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ツイステ腐

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番外小噺

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2023年05月03日

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世界は広い。レオナは思う。自分一人では、たとえ一生掛けても、世界中のあらゆる事象を把握することは出来ないだろう。

だからこそ、レオナは望む。

唯一つの頂点を。この世の全てを。

嘗て描いた理想像は今、最早手の届かない所にある。現実に背を向け、自分の運命に抗う。それがどれだけ辛いことか、選ばれたものにはわからないだろう。だからこそ、レオナは呆れている。

隣で無邪気に笑う子供に。

「わぁぁ…っ!!おじたん、おじたぁん!!見て見て、綺麗だよ、お星様っ!!」

獅子の耳をぴょこんと揺らし、空を指差す。小さな手では大空に届きようもない。必死に背伸びする姿は、か弱い草食動物にしか見えそうにない。

「ったく…はしゃいでんじゃねぇ。ちっとは黙れよ」

「だって、だって!!おじたんが一緒にお星様見てくれるって言ったから!!」

「わーってる、だから落ち着け」

最近お星様の勉強をするんだよ、とチェカがレオナに胸を逸らしたのは、何時だったか学園に遊びに来た時だった。おじたんも一緒に見ようと言うのをその場は軽くいなしたものの、電話で口を開けば星だ星だと喚かれては、レオナとて躱しきれない部分もあり。ホリデーで帰った途端飛びつかれては、断りようもなかった。

だからこうして野原にいる訳だが、確かに星は目を見張るほど美しかった。少しはチェカの言い分も信じてみるもんだな、とレオナは感心する。大きな星空は感嘆を漏らすと共に、レオナの心に暗い影を作る。大きな空は何時だって見上げる対象であり、それさえレオナには鬱陶しかったのだ。一方的な嫉妬だと分かっている。ただ、こんな存在になれたら、と渇望せずにはいられない。

「おじたん?どうしたの?」

「ア?何もねェよ。…ハァ、さっさと習ったことだかなんだを喋ったらどうなんだ?」

「あ!そうだった!!」

本気で忘れていたらしい。全くコイツは、と内心呆れるが、たまにはいいか、と息をついた。時間は腐るほどある。家に帰る理由も特にない。レオナは草の上に寝転んだ。

冬の星空は澄んでいて、何処までも続きそうだった。

「それでねっ!あれがオリオン座なんだよ!」

「あァ…そんくらいなら知ってる気がするな」

「それでねそれでねっ!オリオン座の‪α‬星のベテルギウスと、おおいぬ座の‪α‬星シリウスとっ、こいぬ座の‪α‬星プロキオンを結んだらね、冬の大三角なんだ!!」

小さな手が、空で3角を結ぶ。目で追っていたレオナは、チェカにやれと迫られて仕方なく倣った。

「それでね、それでねっ……ふふふ、」

「なんだ、いきなり笑い出しやがって」

「んーん、なんでもなぁいっ!あのね、あのお星様のお名前がね___」

しし座って言うんだぁ。

しし座。それがなんだ。ただの一等星だろう?そう問うと、違うもん!と声が飛んだ。

「しし座の‪α‬星レグルスはね、社会に対する向上心……みたいな意味がついてたんだけど、」

要するにそっちはあまり覚えてないらしい。

「しし座についてる、意味がね、素敵なの」

しし座。自分も、それが好きだった気がする。確か意味は____

「「小さな王」」

小さな声が重なり、2人は顔を見合せた。みるみるうちにチェカの表情が明るくなっていく。

「おっ、おじたん知ってたの!?」

「あーあー、るせ。ちょっとだけな」 

「おじたんも、しし座好き!?」

星に好き嫌いもないだろ、と言いかけて、留まった。チェカぐらいの歳の時、これを習って同じように思いを馳せたのを覚えていた。そらは懐かしく、ほろ苦い思い出ではあったものの、嫌いではなかった。

妬ましくも、何時だって大きく構えている空というものに、俺だって安心していたのだ。

「あぁ」

別に、好きな星くらいあってもいいだろう。そう思えるようになったのは、いつからだろうか。

「だよね!!僕も大好き!!!」

頬を蒸気させ、必死に叫ぶチェカ。やかましい声が今夜だけは愛しく思える。

「そんなに騒いでっと星も逃げちまうかもな」

「え?星はガスの塊だから逃げたりしないよ?」

おじたん何言ってるの?

マジレスされたレオナが、数日チェカからの電話を無視するのは、また別の話。

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