小学校からずっと仲良しだった友達と高校になって別れてしまった。高校で独りになる事にもちろん不安だった。だけど、それでもあの子が合格したこと嬉しかった。自分の事じゃないのにそんな喜ぶ?と聞かれちゃうくらいに嬉しかった。
卒業式後桜が舞い落ちる樹の下に夏夜はいた。夏夜の目線はまるでここでは無いどこかを見ているようだった。
「……何、覗き?」
小首を傾げながら尋ねる。少し怪訝な顔をする。
「はぁ?バカ言わないでよ!」
「ごめんごめん…」
両手を顔の辺りに合わせて言う。とても謝っているようには見えないのはなんでだろう。
「はぁ〜……卒業式…終わっちゃったね〜」
さっきとは違いどこか沈んだ声色だった。卒業式が終わってことを悲しんでいるんだろう。
「うん……なんて言うか、あっとゆう間だったね…」
楽しかった想い出、これから先の不安や期待とかゴチャゴチャだった。
「もう〜なんでそんな顔してるの?」
私の想いを察したのかからかってくる。
「高校生になったらバラバラになっちゃうのにそんな顔見っちゃったら今から心配だな〜」
その声はからかっているようだけど心配してはくれてるんだろう。その顔を見た時に自分の中にあった懸念が口から零れる。
「……私達…別れちゃうけど、これからも友達だよね……?」
夏夜は予想外だったのか呆然としていた。沈黙が続いて気まずい。もしかして私、ものすごく恥ずかしいこと言ったかな…。
「やっぱり千夏はバカだし心配だな…」
「へぇー……真面目に聞いた私が馬鹿みたい……」
「いや、そうじゃなくてね…えっと〜、つまり……当たり前じゃん!」
「……そっか」
恥ずかしくてぎこちない反応になる。それでも嬉しい。これからの事は不安だけど今は、今だけは考えなくてもいいかな。
「……それじゃあ、約束しよ!」
夏夜は笑いながらそう言う。
「……約束…何の……?」
「……この流れで伝わらないだなんて……!」
なんか凄い顔をしていた。
「えっとね…これから先も、何があってもずっと一緒だからね!」
それがなんだか無性に嬉しかった。
「……うん!約束破らないでね!」
「そっちこそ!破るんじゃねぇーよ!」
そんな事を約束していた親友が先日亡くなった。聞いた時はびっくりして何も考えられなかった。あの子はどうやらイジメにあっていたらしい…何が約束だ!高校は別なんだから一緒じゃないじゃん。あの子の事親友なのに守れなかった…『ずっと一緒だからね』とか笑ちゃうな…
あれから数ヶ月の時が経った。正直親友の死を知ってから今まで何してたか覚えてない。けど、今のままじゃ何も出来ないし、進めもしない。わかってるはずなのに涙が溢れてしまう。
夏夜は今どこで何しているんだろう。わかる術があればいいけど、そんなものない事は分かりきっている。
「……先に約束破っちゃったのは夏夜の方だったじゃん…」
無理やり笑ってみせる。
『…いや〜、ごめんね……』
何処から夏夜の声が聞こえた気がした。多分気の所為かもしれないけど。それでもこれから何があっても頑張れる気がした。もう一度親友の声が聞こえた事を嬉しいとは言えないのだから私の方が悪いかもしれないな。
「ありがとう……」
夏夜に聞こえたかどうか分からないけど、聞こえてるといいな。
コメント
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あれ?目から汗が…?