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※女体化(先天性)🍌

※バーテンダー🍆

※センシティブ設定してるけどそんなに要素ない


ーーーーーーーーーーーーーー








カロンコロン、という音と共に開いた扉から一人の女性が入ってくる。

長く美しい深緑の髪に、レンズの奥のペリドットの瞳。髪よりも少し濃い色のスレンダードレスから伸びる白く細い腕、整った顔立ち。

胸元で揺れるネックレスが良く似合う。


誰がどう見ても美人だと言う程に綺麗な女性だ。

他の客もその姿を見た途端息を呑んだ。

彼女はカウンターの端の席に座り、ほっと息をつく。

その後直ぐにドアベルが鳴り、一人の男性が入って来た。その時、先程の女性が怯えたような眼をしたのを俺は見逃さなかった。

男性はスーツを着ており、持っている鞄も仕事用のであることから仕事帰りだということが分かる。

女性の隣に座り、舐めるような視線で見ている。


…自分に向けられたものではないのに不愉快だ。


「何になさいますか。」

あまり自分から注文を伺うことはないのだが、今回ばかりは仕方ない。

「”エンジェルショット”を一杯お願いします、ライム入りで。」

「かしこまりました。」

すると隣の男が、彼女と同じものをくれと言ってきた。

こいつ阿呆か?

エンジェルショットとは女性がバーなどで使うSOSサインだ。なのでエンジェルショットという名のドリンクは存在しない。

そのままエンジェルショットを注文すれば車までのエスコート、ロックなら車の手配、そしてライム入りは警察へ通報してくれ、という意味だ。

その意図を気付かれないようにするため、男の方にもかしこまりました、と返事をする。

しゃがんで道具の準備をするように見せかけ、スマホをマナーモードにして電話をかける。スマホからは何も聞こえないし、こちらも何も言わない。

電源を切り、それっぽいカクテルを作って二人に出す。女性の方はライム入りだ。

男がそのカクテルを口にしようとした時、バンッという音とドアベルが激しく鳴ったと同時に、制服にきっちり身を包んだ男性が入って来た。

他の客は目を丸くし、男は慌てふためく。

俺は男に人差し指の先を向けた。お客様に対して失礼な行為だが、俺はこいつを客として見ていない。

警察官に抑えされた男は腕や脚をジタバタとみっともなく動かしている。



「お代は結構ですので、次に来られる時は、身の程を弁えてからお願いします。」


冷たく放った言葉に、その場の空気が重くなった。




ーーーーーーーーーーーーーー







「あの男、ストーカーだったみたいです。」

建物の壁に背を預けたドズルさんが言った。

「一週間ほど前からですね。仕事帰りに後をつけ、家まで特定していたそうです。」

「…へぇ。」

「あの日男は残業が長引き帰りが遅くなったらしいのですが、偶々女性は高校の同窓会に行っていたそうで、ばったり鉢合わせてしまったと。それを運命と勘違いした男が出過ぎた行動をとった、というのが全容です。」

「減ったとはいえいつになっても居るよね、そういう奴。」

「賢い人が居れば愚かな人も居ますからね。

にしても吃驚しましたよ、いきなりこっちのスマホがなるんですもん。」

そう言ってドズルさんが取り出したのは、いつもの赤いのとは違う、黒いスマホ。

仕事上ああいうことが起きる可能性は十分にある。だけど電話している声が聞こえるとまずいのでドズルさんに協力して貰っているのだ。

日常的に使うのは赤のスマホ。でも緊急事態の時は黒いスマホに電話をかける。五秒で切れたら車の手配、三秒で切れたら警察に通報してもらうことになっている。

「このシステム便利なのよ。」

「システムっていうか僕がやってるんですけど…」

「ハハ、助かるよ。」

「全くもう…….あっ!そうだ!」


ドズルさんが急に大きな声を出して鞄の中を漁り始めた。

整理整頓が苦手なせいか、かなり時間がかかっている。

「あった、これです!」

そう言ってドズルさんが出したのは、一枚の紙。レシートとかはぐしゃぐしゃのくせに、その紙だけは大切に保管されていた。

「あの女性の電話番号です。いつかお礼させてほしいと。」

「は?」

「あの後現場に行ったら渡されました。ぼんさんは警察の人と話してたので。」

「いやいやいや、流石にお客様と繋がるのはまずいでしょうよ。」

「でもぼんさん、今出勤前ですよね?ならあの女性はまだお客様じゃありません。あなたと面識をもつ一人の女性です。」

「確かにそうだけど…」


「….一目惚れだったくせに。」

「なんで知ってんの!?」

「何年一緒にいると思ってんすか、それくらい分かりますよ。」

ホント敵わないなこの人….

「…もう恋することなんてないと思ってたのに、あの子の笑顔見たらドキッとしちゃったのよ。」

微笑んだときは大人っぽくて綺麗なのに、太陽のような笑顔は無邪気で可愛らしい。こちらに向かってありがとうございました、と言う声は、どこかふわふわしていて心地が良い。


「ハハハ、僕はお礼、もらいましたよ?」

「え?いや、あなた奥サンいるでしょ?」

「何勘違いしてんすか、チョコレートをもらったんですよ。奥さんと一緒に食べて下さい、って。人のことよく見てるんでしょうね、指輪に気が付くってことは。」

「はぁ…」

「僕は嫁ちゃんだけですから。」

「ドズさんらしいわ….」

「で、どうするんです?」

「どうするって….」

どうするのが正解なんだ?

俺はドズルさんが持つ紙を見つめて固まっていた。

「ああもう、埒が明かないんでこれ渡しておきます!僕この後用事あるんで、それじゃ!」

「え、え?チョット!?」

ドズルさんは俺に紙を押し付け素早く去って行った。

「どうしろっていうのよ…」


渡された紙だけが残って、俺は暫く動けなかった。














後日会ってみたら性格まで美人でさらに惚れたのは別の話。






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