貌したのは銀さんとの稽古の最中だった。

目に見えないそれはじわじわと確実に己の体を蝕んでいった。

最初に感じたのは体の火照りと軽い頭痛だった。

だけど別に動けないほどしんどい訳でもないし、後でブラックに診てもらって薬でも貰えば大丈夫でしょ。と大して気にする程でもないと判断した。

だが、それがいけなかった。

徐々に歪み出した視界、頭痛が限界を越える。

ぐらりと脳が揺れるような感覚がして視界が黒い斑点で埋め尽くされていく。

単純に気持ち悪いと思った。そう自覚した頃には既に立位を保てていなかったのかもしれない。

あ、これ、やばいやつだ。と脳が理解した時には床の上に倒れ込んでいて体に衝撃が走っていた。

咄嗟に受け身をとることも出来なかった故に痛い。

一瞬意識を飛ばしていたみたいで目が覚めて最初に視界に入ったのは焦った銀さんの顔だった。

珍しく焦る銀さんに少し面白いと思ってしまったことは銀さんの機嫌を損ねかねないので内緒にしておこう。そんなこと言えば怒ってどっかに行っちゃいそうだし。今、銀さんに見捨てられたら流石にやばいことぐらい理解してるんだよね。

このまま稽古続行は難しそうだから、銀さんに断りを入れてさっさと保健室へ、と思ったら鼻血まで出てくる始末だ。

あーやだやだ、やめてほしいな。情けないし、かっこ悪いし。

確実に頭痛も悪化してるし、少し胃のあたりが重い。

やだな、吐くのかな。なんて考えてたら保健室に到着した。

「失礼します。」

隣で銀さんの声がして、ガラガラと扉よ開く音。

そこに居たのは保健室の先生ではなく、ミスターブラックだった。

音に反応したブラックは椅子に座ったまま振り返った。

すまない先生と銀さんを交互に見たブラックは少し驚いたように目を見開いた。

「珍しいですね、何があったか経緯だけ聞かせてくれませんか?」

「えーとな、体術の稽古中に急に倒れてすぐに意識は戻ったんだけどよ、見ての通り鼻血と、それから多分熱もある…」

「そうですか、ありがとうございます。あとは本人から聞きますので銀さんは戻っていただいて構いませんよ。」

「分かったぜ!すまない先生お大事に。」

保健室の扉の開閉音がして、すまない先生は漸く張っていた気を一気に抜いた。

そのせいかどうかは定かではないが、胃の不快感が徐々に明確な吐き気へと変貌を遂げる。

「タオル外しますよ。」

血に染ったタオルを取り上げたブラックは手際よく丸めた脱脂綿をすまない先生の鼻に突っ込み、問うた。

「他に症状ありますか?」

すまない先生は一段と重くなった体を保健室のベッドに横たえながらその質問に答える。

「気持ち悪い、吐くかも。」

「そうですか。」

ブラックは袋を張った洗面器を枕元に用意し体温計と氷嚢をすまない先生に手渡した。

ぐったりと横になったまま緩慢な動きで体温計を腕に挟んでいるすまない先生にブラックはそれからと付け足すように告げた。

「しんどいところ悪いのですが鼻血が止まっていないのなら横にならないほうがいいですよ」

鼻血で窒息したくはないでしょう?と言われは仕方がない。

すまない先生は渋々といった表情で重い体にムチ打って上体を起こした。

だが、それが引き金となって事態は悪化する。

「…っ」

上体を起こしたことによる眩暈、それから急激な吐き気を催してすまない先生は咄嗟に口元を手の甲で抑えた。

先程用意されたばかりの洗面器を手に取り抱え込む。

口を開いて何度か呼吸を繰り返すと、胃が痙攣するように力が入って中身を押し出した。

「…うぇ”っ、…ぇ”っ、…は、ぇっ…」

ドロっとしたあまり水分を感じない嘔吐物がぼたぼたと落ちる。胃酸で喉が焼けて痛い。

「…はぁ、っぅ、んっ、うぇ、…っ…」

「大丈夫ですよ、上手く吐けてます。」

背中をさすられながら何度か嘔吐を繰り返す。生理的な涙がポロリと頬を伝った。

「…はっ、ぁ、ブラック…なんかやばいかも、これ…」

「どういう?」

何がどうやばいのかブラックに詳しく聞こうとしていたが、それを聞き出す前にすまない先生の体がぐらりと傾いた。力が入らないというようにベッドに倒れ込む。意識を飛ばしていないのが不幸中の幸いだろうか。

