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好きなかたち探索

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プロローグ ロボットだって恋する

♥

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2023年04月01日

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暗い部屋の中、眩しく光るパソコンに 囲まれている彼を数秒見つめる

悠佑

そんな環境だと更に目が悪くなる、 なんてことを言う気はもうおきない

悠佑

マスター、ちょっと
ええ?

いふ

なあに?どしたん?

呼びかけるとゆったりとした口調で 優しい返事をした。

悠佑

俺、マスターのこと
好きかもしれん

そう言って、俺が口を閉ざすと 彼は驚いたような顔した。

悠佑

…!

あんまり見ない表情であったから、 思わず俺の眼球に搭載されたカメラの 機能で撮ってしまった。

いふ

…どうして、そう
思ったん?

悠佑

それは、単に一般的にいう
"好き"という感情が

悠佑

今の俺の感情…心に
ぴったりやと思ったからや

コア…ヒトでいう心臓がある部分に 手を当てながら話す。

いふ

……ふぅん、そうか

興味のなさそうな返事だが、 彼の様子からみるに、 動揺しているだけなのは明らかだ。

いふ

やったら、どっちの
意味なの?

悠佑

どっちの意味…?

言葉の理解が追いつかず、 疑問を疑問で返した。 彼は少し言葉が足りない時がある

いふ

あー…つまりやな、
性的に見てるのか
って聞いてんの

悠佑

…そういうのは、
恋愛対象かそうやないのか
って聞くべきやないの?

彼は直球すぎるときもある。 やや呆れ口調でまた疑問を疑問で返す

いふ

ロボットに常識
問われる筋合いはな〜い

少しふざけた様子で返された。 こういう対応も、もう慣れたものだ。

悠佑

…はあ、ま、そういう
ことになるな

いふ

そう…でも悠佑には
性欲なんて機能ないやろ?

悠佑

……

そう、そのはずなのだ。 性的に見れるわけがないはず、だから 彼は動揺しているのだろう。

悠佑

それでも、マスターが
愛おしいと思ったから

悠佑

が、俺なりのこたえかな

性的にみるだけが恋ではないと、 俺はそう思うだけの話だ。

いふ

……納得いかん

ふてくされた顔で言うから、 なんだか可笑しくって顔がにやける。 これも撮っておこうか。

悠佑

何処が?

いふ

全部や!全部!!

彼は背中の方にある机をバンバンと 音が出るくらいの力で叩き、言った

悠佑

全部?

全部…とは曖昧すぎてわからない。 やっぱりコミュニケーションの経験が 少ないせいなのだろうか。

いふ

そう!悠佑が俺に恋
しとるとこから納得いかん!

悠佑

納得できるか、
でなきないかよりも

悠佑

俺は返事が欲しいだけ
なんやけどなあ…

ため息まじりに、呟くように言うと、

いふ

…納得できたら返事は
ちゃんと返す。

ほんの少し罪悪感を抱えた複雑な 表情が撮れた。 良い顔だ、なんて思うのは少し意地悪 だろうか。

悠佑

なんで、俺がマスターに
恋しちゃあかんの?

いふ

したらいけない、
やなくて……

いふ

プログラムしてないこと
言われると弱いんやよ
コッチは…!

彼は自身の髪の毛をぐしゃりと 崩しながらそっぽを向いて話した

悠佑

つまり、怖いんか?

いふ

素直に思ったことを話すと、 心底驚いた顔をしていた。

いふ

……、違う。

自分に言い聞かせるような 小さな声で言ってこちらを見た。

悠佑

そんな顔、させたかった
わけやないんやけどな…

彼はときどき、 ひどく傷ついた顔をする。 俺はそんな顔がどうしようもなく嫌だ

いふ

とにかく!

いふ

俺は経験のないお前が
愛だなんだと言うのが
わからんのだ!

怒ったように話している。 その話は一理あると思った。

悠佑

データが足りない…
ってことか

いふ

そーゆこと。

そう言って彼は机に置いてある コーヒーをひとくち、口に含んだ

いふ

やからさあ、
誰か別の人と
付き合ってからとかにしてよ

ため息混じりのそのこたえに、 俺は納得いかなかった。

悠佑

俺は、マスターが
好きやから無理。

いふ

……ほぉーん

はっきりと断ってみせれば 彼は少し喜色を見せたものの、 認めはしないなんて面倒な考えが 丸見えになった。

悠佑

どーしても認めたくない
ようやなあ……

今日何度目かわからないが俺は 呆れを見せ、一つ、思いつく。

悠佑

そんなら、俺は"愛"の
事情聴取を行ってくる!

いふ

はあ?!外出すんの?!

突っ込むところはそこなのか、と 言いたくなるがそこは我慢だ。

悠佑

おう!他にもロボットは
いっぱいおるし…それに
外出はちょっとだけや!

悠佑

ええやろ?

手を合わせておねだりしてみせると、 しぶしぶ、といった感じに口を開いた

いふ

……具体的な時間は

悠佑

……

悠佑

ちょーっとだけやって!

正直、どのくらい聞けばいいか わからない。だから濁したいのだが。

いふ

今変な間あった!!
信用ならへん!!

案の定そう叫んでくる。 心配性といえば聞こえはいいかもな などと関係ないことを考える。

悠佑

大丈夫や、絶対帰ってくる

悠佑

納得させてみせるから

悠佑

な?

ゆっくりと強い意志を持って言う。 彼がこんな俺に弱いということは 把握済みなのだ!

いふ

うぅ"〜……はあ

いふ

ええよ

悠佑

! んじゃさっそく〜

いふ

ただし!!

俺が気軽に出て行こうとすると 呼び止めるような大きな声で言った

いふ

門限は6時や!!

いふ

それまでに
帰ってこやんかったら
強制連行やで!!

悠佑

はいはい!

あと五時間ほどしかないが、 こういうときは素直に返事をするべき というのは学んだことだ。

悠佑

それじゃいってきます!

手を振って大きな声で言う挨拶は なんだか気持ちの良いものだ。

いふ

はあ…、行ってらっしゃい

随分と優しい顔をするものだと、 彼の顔を横目に暗い部屋から 出て行った

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