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小さな神社

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虫の声

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2022年10月01日

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夜…もう美子もすっかり眠って、ぼくもそろそろ寝ようかと思っていた。

でも、女神様はじっと外を見ている。

「女神様、何かあります?」

「ううん、虫の声を聞いていたの」

耳を澄ますといろいろな虫の声が聞こえてきた。

「秋の夜は虫の声がきれいね」

女神様はふわりと笑うとこちらを向いた。

「ちょっと外に出てみようか」境内は真っ暗で、少しひんやりとした。

「涼しくていい気持ちね」

女神様は嬉しそうに言う。

「えぇ、とても」

ぼくは深呼吸をした。

見回すといろいろな虫がいる。

ぼくは狛犬で、女神様は神様だから真っ暗な中でもはっきりと見えるのだ。

草の陰に昆虫が数匹…

「女神様、バッタです」

「コマ、あれはキリギリスよ」

耳を澄ますと鳴いていた。

「美子のために2〜3匹捕まえて…」

「やめなさい、共食いするから」

女神様は言った。

美子に見せるにはちょっとえげつない…

「あれは…コオロギ…かな?」

ぼくは虫には詳しくない。

「そうね、コオロギだね」

女神様が言う。

「美子のために5〜6匹捕まえて…」

「やめなさい、共食いするから」

それはさすがに美子には見せられない。

「あ、あっちのは…大いz…いや、スズムシですね」

「あら、本当、スズムシもいたね」

スズムシは植木鉢の近くにいた。

「スズムシなら捕まえても…」

「やめなさい、共食いするから」

「スズムシもですか?」

「スズムシもなのよ」

昆虫採集は諦めた。

「秋の虫は捕まえなくても、夜に声が聞けたら十分じゃない?」

女神様はしみじみと言った。

「えぇ、そうですね」

ぼくは深く納得した。

「明日は美子も一緒に境内に出ましょうね」

「えぇ、ぜひとも」

ぼくは答える。

ぼくたちの間を涼しい秋風が優しく吹き抜けるのだった。

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