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the voice i wanted to hear
(聴きたかった声)
メイン.sha
なんで俺の耳には雑音すら入ってこんのやろう。みんな何言っとんのか聞こえへん
「 !」
あー。またなんか言われてる。コレって俺が聞こうとしてないんかな。みんなの存在を拒否してるんかな。え、なんか横からトラックきてる。あれ、俺、死ぬ、。
俺の耳が音を遮りだしたのはあの日からだった。
「ゾム!!飯いこーぜ!」
俺はあの時、ゾムと飯に行こうとしてた。仕事終わりですごい疲れてたけどゾムと会えたのは大学生以来やったから調子に乗ってた。
遊び半分で後退りしながら横断歩道を渡ってた時、急に横からトラックが出て来た。
「え?」
キキーッ!
トラックの急ブレーキ音は死へ近づく雄叫びを上げる。
あれ、俺死ぬ。
と思った瞬間、俺は何かの反動で歩道へ転がっていった。
バキバキバキッ!グチャッ。
目を開けてみると俺の目に飛び込んできたのはゾムの魂が抜けた屍だった。
俺はびっくりした。うせやろ。何で倒れてんの。横たわっているゾムの体の所々から赤い液体が路面に伝わって下水の中に滴り落ちていく。なんで俺だけ生きてんねんやろ。、、あ、ゾムが押してくれたからや。トラックが来た時に歩道の方に押してくれた感触がした。でもなんで、なんで俺なんか生かして自分だけ死ぬねん。俺なんて別にどうでもいいのに。こんなことを考えてる間も湊音の出血量は多くなってく。
あぁ、あぁぁ、、、!
息が重くなっていく。体の底から沸々と熱いものが上がってきて抑えることができない。頭が痛い。雑音が入ってこない。体が熱い。
どうしようどうしようどうしようどうしよう
なぁ、ゾム、俺を置いていかんでくれ。なぁ、行かんで、行かんでくれや、、。
その日からや、俺が耳聞こえんくなったんは。
5年が過ぎた今でもみんなの存在が遠い気がする。微かに声は聞こえるけど何言ってるかわからへん。食欲もないし、働く気もない。人と話せなければ、外へも出ない。俺何やってんねやろ。もう一度湊音のことを思い出そうと記憶を辿る。だけど思い出そうとすると頭が痛くなる。「ゔっ、。あ“ぁ、あ、、はぁ。はぁ。」頭が拒否反応を起こしてる。思い出したくない。思い出せない。思い出すことを許してくれない。1日1日が長く感じる。なにもできない一日一日が時間を刻むたびに醜くなっていく。「俺って生きてる価値あんのかな。」
嫌気がさして外に出てみた。のそのそとあいつが死んだ交差点に足を運ぶ。
「あぁ、もっかいあの無邪気な笑顔がみたいなぁ、。」
右からトラックが来た。フルスピードでトラックが右から出てくる。あん時と一緒。ゾムが死んだあん時と、。
もう楽になってもいいかな。周りに迷惑かけとるし。こんな俺が死んだら全員清々するよな、。両手を広げて死を待ち望む。いつトラック来るかな。もうすぐかな。死んだらあいつに会えるかもしれへんな___
「シャオロン!」
「っっ!!!」
俺は急に入ってきた音にびっくりした。ゾムの声。
「死んだらあかんに決まっとるやろ!俺が助けた命捨てんなアホ!」
俺は声が聞こえた瞬間咄嗟に走って歩道の段差に躓いてフェンスに背中を打ちつけた。
、、、また、あいつに命助けられてしもたなぁ、。
「墓参り行くか、。ありがとうって、伝えんとなぁ」目から滲み出る熱いものを必死に堪えて笑った。「ありがとう。ありがとうな。ずっと見守っててくれや。」
5年経っても、10年経っても、俺らはずっと友達や。
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