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『まだ、謝ってない。』

ウォール・ローゼへ着くまでに

赤色の空を見ながら

私は恐ろしい事に気付いてしまった




ずっと、馬鹿は私であったのだ

自分の夢すら諦めた兄の良心も

すれ違う私達を変わらず支え続けた母の愛情も

いつだって折れずに耐えていたジュニーの信念も

何もかも気付かず、認めず、

何が

『(何が夢だ…)』


兄が優しい人間という事ぐらい、


あたしが一番知ってる筈だったろ




自分の兵士になりたい夢がそんなに大事だったか

感謝や謝罪すら言えなかった

そんな後悔と比べれば

今更なんだ。


手に幾つも突き刺さり食い込んだ木の破片が

剥がれかけた爪から滲む血が

そして何より、今も尚止まらない耳の流血が

先程の事を鮮明に思い出させる


皆んな死んだよ。

また会えるなんて馬鹿みたいだ。



どうして最期に、感謝も懺悔も伝えられなかったのだろう

必死だったなんて

二度と言いたくもないし、思いたくない

お兄ちゃん

やっと分かった

“仕方無い”だなんて


『…………』


考えてもどうにもならぬことを察した時

膝を折り、地面へ座ろうとする

が、ポケットの違和感がそれを止めた


…そうだった

アルミンに捨てることを止められて

そのまま上着に手帳を入れていたんだった


ただ、ほんの好奇心にも満たない反射のようなものだった

私は手帳の1ページ目を開く


そうしてそこには


『…!』


ページびっしりと書かれた文章

それは母の筆跡だった

つまり、これは

母からのメッセージだ


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