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「……あの、今日はもう帰らないか?スカビオサ」

「やだ。なんか離れたらアイビーがいなくなっちゃう気がする」


あれから、かれこれ3時間程アイビーにハグをしている。

アイビーの腕の中は暖かくて居心地がいい。


「はは、それは嬉しいなぁ……でももう外はだいぶ暗いよ?早く帰らないとお母さんたちが心配するよ?」

「いいんだ。あんな人たち。心配させておけば」

「スカビオサ」


グッと頬を両手でつままれて、強制的にアイビーの空色の綺麗なガラス玉のような目と目が合う。

何だかアイビーに見つめられると、全部見透かされている気がして、少しむずかゆい。


「あんな人なんて……そんな事言わないでよ。スカビオサを産んでくれた、私と会わせてくれた人なんだよ。スカビオサが産まれてなかったら、私の人生には色がなかったんだ」

「……分かった。今日は帰る」

「うん。そうして。明日も美味しい菓子、期待してるね」

「うん!明日は芋揚げ持ってきてあげるよ!」

「私が2番目に好きな菓子じゃないか!それは楽しみだなぁ。今日は寝れないかもしれない」

「じゃあ、なるべく早く起きて、早くアイビーのところに来るようにする!」

「それは嬉しいな、なら早く起きるためにも、早く帰って早くお休み」

「うん!また明日ねアイビー!おやすみ」

「……さよならスカビオサ、おやすみ」


アイビーがまた明日と言わなかったのは、聞かないふりをした。

僕がまた明日と言ったら、もうそれは約束だ。

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