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一方、その頃。『ナーラ』というまちでは。(日本でいうところの奈良県)
「なぁ、この辺に反応が複数感じられるのは、あたしの勘違いか?」
杉元《すぎもと》 黒曜《こくよう》(杉元式|激槍《げきそう》術の使い手。
名槍『黒神槍《こくじんそう》』の所持者)がそう言うと。
「いえ、勘違いではありません。たしかに、私たち以外の反応があります」
相馬《そうま》 夏樹《なつき》(相馬式|操馬《そうま》術の使い手。どんな馬でも召喚でき、操《あやつ》れる)がそう言った。その後。
「たしかに……私たち以外に……ここに……来てる人が……いる」
高木《たかぎ》 弓子《ゆみこ》(高木式|射撃《しゃげき》術の使い手。どんな弓でも召喚でき、どんな位置からでも的確に敵《まと》に当てられる。そのほかの武器も手足のように使える)がそう言った。その後。
「やはり、僕たちと同じように『ナオト』に会うためにでしょうか?」
時坂《ときさか》 賢太郎《けんたろう》(時坂式時間拘束術の使い手。黒髪と黒縁(くろぶち)のメガネが特徴)がそう言った。
「なら、路地裏にでも行って呼んでみようぜ。あいつらもそれでこっちの位置がだいたい分かるだろうから」
杉元がそう言うと、四人は路地裏に向かった。
「さて、全員『おまもり』を持ったな。それじゃあ、行くぜ! せーの!」
一列横隊になった状態で、杉元の合図と共に他の三人も呪文《じゅもん》のようなものを天に向かって唱《とな》え始めた。
『白いおまもり』は卒業記念に先生から渡されたもので遠くにいても、これを持っていれば、それぞれの波長で位置が特定できる。
先生の力で生徒全員が常にそれを身につけなければならないという意識を植え付けられた。
『聞け! かつての獄立《ごくりつ》 地獄高校の同士たちよ! 今、十年の時を越《こ》え、我《われ》らのもとに【先導者《ナオト》】は蘇《よみがえ》った! 我々の時代はまだ終わっていない! お前たちの気高い理想は……決して絶やしてはならない! 彼の意志《いし》は常に我々と共にある! 獄立 地獄高校の真理はそこだ! 皆《みな》……! 先導者《ナオト》の同士であるのなら、今こそ、ここに集《つど》え!!』
____数秒の時が……流れた。その場にいる全員が恥(は)ずかしさのあまり、この場から立ち去ろうとした、その時……。
『呼んだ?』
彼女らの目の前に、彼ら彼女らが姿を現《あらわ》した。(これからの『』は杉元、相馬、高木、時坂が言う)
「あれー? どうしてこんなところに君たちがいるのー?」
『黒沢式植物召喚術の使い手! 黒沢《くろさわ》 昴《すばる》!!』
「久しぶりだな、お前たち。元気にやっていたか?」
『小宮式剣術の使い手! 小宮《こみや》 光《ひかり》!』
「待たせたな、貴様《きさま》ら」
『加藤式忍法の使い手! 加藤《かとう》 真紀《まき》!』
「おいおい、俺のことも忘れてもらっちゃ困るぜ」
『月影式忍法の使い手! 月影《つきかげ》 悠人《ゆうと》!』
「えーっと、みなさん、どうしてこんなところにいるのですか?」
『坂井式|撲殺《ぼくさつ》術の使い手! 坂井《さかい》 陽代里《ひより》!』
「おう! 久しぶりだな! お前ら!」
『布田式|抹殺《まっさつ》術の使い手! 布田《ぬのだ》 政宗《まさむね》!』
そこに現《あらわ》れた六人は、間違いなく獄立 地獄高校の元同級生たちであった。
「あー! なんか人数が多いから、数分置きに、まちの外に出て、ここじゃない場所で『釣り』でもしながら話そうぜ!」
杉元がそう言うと、全員が「それもそうだ」と言って、まちの外に数分置きに出ることになった……。
*
その頃、ナオトたちは……。
「ナオト……気づいたか?」
名取がまだ眠《ねむ》っているナオトの近くに座《すわ》ってそう言うと、ナオトは寝言(?)で。
「んー? あー、なんか、かなりの人数が一箇所に集まってるのはポケットの中にある『おまもり』でバッチリわかるぞー」
「俺は今からそこに行ってくる……そして、なんとかして、ここに連れてくる……」
「ああ、頼んだぞー」
「ああ……それじゃあ、行ってくる」
「ああ、気をつけてなー」
「ああ……任せておけ」
その後、名取はナオトのアパートにいる十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちに事情を説明し、チエミ(体長十五センチほどの妖精)の風の加護を受けてから、大空へと飛び立った……。
『名取《なとり》 一樹《いつき》』。名取式剣術の使い手で名刀『銀狼《ぎんろう》』の所持者。
前髪で両目を隠《かく》しているのは、人見知りだから。
異世界の神社で再会してからはナオトたちと旅を共にしていた。
しかし、今回から先ほど登場した者《もの》たちの元へ向かう。
存在感が薄《うす》いが、武器のことになるとよく話す。
*
その頃『モンスターチルドレン育成所』では。
「……! 私の元生徒たちが一箇所に集まり始めたようね。ふふふ……そろそろ計画を第二段階に進める必要がありそうね。……待っていてね、ナオト。あなたは絶対に私が幸せにしてみせるから」
