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「続けますね? 私は、子供が2歳になったときに、アンバー公爵家の本宅から出て、領地で暮らします」

「アンバー領にかい?」

「そうですね……。領地でやりたいことがあるので。子供が5歳になったころには、1度公都に戻りますが、心を病んでしまったので療養のため領地に引っ込むことになっています」

「……心を病む? そんな話を聞けば……」

「お父様、心配はいりません。仮病ですから。公都の煩わしさから逃げた形で、アンバー領へ。公爵第一夫人とは、いつでも噂の的になるのは御存じでしょう?」

両親へ目配せすれば、頷いている。貴族社会にいれば、上位の貴族ほど噂の的になることが多い。ましてや、わざわざ隣国から嫁いだ第一夫人と黒い噂がある第二夫人が揃うわけだ。噂好きなご婦人たちが放ってはおかないだろう。

「正直、領地の収益も運営も芳しくないので、こっそり立て直しをしようかと。領主代行の役をもらって、自由に改革することになると思いますが、その事業を子供に見せて、今後に活かせるようにしたいと考えています。あぁ、残念なお知らせになるかもしれませんが、私の子供は、外見はジョージア様そっくりですが、中身は私に似るようです?」

「……あぁ、嘆かわしい」

兄が頭を抱えているが煩い。兄のようにのほほんと生きていける人生なら、私もそうやって育てるはずだ。未確定な未来は、私以上の試練を子どもに課そうとしているのだ。

「私のしてもらったように育てますし……たくましくないと生きていけませんからね!」

三人のため息が重なる。

私、そんなにダメな子なのかしら……?

三人を見渡せば、各々思うところがあるのだろう。口元をきゅっと結んでいる。

「一応、『ハニーローズ』であることを隠すつもりで、夢の中では10歳までは男の子として育てるつもりです」

「ジョージアといったかな? そのアンナの未来の夫は」

「はい。そうですよ?」

「知っているのかい?」

私は首を横に振った。あの子のことを知ることは、ないはずだ。生まれた日から、別居するのだから。

「ダメでしょうか? 教育は、両方の性別で同時にするつもりなのですが……」

さらにため息が深くなった気がする。

「そうね。できれば、きちんとした教育はしていった方がいいわ。規格外の話になっているから、どちらの基礎も必要ね。男としての強さ、女としての強かさ。品位、身振り、礼儀作法。どれをとっても男女違うのだけど、両方うまくできるに越したことはないわ」

「お母様は、どちらもできますものね?」

「……そういうわけではありませんが、私もアンナもどちらかといえば、はねっかえりとはいえ女性ですからね。当然、女性なので、当たり前ですけど……女性の教育をしてきたつもりです」

今後のことは、母にもきちんと相談しながら考えていくことになった。なんせ出産まで十分な時間はあるのだから、焦る必要もない。うまくいかないことがあれば、その都度修正すればいいだけのことだ。

「剣も武術もそれなりには使えるようにしようと思っています。自分の身は自分で守ってほしいですからね?」

「それはそうだけど、アンナに教えたほどをその子にも?」

「もちろんですよ?」と返事をすると、「そう」とだけ返ってきた。

「あとは、そうですね? 子どもの側近の話もしておきますね。側近は全部で十三人。まずは、侍女として私が拾う子供と領地視察で誘拐されそうになった子供五人。私を害そうとしているダドリー男爵家の二男と長女」

「……私を害そうと?」

「アンナの話は何から何まで、物騒だ」

「そんなことないですよ! ダドリー男爵家はソフィアの生家です。のちに、『ハニーローズ』殺害未遂で一族郎党死罪になりますが、二人の子供とその母は、離縁させた後だったので私の庇護下にいます。あとは、ローズディア公国の第二王子。トワイス国の第一王子。エルドア国の第一王女。戦争孤児として、あの子自身が拾う子供ですが、エルドア国の子供が1人とトワイス国の公爵令嬢ですね。あと一人がわかりませんが、爵位がないものや低いものが多いです」

メモを取っている父は、ため息をつきながら「どうしたものか」と呟いた。

「側近たちはとは別に、一人、大きな存在がいます」

「それは、誰のことだい?」

「公には側近として扱われませんが、トワイス国宰相ヘンリー・クリス・サンストーン。ハリーが、私の子供の後ろ盾となります。そして、国王になる殿下も彼女の味方となってくれます」