「すまない先生…」

「はっ、ぁ…は、はっ…」

かなり早いペースで呼吸を繰り返す姿に嫌な汗が背中を伝う。

ただの風邪にしては症状が異常だ。

だからといって何が発作を起こすような重い病を持っているわけでもない。

「すまない先生、さっきの稽古で頭を強く打ってないですか?」

ブラックの問いかけにすまない先生は緩慢に首を振った。

脳震盪ではないとすれば原因はなんだ?脳内で当てはまりそうな病名を思い浮かべながらすまない先生の衣服の袖を捲った。

とにかく脈を測ろうと手首に触れると、あまりの熱さに思わず眉間に皺を寄せた。

それに加えて早すぎる脈。

何もかもが異常だった。

「ブラック、今僕の、手首触ってるよね…?」

「ええ脈を測っています…それがどうしましたか?」

「はは、参ったな…痺れてて感覚がない…」

手の痺れ…感覚がない…?

「…そういえば汗かいてませんね」

熱すぎる体温、頻脈、鼻血、嘔吐、頭痛、そして銀さんが言っていた稽古中の失神。

再度今まですまない先生が訴えた不調を脳裏に巡らせると、ぼんやり一つの病名が思い浮かぶ。

「脱水、いや熱中症ですかね…?」

こんな時期に珍しい。だからこそ診察が遅れた。チッと舌打ちをしたブラックは急いで点滴を投与する。

「すまない先生、起き上がれますか?少しで良いので飲んでいただきたいのですが…」

嘔吐は落ち着いた様子のすまない先生を起こして経口補水液を手渡そうとしたが、指先が震えていることに気づきペットボトルにストローをさしてすまない先生の口元に半ば無理やり押し込んだ。

「少しでもいいので。」

「ん、」

もう無理だと言うように、口からストローを離す。ペットボトルを見れば三分の一は減っていた。ブラックは心の中で上出来。と呟いた。

「……あたま、われそー…」

「今冷やすものを持ってきますね。」

「横になりたい…」

緩慢な動きでベッドに倒れ込んだすまない先生はその宝石のような空色の瞳を瞼の内側に隠した。

「点滴入れますよ。」

「…ん」

「眠れそうなら寝たほうがいいですよ。」

既に微唾み始めているすまない先生の額に冷やしたタオルを置いてやれば暫くしてすうすうと静かな寝息が聞こえ始めた。


「…え”…っ、」

あれから暫くの間、静かだったベッドから、びちゃびちゃと水っぽい音と嘔吐く声が聞こえてブラックはベッドを仕切るカーテンを開けた。

先程まで穏やかな寝息をたてていたはずのすまない先生は枕元に用意しておいた洗面器をまた抱えていた。

「しんどいですね。」

戻しているのは殆ど先程飲ませた経口補水液だった。それから吐ききっていなかった固形物が少し。

ちらりと時計を見れば三十分しか針は進んでいなかった。

「…け”、ぇ”っ、…はぁ、っ…死にそうなんだけど…」

「死にはしませんよ、もう暫くの辛抱です。」

またびしゃびしゃと水分を吐き出して生理的な涙を流したすまない先生は、もういい。と洗面器を差し出した。

それを受け取ったのと引き換えにまた経口補水液を差し出すとすまない先生は引き攣った笑顔でそれを拒んだ。

「さすがにもう飲みたくないよ…」

今吐いたばっかだもん…と心底嫌そうな顔をするので思わずふっと少し笑ってしまった。

「笑い事じゃないんだけど…」

「あぁ、すみません…」

点滴も効いてきてるし、何より顔色がいいから今回ばかりは我儘を聞いてあげましょうか…

「今度銀さんにお礼言っといたほうがいいですよ、彼、かなり動揺してましたので。」

「あは、そうだね…ねぇ、ブラック。」

「なんです?」

「僕、アイスが食べたい。買ってきて!」

「そんなに元気なんでしたら帰ってください。」

「え~僕病人だよ?さっきまで吐いてたの知ってるでしょ?もっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?」

「病人の自覚があるなら大人しく寝ててください。」

「もー、ブラックの意地悪!」

いつものようにペラペラと冗談を言い始めたすまない先生を受け流しながらブラックは思う。

少し体調が悪いくらいがしおらしくていいんじゃないかと。

軽口を言えるくらい元気になったのなら少し離れても大丈夫だろうと少し席を外しますとすまない先生に伝えブラックは屋上へと出た。

パソコンを片手に持ったまま夕焼け空を見つめ、

「すまない先生の過去を聞く限り、あのお2人がいたら何か変わっていたのかも知れませんね」

今のすまない先生は傍から見たらひょうきんに見えるかもしれないがそれも空元気にしか見えない瞬間がある。

もし2人がこのすまないスクールにいたら…?

なんてそんなタラレバ話を考える私もまたらしくないのかもしれませんね。

日が落ちきった空を眺めブラックはその場を後にした。










𝑒𝑛𝑑

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