先生《アイ》は『例の高校』の元教師。身長『百三十センチ』。衣服類は全て『白』。
宇宙が誕生する前から存在しており、あらやる能力値が測定不能。
ナオトのことを愛しているが、未《いま》だに言い出せずにいる。
モンスターチルドレンを生み出したのは彼女であり、モンスターチルドレン育成所で彼女たちの教師とそこの所長を兼任《けんにん》している。
彼女は『ある人物』から依頼を受け、その計画を実行している。
【ナオト覚醒計画】
本田《ほんだ》 直人《なおと》を覚醒させ、本来の姿に戻すために、彼女は『その人物』に手を貸している。
ちなみに今日は自分の担当の生徒を自分の実像分身の一体に任せているため、ヒマである。
彼女は白チョークで魔法陣を書いて、自室から外に移動すると、グリフォンの『クゥちゃん』を指笛で呼んだ。
すると、バサバサと音を立てながら『クゥちゃん』が彼女の元《もと》に舞い降りた。(育成所は地下にある)
「クゥちゃん、『ナーラのまち』までお願いね」
「クゥー! クゥー!」
クゥちゃんは彼女が乗ったのを確認すると、大空へと飛び立った……。
*
そして、その頃。ナオトたちの住んでいるアパートでは。
「……ナオト様」
フィア(四大天使の遺伝子を持つ守護天使)が眠《ねむ》っているナオトに膝枕《ひざまくら》をした状態で頭を撫《な》でていると、ミノリ(吸血鬼)がやってきた。
彼女は腕《うで》を組み、仁王立《におうだ》ちをすると『フィア』に話しかけた。
「あれ? あんた、人間が嫌《きら》いじゃなかったの? フィア」
「……ナオト様は別です」
「へえー、そうなんだ。じゃあ、なんで人間嫌いだってことをナオトに言ったりしたのよ」
「私は……構ってほしかったのかもしれません」
「えっ? そうなの?」
「分かりません……。私は今までナオト様に、ずっとお仕《つか》えしてきました。ただし、姿を現してはならない、声をかけることもしてはならないという条件付きで」
「そうなんだ……けど、いいじゃない」
フィアがその言葉に反応して、ミノリの顔を見た。
「えっ?」
「だって、あたしたちなんか最近出会ったのよ? それに比べて、あんたはずっとナオトのことを側《そば》で見守ってきた。正直、羨《うらや》ましいわ」
「そう……なのでしょうか?」
「ええ、そうよ。ねえ? みんな」
ミノリがそう言うと、他のメンバーがぞろぞろと集まってきた。どうやら会話の内容は全て聞かれていたらしい。
「あたしたちはあんたを歓迎《かんげい》するわ! あんたは今日から、あたしたちの家族の一員よ! これからよろしくね! フィア!」
皆《みな》、それに便乗《びんじょう》したのか、口々にフィアを歓迎する言葉を言い始めた。
フィアはそれを聞いているうちに、目から自然と涙《なみだ》が溢《あふ》れてきた。
涙を服でゴシゴシと拭《ぬぐ》うと、彼女は全員に向かって、とびきりの笑顔を全員に見せながら、こう言った。
「はい! 不束者《ふつつかもの》ですが、どうぞよろしくお願いします!」
それを聞いた全員がその言葉に反応し、祝福の言葉を口々に言い始めた。
それと同時にナオトがゆっくりと目を覚ました。
「ん……うーん……なんか騒《さわ》がしいな……って、あれ? フィア? 何してるんだ?」
「あっ、おはようございます。ナオト様。今から私もあなたの家族の一員です。私は今、うれしい気持ちでいっぱいです!」
「ん? あー、分かった。これからよろしくな、フィア」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ナオト様」
「うん……それじゃあ、昼に……なったら、起こしてくれ……」
「また眠《ねむ》ってしまいましたね。ふふふ、やっぱりナオト様はかわいいですね」
『ごもっとも!』
全員の息がぴったりあった瞬間であった。
*
『ナーラのまち』……裏路地……。
普通の人でもモンスターチルドレンと同様の力を欲《ほ》しいと願う人々にその薬を販売している裏の組織があった。
それが『|漆黒の裏組織《アポカリプス》』。
この組織を支えているのは四人の幹部である。現在、この組織に所属している人数は百名ほど。
【ブラック・ダイヤモンド】
【グリーン・コンペア】
【レッド・ネーム】
【グレー・アイランド】
彼らの名前の由来は『金〇型四姉妹』の名前の一部とスカートの色であるということに、ナオトと名取は瞬時《しゅんじ》に見抜いた。
____彼らは人に姿を見せることはない。しかし、彼らは金さえ払《はら》ってくれるなら、誰にでもその薬を渡す。
一瓶で金貨四枚(四千円)もする薬の効果は絶大であるが、成功する確率は『一パーセント程』であるため、あまりいい商売にはならない。
しかし、平和なこの世界にも心の闇《やみ》を膨張《ぼうちょう》させたせいで、このようなものに手を出す人々がいるため、やめるわけにはいかない。
なにせ、その薬を提供してくれるのは【長老会】のメンバーの一人なのだから。
(長老会とは『十六人の大魔法使い』で構成された、この世界の大黒柱とも言われる組織である)