そこまで話すと、父が休憩を求める。

ことが大きいのだ。仕方がない。

かいつまんで話してもここまで広がると……整理していかないとおいついてこない。

さらに夜も深くなってきている。

少し疲れが表に出てきているが、最後まできちんと聞こうとしてくれる両親と兄に感謝する。

「では、最後に王になるきっかけですが、ローズディア公国の第一王子とトワイス国第二王子そしてエルドア国の第一王子が同時にクーデターを起こします」

「クーデターだって? トワイス国の第二王子って……」

「お父様の政敵ではありませんか? ちょうど、年頃が似たような娘がいるのは」

「……頭が痛い話だ。ますます、サシャにはしっかりしてもらわないと」

苦笑いをするが、父はそれどころではないだろう。サンストーン家とは違い、汚い手も持さないような相手である。

「それぞれ、外部の国……インゼロ帝国と共謀しています。そこに目をつけているのがインゼロ帝国なのでしょうが。誰がどれほど、気を付けていても必ず起こります。他国のことはわかりませんが、トワイス国の第二王子は自分が王になるよう育てられますから……仕方がないこと。殿下の第二妃の子です。一応、気を付けておいてください!」

「それは、トワイス国の第一王子が冷遇されていることに起因するのか? 生母もいなければ後ろ盾もないから……」

「そうです。後ろ盾のない王子に誰が手を差し伸べますか? お父様にもお兄様にもそのことを念頭においてほしいのです。殿下が選ぶ未来の王太子はジルアートですから。それに異を唱えるのが第二妃であり、第二王子です」


重い沈黙は仕方がない。この国の未来だ。大人がどれだけ頑張って修正しようと戦争にクーデターには揺るがずに進むだろう。


「始まりは、ローズディア公国の外から宣戦布告があります。アンバー公爵領とはちょうど逆側になるので、領地は安全でそのまま大丈夫ですね。そのクーデターは、第二王子であるプラムにまで刃が届くことになります」

「城にまで届くと言うことか。まず、城にいる公子がその敵ならなおのこと」

「そのとおりです。プラムを救うのはうちの子なんですがね……? ちょっと間に合わないようで大けがをすることに変わりなさそうです。でも、命は救われますし、その後もちゃんと軍部の幹部になっているので大丈夫でしょう。一週間もしないうちにエルドア国で内乱が起こります。第一王子が先導します。上位貴族を味方につけているようで、内側から外側に広がるように街は焼かれて、国力はそれまでの半分にも落ちてしまいます。さらに同時期にトワイス国も起こります」

「やはり恐れていても起こるのだな」

「トワイス国は、ローズディア公国より救援要請を受けて向かった兵が、第二王子に唆されてそのまま王宮に攻めてくると考えてください。それらの陣頭指揮をとり、それぞれの王や王族を守り、民への救援をするのが、私の子供なのです。そのころには、トワイス国第一王子の婚約者になると噂されているところですが、領主になるためにいろいろと頑張っているので、お断りしているのですよ。私がまいた種が少しずつ花を咲かせるころなので、犠牲はどうしても出ますがそれほど苦労もなく戦争も内乱も納められるはずです」

「とんでもない未来が待ち受けているのだなぁ……その未来を少しでも軽減するための一連とはいえ……」

「別に王族が、無能なわけではないのですよ? うちの子が優秀なだけで……。民からと貴族からの要望でアンバーが取り上げられるのがきっかけで、女王が復活するのです。語るのがハリー。本来の王家の形に戻しましょう、三国が一国となり、難局を支えあおうではないかということで、いただく冠となります」

こめかみを揉むようにしている父。この先、対策を練るには、父と兄だ。私以上に大変な立ち位置となった。

「そこからは、私は夢は見れませんでした。でも、私の娘ですからね……わかると思います」

話終えると、三人から深い深いため息が漏れる。ため息しかでないのであろうことはわかる。私もここ何年もいろいろなシーンを見ては書き綴り、夢はどんどん膨大なものになっていった。

ただ、これがこれから現実に起こるのなら、なるべく犠牲は少なくしたい。

「私が、トワイス国で結婚した場合も夢は、告げてくれています。幸せな結婚と引き換えに先ほど言ったように、私の家族や友人は殺されてしまいます。そして、この国を含めこの3国はなくなります。それは、内乱から始まり帝国の侵略によりなくなってしまいます。なすすべもなく、女子供は、売られたり奴隷にされ、男は強制労働や戦で無駄死にさせられると……それだけは、私は避けたい。この2つ目の選択により、全部は救えない……でも、救える命もあるのだと信じたいのです。

どうか、お父様、お母様、お兄様、私に力を貸してください。夢の続きを……あるべき姿に……」涙ながら訴えることしか、私にはできない。

途中で退場してしまう私は、子供を産み、育てることが定めだが、死もまた定めとなっている。

最後まで見届けてあげられないのであれば、私の味方となってくれる人が、我が子を正しき道を選べるように導いてほしい。

父になるジョージアには、それは難しいと夢では告げられているのだから……。

ハニーローズ  ~ 『予知夢』から始まった未来変革 ~

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