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『はじまりのまち』。それはファンタジーものの定番であり、全世界のファンタジーゲーマーが一度は憧れる素晴らしい場所……だと思われる。

そんな夢や希望がたっぷりと詰まった場所が今回の旅の目的地である。

ここまで来るのに仲間を集めたり、名前を考えたりといろいろ大変ではあったが、なんとかここまで来ることができた。

さあ俺たちの旅を始めようぜ! と、一人張り切っていたが、そう上手くはいかない。なぜなら……。


「あたしが偵察に行ってくるから、あんたは留守番してなさい!!」


「いいえ! そんなことをしたら住民たちが集団行動並みの早さであなたを狙撃するかもしれません!」


「あたしをなんだと思ってるのよ!」


「血を欲することしか能のない名ばかりの吸血鬼だと思っています」


「もうー! あんたは、なんでいつもあたしを怒らせるようなことしか言えないのよ!」


「私は事実を言っただけですよ、アホ吸血鬼」


「くっ! あんたちょっとオモテに出なさい! 一瞬でカタをつけてやるわ!」


「いいでしょう。ちょうどあなたと私の力の差をはっきりさせたいと思っていましたから」


俺は外に出ようとする二人を「まあまあ」と言いながら仲介した。

まったく、こいつらはなんでこんなに仲が悪いんだ? まあ吸血鬼と天使だから当然と言っちゃ当然だが。

え? どうしてこうなったのかって? それはほんの数分前に遡る。



『はじまりのまち』の少し手前に停止した『ミサキ』(巨大な亀型モンスターの外装)が休んでいる間に俺たちはまず、誰がそのまちの偵察に行くかを話し合っていた。

そのまちはファンタジー世界が三度の飯より好きな人たちが思い浮かべているようなものではなく、強力な結界で覆われ、外からは中の様子が全く見えないという、とても厄介な『まち』だったからだ。

ミノリたちから聞いた情報によると『魔王軍』に見つからないようにするためだそうだ。

そんな結界を張れるヤツがいるなら、そいつに討伐を依頼すればいいのに……。

まあ、それは住民たちが決めたことだから、なんとも言えないがな……。

しかし、そのまちの偵察に行くには、一つ問題があった。

それは近づいても通り過ぎてしまいそうな『まち』にどうやって入るか、である。

しかし、その問題をズバッと解決できる存在がいた。そう、その存在こそが彼女たち『モンスターチルドレン』である。

まず、誰かが偵察に行き、まちの様子を観察する。

帰投後、その情報を元にどうやってまちに入るのかを考え、まとまり次第出発する。

こういう手順を踏んでまちに入るとは思いもしなかったため、少し驚いたが『魔王軍』がいるから仕方がないのだろうと考えるようにした。

『魔王軍』と言っても世界を滅亡に導く根源などではなく、『はぐれモンスターチルドレン』の集まりらしい。(『虫型モンスターチルドレン』が仕切っているらしい)

『幼女だらけの軍』それすなわちハーレム! と想像した人がいると思うので、これだけ言っておく。

それはない。変に期待しないほうがいい。

ミノリたちから聞いた話によると『はぐれモンスターチルドレン』の軍は自分をモンスターチルドレンになるよう促した人間たちを恨んでおり、速やかに抹消すべき存在だと思っているらしい。(ちなみにほとんどが戦闘狂らしい)

だから仮に「ロリ軍に入れてください!」などと叫びながら近づいた瞬間、そいつは、かなりの確率で終了する。

まあ、そのことはおいおいにして、本題に入るとしよう。

えー、ザックリ言うとミノリ(吸血鬼)とコユリ(本物の天使)……どちらが偵察(ていさつ)に行くかでケンカになったということだ。

俺は別にどっちが行ってもいいと思っているのだが、二人はそう思っていないらしい。

まあ、要するにお互いのプライドが高すぎるせいで……というか、お互いをライバル視してしまっているからであろう。

これから、そんな二人を俺は説得しなければならないのだが、正直……気乗りしない。

しかし、旅を続けるためには仕方のないことである。さあ、説得の時間だ……。


「二人とも、とりあえず落ち着けって。な?」


「じゃあ、あんたが決めて!」


「は? いきなり何を言って……」


「そうですね。この際どちらが偵察任務に相応しいかをマスターに決めてもらいましょう」


「……あのー、ちなみに俺に拒否権は?」


「もちろんないわよ、そんなの。前にもこんなこと言った気がするけど、気のせいかしら?」


「ああ、気のせいだ……」


「……そう。なら、いいわ」


「……というか例の水晶は使えないのか? こういう時に使うべきだろ普通」


『…………』


「え? 俺なんか変なこと言ったか?」


すると今までいがみ合っていた二人が顔を見合わせた。それから数秒後、コクリと頷いた。

その後、二人は同時にこんな動作をした。『ガッテン! ガッテン!』と。

どうしてN○Kの番組を知っていたのかは謎だが、これで水晶に偵察を任せることが決定した。

ミノリが『パーフェクトクリスタル』をどこからともなく取り出すと『まち』全体を水晶に映し出した。


「これが『はじまりのまち』……なのか?」


二人がいがみ合っている間、部屋の隅で怯えていたマナミたちも出てきて水晶を見始める。

うーん、これは俺がイメージしてたのと違うな。

突然だが、全世界のファンタジー好きに前もって言っておきたいことがある。……すまない。

なぜ謝るのかって? それは期待に期待させた俺が悪いからだ。

……話を戻そう。


「なあ、ミノリ。これって本当に『はじまりのまち』……なのか?」


その問いに対してミノリは真剣な表情を浮かべながら、こう言った。


「ええ、そうよ。これがこの世界に存在する『まち』の一つ……『はじまりのまち』よ」


「マジか?」


「マジよ」


自分の目が壊れているのかもしれないと思い、何回か目をパチパチと瞬きしてみたが効果はなかった。

『モンスターワールド』で初めて見る『まち』がすでに占拠されているなんて誰が予想しただろうか?

普通は『この○ば』のように最初のまちで装備やら仲間やらを集める。

そこには高レベルのモンスターがあまり出現せず他と比べて安全なはずなのだが……どうやらこの世界では、そうではないらしい。

こいつはおそらく『まち』の人たちが避難した後《あと》、この強力な結界が張られ、外から見えない安全が保障されたこの土地を拠点にすることにしたのであろう。

その証拠にリーダーっぽいやつが赤い本革製の座面の周り(肘掛けなど)が金色の『キングチェア』に足を組んで座っている。

そいつは首から下を包帯でグルグル巻きにしていて頬杖をつきながら、何かを噛んでいる。

額の少し上から始まり、右目の目頭にギリギリ当たらず、そのまま曲線を描きながら……って分かりにくいな!

もう反比例のグラフが第二象限にある時の曲線のように糸で縫われた顔でいいや。

えー、そいつは半開きでやる気のなさそうな紅い目をしており、桜色の髪は座っているため正確な長さは分からないが、おそらく腰のあたりまではある。

あと、そいつには、戦闘好きなのがはっきりと分かるぐらい包帯のあちこちに血がついている。

ここまでの情報で分かったことは、こいつがかなりの確率で『ゾンビ』だということだ。

そして、そいつの周りには、いかにも強そうな『紅い瞳が特徴的な黒狼』が数匹いる。

そいつらからは、近づく者は誰であろうと噛み殺してやる! という殺気がバリバリ伝わってきたため、偵察に行かなくて良かった……と、その場にいる全員がそう思った。

さて、そんな『オオカミ』たちと『ゾンビ』が占拠している『まち』に誰が行くか。それが新たに発覚した問題である……。

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