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このストーリーでのオメガバースについて

第二性(所謂バース性)はこの話の時代より昔から存在しているが、

αやΩの人口が都市伝説レベルで少ないため世間一般の価値観は変わっていない。

β同士からαやΩが生まれることは非常に稀とされている。

番の解消は不可。

番になったら役所に申請すれば同性でも婚姻が可能。

α、β、Ωに関することは一般的なオメガバースと同じ。


糸の先、2人を繋ぐもの


俺、赤葦京治は先輩であり憧れのスターである木兎さんと付き合っている。

ちょうど俺が2年に進級した桜が綺麗な頃だった。

少し風が吹いて舞った桜の花びらが木兎さんの髪についたのを見て、

スターはなんでも似合うな…なんて思っていたところ

木兎さんから告白された。

もちろんすぐには自分の気持ちも分からないし、一旦保留にしてもらったのだが

彼の猛烈なアプローチの末、お付き合いすることになった。

そんな俺たちの関係を知っているのはお互いだけ。

正直それが少し心配というか不安に思うこともある。

ただ、男バレの主将と副主将という立場上…だけでなく周りからの反応は試してみなくとも分かる。

一応この世界には男女の性の他にα、β、Ωという第二性が存在する。

αとΩなら同性でも結婚できるらしいが詳しくはよく知らない。

というのも第二性は人類のほとんどがβだからだ。

日本では中学三年生の初めに1度目の第二性検査、高校2年生の終わりに2度目の第二性検査が義務付けられている。

しかし先程も述べたように人類のほとんどがβだ。

かくいう俺も中三の時に受けた第二性検査ではβと診断された。

これは保健の授業で先生が言っていた話だが1度目の検査、中三の時点でαやΩとわかる人は本当に数少ない事例なんだそう。

だから高二までは皆心のどこかで、もしかしたら自分もαかもしれない。優秀でカリスマ性を持つとされるあのαかもしれない。と思っているのではないだろうか。

αはテレビに出てるような芸能人やプロのスポーツ選手、超大企業の社長など有名な人に時々いるらしい。

彼らは生まれながらにして何かしらの才能を持っていて一般人、βとは格が違う。

そんなαである可能性が自分にあるとは思わないが俺は考えていなかったんだ。

αであるということよりももっと考えていなかった可能性…そう、

自分がΩであるということを。




高二の終わり、木兎さんたち3年生は引退し俺は主将になった。

3年が居なくなってもっと寂しいものかと思っていたけどそんな暇もない程に忙しい日々を送っていた。

部活の勧誘用チラシ、ポスターの作成や部活動紹介の発表内容を考えてたり、こんな時に限って監督が新しいチーム作りのためにと練習試合まで組んできて…と本当に大変だった。

