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黄×緑


【軽い設定】

緑の名前→智翠 緑 (ちすい みどり)

黄の名前→黄乃美 琴(きのみ こと)

_________

【緑視点】


体育館に入り、赤いカーペットの上を練習通りに歩く。

練習で確認した自分の席に座り他クラスが入場し終えるのを大人しく待つ。

開会挨拶、国歌斉唱が続き卒業証書授与が行われる。

しっかりと手順通りに壇上に上がって卒業証書を受け取り終えると、自分が前に出る番が後に無いことから安堵した。

そしてまた自分の席に戻り、後のクラスを待つ。

「黄乃美 琴」

待ちながら、壇上に上がった彼の名が呼ばれたのに反応した。

いつもより少し整えられている髪の毛を僅かに揺らし、卒業証書を受け取る彼に俺は見惚れてしまう。

だけどもう、彼を見ることが出来るのはこれが最後なのだろう。

俺は彼とは他の大学へ進むのだから。

彼に会えないとなると思うと、つい目が潤んでしまう。

だが、友人に心配されそうなので涙が出ないようにした。

やがて卒業証書授与も終わり、祝辞が続く。

長くて堅い話に耳を傾けている人はいるのだろうか。



閉式の言葉が言われ、全員が退場していく。

外に出て「疲れた」と声に出している男子生徒や涙目になっている女生徒等、反応は様々だった。

そんな中、彼は友達と笑って話している。

俺も友達に呼ばれて話に加わっていたが、彼のことが気になって話は入ってこなかった。

彼が帰る前にせめて何か少しでも話せたら…

そう思いながら彼のところへ近付くが、話しかける勇気は出ない。

緑「っ、あ…黄ちゃ……」

俺の声は小さくて、彼には聞こえてない模様。

やっぱり、諦めようかなんて思いながら彼から離れようとすると、誰かに肩を掴まれた。

振り返ると、俺が呼んだ彼だった。

黄「えと、緑君どしたの…?」

「さっき呼んでたやろ?すぐ行けんくてごめんな!!」

俺の声に気付いてくれたことが嬉しくて感激してしまいそうだ。

緑「ぁ、えと…卒業おめでとう…って、い、言いたくて……」

緊張して声が震える俺に、彼は微笑みかけながらこう言った。

黄「それは緑君もやろ!!」

「卒業おめでとうな!」

彼に言われる「おめでとう」は、他の誰よりも嬉しかった。

緑「ぁ、ありがとう…」

黄「なな、せっかくやし写真撮らん?」

緑「…うん、撮りたいな( 笑」

黄「んじゃこっち寄ってくれる?」

そう言われ、彼に引き寄せられる。

触られた肩と、触れられてない顔が段々熱くなっていく。

黄「はい、チーズ!!」

彼と近くに居れたのが嬉しくまた緊張してしまい、少しぎこち無い笑顔になってしまったかもしれない。

黄「緑君のでも撮る?」

緑「とっ、撮りたいな…!」

俺はスマホを出して内カメに設定し、彼とツーショットを撮る。

少し手が震えてしまったが、写真はブレなかった様だ。

黄「じゃ、また会えたら!」

笑顔で言う彼の言葉に少し切なさを感じるが、俺も笑って応えなきゃいけない。

緑「うん…また、いつかね」

写真を撮った時から気付いていた。

彼の学ランの第二ボタンが無いことに。

だが、第二ボタンが残っていたとしても俺は彼にそれを強請ることは出来なかっただろう。

友達の元へ去っていく彼の背中を見送りながら、一筋の涙が零れた。

この作品はいかがでしたか?

90

コメント

1

ユーザー

切ない……切なすぎる…見てるこっちがつらくなりますな……( ; ; ) このお話めっちゃ好きです(*´ω`*)

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