朝だ
身支度を整え、あの女性に会いにいく
『あら遅かったじゃない』
「…早起きは苦手なんだ」
『今日はあなたにやって欲しいことがあるの』
……やって欲しいこと?
「お前は何者だ」
『あら、言ってなかったかしら』
『私は笑越 (えご) 』
「…俺は」
『音勿 心晴 (おとなし しんせい) …よね?』
「なんで知ってんだよ、」
『まぁ、ここの管理人だから
貴方のことも、ここにいる人のことも、基本情報は全て知っている』
「…ここは夢か」
『夢…ね、まぁいずれ分かるわ』
夢では無い、ってことは何なんだ
どこかに連れ去られているのか…
でもそれにしてはおかしいことばかりだ
『着いてきなさい』
コツ…コツ と ひとつの扉に向かって歩いていく
そして、黄色の扉の前に着いた
『ここに入って
その中で起こることは全てエンディングに繋がるわ』
エンディング……?
物語じゃあるまいし、
『さあ』
そう言われて、扉の中に飛び込んだ
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白い光に包まれ
目が覚めると
目の前にはいわゆるイツメンと呼ばれる奴らがいた
5人グループで、俺以外はペアで付き合っている
男女のグループだ
でも…、そのカップリングの1つの女の子が彼氏を貶していて
彼氏側はそれに気づいてるのに言えない、我慢している
そんな関係だった。
病んで…性格も変わってしまって…それから、
…もうひとつのカップルは仲のいいごく普通のカップルだった
「…ぉい!おい!音勿?!」
「あ…あ、ごめん!」
こいつは歪なカップルの彼氏 笹井 唱 (ささい しょう ) だ
「何してんの笑」彼女の 林 愛理 (はやし あいり) か声をかけてくる
「あはは笑
いつも通り、おにごでいい?」
賛成という声が上がって、鬼ごっこが始まった
この、昔の俺にとっては当たり前のごく普通の日常
この当たり前に気づくのにあと何年かかるかな、
普通のカップルの彼氏の名前は 「橘 睦月 (たちばな むつき )」
彼女の名前は 「弥生 心 (やよい こころ ) 」
この2人はこの先もずっと一緒にいる
今でも仲のいい親友だ
鬼ごっこの最中、俺は睦月に出会った
「ねー、どこら辺に鬼いた?」
「わからん笑」 と言ってけらっと笑う
お得意の笑いだ。
「なあ」
「唱達…さ、どーなるんだろーね」
「…どう、なるんだろ、うね」
俺は知っている。
あいつが、唱が、
愛理と別れた後、人が変わったようにおかしくなってしまった
いつもしょーもないことを言って、
寒いダジャレを言って、滑るまでが流れで
その後、「地球温暖化を止めてんだよ!」って
そんなことも無くなるんだ
全て、全て…
気がつくと俺は泣いていて
あいつは俺の涙をみてびっくりしていた
そりゃそーだ
俺は元気ないじられキャラ
人前で泣くことなんてなかったんだから
懐かしい気持ちと、
この先どうなるかを知ってしまっている複雑さと
久しぶりに味わった純粋な人の温もりに
少し
少し
気が緩んでしまっただけだから
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