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千鶴はあの一件から毎日のように練習に勤しんでいる。一人、孤独という名の恐怖に耐えつつ芽依に会うために頑張っている。久しぶりの射場の空気が爽やかで華々しかったのを覚えている。今日もよろしく、と道場に向かってお辞儀する。奥の方から架那が弓袋を持って歩いてきた。架那とも話せていない。だが、千鶴は変わった。
「おはよ!架那!」
そう千鶴が挨拶すると、架那はおかえりと抱き着いた。
「千鶴!完全復活ね!!今日から、レギュラーメンバーが配置らしいよ!もう、一年生からは卒業!一年は二年生という扱いになるって!」
「じゃあ、これからはもっと!気を引き締めて行かなきゃね!」
「うんっ!!」
そう言い、千鶴と架那は今までの薄い関係ではなく。逆境を乗り越えた戦友になれたのだ。千鶴はそのことを深くは理解しない。弓道に対しての楽しさが芽生えてくる。
架那は相変わらず的を射抜く、千鶴は本数関係なく、自分の納得のいく射型を極めていった。地味で遠い遠い道のりだが、この一瞬一瞬が楽しくてしょうがなかった千鶴はようやく三中した。
「千鶴さん、この三日間何があったんですか?急成長じゃないですか。」
顧問も圧倒する実力を付けた。港先輩、恋珀先輩と過ごした半日は決して無駄ではなかった。無駄どころか、千鶴の心をも磨き上げてくれた。千鶴にも、チームにもいい影響を与える。これが港先輩が伝えたかった楽しさそのものなのだろう。千鶴は射場の高い天井を見上げ、二人の優しい先輩達を思い浮かべる。無心こそ叶わないが、考えて矢を放つことに喜びを感じている。千鶴はまだ、終わっては居なかった。まだ、架那ほどの実力はない。そもそも、三日間で架那との実力差を埋めようだなんて1ミリも考えてはいない。全ては来週の予定である、芽依のお見舞いの為だ。
「この三日間で、私は弓道に大切なものを知っちゃったので!」
「えー?その、大切なものってなに?」
架那が聞いてくる。構わず、無視を決め込んでいると
「それって楽しいっていう感情のこと?」
と、確信を簡単に突かれ、こくりと頷くことしか出来なくなってしまった。架那は少し、ムスッとしながら千鶴の耳元で
「私は千鶴と一緒にいればずっと楽しいからね」
と、呟いた。その言葉を千鶴は生涯、忘れることはないだろう。
こうして、七日経った。これまで以上に弓道に勤しんでいた千鶴は毎日、充実した環境の中寿命をすり減らしていた。今日はお見舞いの日。これから、芽依に千鶴についての報告。雑談をしていく予定だ。冬の今、ドライフラワーが良き。早速、購入したドライフラワーを持って芽依の居る病院へ向かった。
続く。.:*・゜