〜らら side〜

『公式戦』という言葉を聞いた直後、 生徒会室の空気が凍りついた

そうだ、さっき“空喰カナタ”って 言ってたけど、明らかに見た目が違う

この人は、本当にカナタくんなの？

不意に、紫ちゃんが彼の持っている 名札を見てから、いつも会計の仕事に 使っているパソコンをいじり出した

嘘、本当にカナタ君だったの？

今までずっと、会長の言うことに 従って、自分で何か行動をすることは 『一ノ瀬彼方』以外ではなかったのに

いつもの笑顔でも、目つきが鋭くて、 圧を感じる会長の声

もしかして、怒ってる……？

一体、何の話をしてるんだろう……？

会長が黙り込んで、言い合いが止まる

本当に、公式戦を受けちゃうんだ……

少し不安を覚えつつ、 2人の会話を聞いていた

私達生徒会役員が公式戦を挑まれた 時に、よく相手に提案するゲームだ

一旦満足してくれたのか、 後ろを振り返って、ドアの方へ 歩いて行ったカナタくん

それだけ言って、 生徒会室を出て行った

その少し後、真都ちゃんが 会長にそう聞いた

愛華凛会長は、 学園内で最強のギャンブラーだ

だから、弟なんかに負けないよね

〜冬真 side〜

ガチャッ

生徒会室のドアが開いて、 カナタ先輩が戻ってきた

公式戦だし、断られることは ないと思うけど……

滅多に使わなくて、 何もない限り人の出入りがない講堂

わざわざ、そんなところで？

この姿のカナタ先輩を 公に出したくないのだろうか

昨日からこのままだし、 もう手遅れだと思うだけど

え……広めるって、どういうこと？

たしかに、誰もいないところだと、 また会長がカナタ先輩に何かを してくるかもしれない

天ちゃんは、ボクら以外にも この学園で沢山友達がいる

この役は、彼が一番適任だ

〜カナタ side〜

講堂

オレらがここに来た時には、ステージ 以外が大勢の人で埋まっていた

翔太のおかげで、形は変わりつつも、 1時間でかなり噂が広まってる

これは予想外だったのか、 人集りを見て驚いた愛華凛

ここまでの人が見ていれば、 オレに何もしてこないはず

愛華凛側の人間がディーラー？

それなら、まだ信頼してもいいのか？