今まではあくまで主将のサポートとして動いていたが今では俺が主将で、このプレッシャーは想像より遥かに大きかった。

「なんか意外っすね」

そう言ったのは今年度から副主将になった尾長だった。

去年俺が2年で副主将をやっていたのがイレギュラーで次は3年が副主将をやるのだと思っていたが

やりたがる者がおらず、1年からスタメンだった尾長に白羽の矢が立った。

でも俺はあまり親しくない同級生とよりも1年間同じスタメンであった尾長の方が有難い。

「そう?」

「はい。だって赤葦さんいつも率先してやってたので」

部活後に残って尾長とチラシのコピーをしていて、俺がこんな仕事もうヤダ。バレー部なんだからバレーだけさせてくれって愚痴ってたらそう言われてしまった。

「まぁあの人のおかげで慣れてはいるけどね。俺も尾長に丸投げしよっかな」

「えぇ!ちょっそれは困ります!」

「俺も時々しょぼくれるからフォローよろしく」

「俺は赤葦さんみたいに上手くできないですって!」

こんな調子でチラシのコピーが終わるまで尾長と雑談したあと残りは明日!とキリをつけ校舎を後にした。

門を出ようとすると人影が見えて、少し警戒しながら門を通るとそこにいたのは

「木兎さん!?」

「あっあかーし、やっと来た!」

「鼻真っ赤じゃないですか、あんた一体いつからここにいたんですか!」

「そんなに待ってないよ?今日先生に呼び出されて遅くなってさ、そろそろ部活終わる頃だな〜って思ったから待ってた!」

「そうなんですか…今 次の1年勧誘のチラシとかやってて、遅くなりました。すみません。」

「赤葦が謝ることねーよ。俺が勝手に待ってただけだし!」

毎日のように会っていたのが急に会えなくなって久しぶりに話した木兎さんは相変わらず元気で今まで気づかなかった自分の気持ちが溢れてきた。

あぁ…寂しいな

今はまだ校内で会えるし3年の教室を覗けば木兎さんがいる。

でもあと少しでその当たり前は当たり前ではなくなってしまうのだ。

こうやって一緒に帰れるのだって次がいつになるか…次があるかさえ分からない。

「赤葦?急に黙り込んでどうかした?」

「なんでもないですよ。ただ、ちょっと寂しいなって」

そう言ったら木兎さんは目を丸くしていた。

「…赤葦、なんか意外だな」

なんかこれ今日で2回目だな…いったい何が意外って言うんだ。

「赤葦はもっと仕方ないって割り切ってるタイプかと思って、俺だけ不安になってカッコ悪いなって思ってたんだけどさ」

チャリンと音を立てて取り出したそれを木兎さんは俺に向かって投げた。

咄嗟に掴んだそれを見ると…

「鍵…?」

「そう。俺の1番上の姉ちゃんが住んでたとこなんだけど春から別んとこ引っ越すんだって。んで、そこ俺の行く予定の大学と近いから俺が住むことになったの!」

「そうなんですか」

いまいちピンと来てない俺に木兎さんはこう付け足した。

「それ合鍵!いつでも会いに来て」

「…いいんですか?」

高校生の若気の至り、木兎さんが卒業したら何も無かったことに…自然消滅なんてことも有り得るかもと覚悟していたつもりだった。

でも本当はこれからも一緒にいたくて、つなぎ止めておきたくて…

そんな不安を拭ってくれる、恋人であることを証明してくれるようなものを俺に渡してくれたことが嬉しかった。

それはただの合鍵、でもこれがある限り木兎さんが引っ越すまでの将来を約束された指輪のようなものだと俺は感じた。

「もちろん!お泊まりも大歓迎!」

「ありがとうございます。大事にします。」

鍵をしまうためにカバンを開けると1枚の紙がひらりと落ちた。

「はい、赤葦。」

「ありがとうございます。」

拾ってくれた木兎さんにお礼を言って何の紙だっけと確認してみた。

「赤葦、それ第二性検査のだよね。明日?」

「そうっぽいですね。完全に忘れてました。」

「あっじゃあ俺こっちだから!またね!」

「はい。さようなら。」

…明日か、本当に忘れてた。

でも木兎さん、なんか言いたげだったような…?

もしかしてαとか?バレーだって五本の指だし有り得るのでは?

いやいや、ないだろ。普通に。

プロのスポーツ選手にαがいると言っても片手で数えられる程度。

そのほかの強い選手はみんなβだ。

流石にただの考えすぎだろうな…



約1ヶ月後


「今から第二性検査の結果を渡してきます。これは大事な個人情報なので無理やり聞いたり勝手に見たりしないように…」

担任の話しを真面目に聞いている生徒はほぼおらず教室はざわついていた。

『第二性なんてどうせみんなβでしょ〜』

『俺優秀だしαかもしんねーわ』

そんな会話がどこからが聞こえてきた。

「それでは出席番号順に赤葦から前に受け取りに来て。」

教卓まで行き赤葦京治と書かれた封筒を受け取った。

自分の席に戻りハサミを使ってそれを開け折りたたまれた紙を取り出した。

ここに俺の第二性が書いてある。

別段緊張するようなことではないが何となくテストの結果を見るような感じでゆっくりと紙を開いてみた。

「…え」

俺は見間違いの可能性にかけてもう一度よくその紙を読んでみたが

『第二性検査結果:Ω』

その文字が変わることはなかった。

「全員受け取った?では、第二性がβ以外だった人達は早めに病院に行って指導を受けてください。以上、解散!」

担任の話が終わってやっと部活だと部室へと向かっていた。

でも頭の中はさっきの事でいっぱいだった。

俺がΩ?嘘だろ?

Ωって確か発情期がなんかとか色々あったよな…ちゃんと保健の授業聞いとけば良かった…

とりあえず病院?いや、その前に親に報告すべきか…

木兎さんにはいつ言おう…

「あれ?赤葦さん?」

尾長に呼び止められて足を止めた。

「赤葦さんどこ行くんですか?そっち部室の方ですけど…今日体育館の点検かなんかで休みですよね?」

「あぁ、そうだった。ごめん、ぼーっとしてたから癖で部室向かってたみたい。ありがとう。また明日。」

部活でバレーして一旦忘れるつもりだったのに、それが出来ないのなら1人になりたい。

早口で尾長と別れると急いで家に帰った。


「ただいま…」

いつも通り誰も居ない部屋な向かってそう言った。

はずだった。

「あれ?京治?早いね」

いつもどこかに出かけている母が今日は家にいた。

「今日部活が休みだったから…」

「ふーん」

興味のなさそうな返事が帰ってきたのはさておき、どうせいつかは話さないと行けないし

次まともに帰ってくるのがいつかも分からないので第二性について母に報告することにしよう。

「あのさ、母さん。今日第二性検査の結果が出たんだけど」

そう言いながら検査結果を差し出した。

「え〜?あんたΩなの?めっちゃレアじゃん」

思いもよらない回答に驚いたが聞きたかったことを尋ねてみた。

「ねぇ、父さんか母さん Ωだったりする?」

β同士からΩが生まれることは稀らしいからもしかしたら…と思った。

ちなみに、αの可能性もあるがうちの両親がそうは見えないからわざわざ聞かなかった。

「失礼な!2人ともβだよ!」

今遠回しに自分の息子に失礼なことを言ったことに気づいているのかいないのか…

まぁそういう人だってことはずっと昔からわかってることだけど。

父も母も定職につかずいつもどこかへ行って気まぐれに帰ってくる。

祖父母の支援のおかげで生活は送れてるからいいけど、人間性は反面教師にして育ってきた。

「そうなんだ…β同士からΩってあるのかな」

「知らないけど、Ωってお金かかるでしょ?京治、高校卒業したら出てってくれない?」

「そんな…..、 母さん。俺、病院 行ってくるね」

診察券と検査結果の紙とその他諸々を持って病院へと向かった。



……To be continued

糸の先、2人を繋ぐもの

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コメント

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オメガ…✨ 最高…!! でも、赤葦の親はダメだねw 赤葦下手したら育児放棄としてとらえれるよw?多分……、、 続き待ってます! 頑張ってください(*´∀`*)

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