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猫猫と壬氏は、壬氏の自室にいた。
「なぜ執務室では無いのですか?」
そんな質問を愛想なく口にする。
また、何か相談があるのだろうか、それとも、また別の何かなのだろうか、それは壬氏の返答によって変わるのである。
「実は、最近商人から聞いたんだが、近頃、西方で″えーえすえむあーる″というものが流行っているらしいんだが、何か、知っているか?」
また、よく分からないことを振ってきたな、と猫猫は気分を落としながら思った。
なぜ、わざわざ誰も居ないところで私にこんな質問をするのだろうか。
「″えーえすえむあーる″?聞いたことがある気が……」
これは、少し昔に遡る。
「西方には、ASMRというものがあってねぇ」
そんなことを羅門は言っていた。
猫猫は、特に興味もなかったので、あまり耳に入っていなかった。ただ、この言葉だけは覚えている。
「ものとものを擦りあって、音を出すんだ」
「ふぅん」
それ以外のことは、ASMRについて、何も聞いていなかった。それともうひとつ、発音が難しいな、と感じていた。
「何か、知っているのか?」
「ええ、養父に聞いたことがあります」
こいつには、必要最低限のことしか話さない。元々、猫猫は必要最低限のことしかあまり話さない。強いて言えば、薬と毒のことくらいしか、饒舌にはなるまい。
「では、やってみないか?」
子供のような笑顔を見せながら、壬氏は言う。猫猫は、いつも通りの顔を見せる。説明は不要だろう。あの、蛞蝓を見るような顔だ。
「別に、いいですけど、」
目を逸らしながら、猫猫は言う。なぜ私を選ぶのだ?それだけが疑問だ。他にももっといるだろう。こんな、″痩せぎす・絶壁・肉なし体型″の私のどこがいいのだろうか。
「そういうと思って、準備はしていたんだ」
(準備が早いな!)
そういうところはいつも準備がいいと心底思う。
「やり方はわかるのですか?」
「嗚呼、一応商人にやり方をまとめてもらった」
商人に教えて貰ったのならおおかたは間違えないだろう。それにしても、本当に2人でいいのだろうか、その疑問を、そのまま言葉にした。
「2人でよろしいのでしょうか?」
「商人には、あまり人が多すぎると良くないと言われたのでな、一応呼ぶのはお前だけにしたんだが」
(なんで私なんだ?)
またそんな疑問が頭に浮かぶ。だが、そんなことを言っても、変にはぐらかされそうなので、やめておこう。まあ、そのASMRとやらを楽しもうじゃないか